高山真からのさちーぬへ『女たちのキーワード』

 高山真です。2008年が皆様にとって素敵な年になりますことを、心から祈っております。

 高橋さんの「人生初ガツン映画」がタルコフスキーの『サクリファイス』だと聞いて、びっくりするやら嬉しいやら。「初ガツン」ではないものの、アタシも『サクリファイス』は大好きな映画のひとつ。先日高橋さんにお目にかかったとき、もっと映画のことを話せばよかったわ。

 さて、高橋さんからのご質問、「好きだけど嫌いなもの」だけれど……。漫画家の西原理恵子氏が、確か『ぼくんち』の中で、「それ(好き)とこれ(嫌い)は同じものでできている」と言っていたような。アタシはその言葉に全面的に賛成しているの。

「ドルガバが好き」とか「イデミ・スギノのケーキが好き」とか「香水ならサンローランのオピウム命」とか、そういった趣味嗜好の「好き」は、アタシの場合ほぼ100%の「好き」になるけれど、そうではなく、情が言わせる「好き」は、アタシの場合たいてい「好きだけど嫌い」というアンビバレンツな様相を呈するのね。その感情は、ものに対しては滅多に向けられない。人に対して向けられることがほとんどだわ。この傾向はアタシだけでなく、かなり多くの人に共通するものではないかしら。

 で、アタシが過去、一番「好きだけど嫌い」という感情、もっと正確に言えば「嫌いだけど、好きになりたい」という感情を向けた人間は誰なのか。それは間違いなく、アタシ自身です。

 いままでに出した2冊の本に書いているけれど、アタシは10代の中盤くらいまで、自己嫌悪と自己卑下の塊のような人間だったの。「オカマと言われていじめられる自分が悪いのか」「ゲイであることを一生、隠して生きていかなくちゃいけないのか。いや、隠している今だっていじめられているのに、隠して生きていくなんてそもそも可能なのか」と脅え、「隠す能力もない。“バレたらバレたで仕方がない。生き抜いてやるだけ”という覚悟さえ持てない」と自分を責め……という悪循環。それに軽度とはいえ醜形恐怖症まで加わって、まあ大変なもんだった。でも、プライドは異様に高かった(過去形にするなって話よね。いまでも異様に高いまま)から、「自分を愛したい。好きになりたい」という気持ちもたっぷり持っていて、それはそれはもう、絵に描いたような「好きだけど嫌い」状態だったわ。

 そんな、常に「自分を判断するコインが“嫌い”の面を向いたままで、かつ、熱烈に“好き”のほうに裏返らせたい」という状態から、どんなふうに「できるだけ長い時間“好き”のほうに向いている状態にしておく」ことができるようになったか。10代中盤から現在に至るまでのアタシの試行錯誤は、ほぼすべてそこに集約されていると思うの。

 当時のアタシを救ってくれたのは、「正しいか・間違っているか」でも「美しいか・美しくないか」でもなく、「面白がれるか・そうでないか」であり、「悪趣味に対するよい趣味」というような、物事(言うまでもなく、「人生」を含みます)をもう一段俯瞰で見たうえでの、ある鑑賞の作法だった。その2つの視点を獲得してから、アタシがアタシ自身に向ける目および評価も変わってきたと確信しています。他人ときちんと関係を結べるようになったのは、それができてからの話だったわね。深めるにせよ、断ち切るにせよ。

 ともすると、オンナとオカマは自己評価が低くなりがちでしょ。誤解を恐れずに言えば、頭(「学校の成績」ではなく、ね)がよくて自分をしっかり見られる人であればあるほど、そういう傾向は強くなっていくと思う。「石や穴の多い道を歩いているわねぇ」と自覚するには、それなりの感受性が必要だしね。アタシが20年近く取り組んできた「自分自身と付き合う方法」が、もし、みなさんが抱く自己卑下を少しでも軽くするヒントになったのなら、こんなに嬉しいことはないし、今後も、自分のペースで、そういったことを書いていけたらいいな、と思っています。まあ、喪からあけるまでに、もう少々時間はかかりそうですが。

 さて、のさちーぬさん。のさちーぬさんの、静謐かつ正確でありながら、温かさを失っていない視線を尊敬しています。のさちーぬさんは、自己嫌悪を感じたとき、どんなふうにそれに対処なさってますか?


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