●第28回 挿入するなら指がいい

いつだったか、「道具も手も使わずにオナニーしてイケるひとがいる」という情報を人づてに聞き、「えー、どうやってするの?」と不思議に思ったが、そのノウハウを聞いてみると、あら、わたくしそれ学生時代にすでにやっていたわ、という方法だった。

それは、V字腹筋あるいはVシットと呼ばれる、腹直筋を鍛えるエクササイズを利用した方法である。仰臥で寝た姿勢から、上半身と下半身をゆっくりと床面から離していき(反動はつけない)、V字を形成した状態をキープするエクササイズである。キープ中にも呼吸は止めない。

高校時代に所属していた合唱部は、プロのボイストレーナー(といってもOBだが)を招聘して呼吸法や腹筋背筋の効率的な鍛錬を習得するといった、かなり本気の活動っぷりであった。

V字腹筋は合唱部の訓練メニューのひとつである。ひとりでできるエクササイズなので、部活が休みの日には自主練メニューとして個人的に行っていた。あるとき自室でV字腹筋を行っていた際、腹筋の緊張による苦痛が一転して、めくるめく快楽がわたくしの下腹部を中心にわき起こった。両股をぴたっと閉じて肛門を締め上げると、手を使わずともやがてオーガズムに見舞われることを発見したのである。

それ以来、腹筋の鍛錬という目的をはずれてこのエクササイズにしばらくいそしんだのだが、思い返せばなんと回りくどいオナニー方法であったことよ。ローターを愛用するようになって入眠用の怠慢オナニー一辺倒になり、腹筋がすっかり緩みきった現在では、もうこのエクササイズをする気も起きないが、間接的に回りくどく刺激を与えるこの方法はデリまん向けにはわりとオススメかも。

ちなみに、以前たまたまお手合わせした相手がソープ嬢だったのだが、お客をできるだけ早くイカせるためにPC筋を鍛える方法としてV字腹筋を行っていると言っていた。指が締めつけられるのを通り越して関節がはずれるかと思うほどの膣圧であった。さすがはプロ。

オナニーもセックスも身体行為なので、快楽を編み出せるようになるにはある程度の身体取り扱い訓練が必要である。初歩的なところでは、全体重をかけて覆いかぶさってくるような相手はまずいただけないし、自分のクリトリスも満足に愛撫したことのない相手に、こちらのクリトリスをまかせることなど恐ろしくてできない。ましてや膣穴、ましてやアナル、である。

当然のことながら、皮膚という保護膜を持たない粘膜部分は内蔵と同じなので、丁重に扱わないと傷がつきやすく、痛みを感じやすい。しかし、不思議なことにある一定の刺激にはすぐ慣れてしまうという矛盾した特徴がある。なので、ずーーーっと同じペースで触られたり舐められたりしていると感覚が麻痺してアクビが出てくる。そのため、触るにしても舐めるにしても、タッチの強度、反復・回転の方向、速度などに変化をもたせる必要があるが、手先舌先の不器用なかたにはこういった機転はなかなか働かせにくい。

わたくし自身は膣への挿入行為にあまりプライオリティーを置いていない。というのも、ペニスおよびディルドは「(膣奥を)突く」とか「(膣壁を)摩擦する」という刺激に限定されがちであり、上記のような細やかで変化に富んだ刺激を受けるには極めて不向きだからである。しかも、入り口から奥まですべてほぼ均等な太さで押し広げられるというのは、わたくしにとっては刺激としてはあまりに大味すぎる。わたくしの膣は柔軟性に乏しく、レギュラーサイズのディルドを挿入したとしても、いっぱいいっぱいで「遊び」の部分がなくなってしまう。

膣内に関しては「突く」「摩擦」系ではなく、「圧迫」系の摩擦がわたくしには好ましい。そうなると、膣内のありとあらゆる箇所に対して刺激可能なのは、手指ということになる。

先日、ヴァギナ・ダイアローグというワークショップを開催し、のべ20名を超えるかたがたがご参加くださった。そのなかに、「自分の膣のなかは、いったん左斜め下に向いて、それから中央に向かって伸びている」と自己分析しているかたがいた。こういうかたの膣内を刺激するには、やはりペニスやディルドでは困難かと思われる。

なんといっても指には関節があって、ある程度複雑な進行方向に対応できるし、手首を返すなどすれば360度全方向に膣内を圧迫することができる。膣内にはGスポットと呼ばれる性感帯があるとされるが、わたくし独自の研究分析によると、PC筋の一部が輪ゴムのように膣外部を覆っており、それがちょうどGスポットのあたりを通っているため、指でその部分を探って圧迫するとクリアな快感が得られるようである(解剖学的な根拠はないので、もしかするとPC筋ではないかもしれないが、圧迫したときにちょうど筋のようなコリッとした手応えが感じられる)。

では、指であればだれのものでもいいかというと、やはりそういうわけにもいかない。以前お付き合いしていた某さんは、先の細い塗り箸を愛用していたが、そのことに関して、「太くてごつい指でガサツに食べさせられるより、手入れの行き届いた柔和で繊細な指先でエレガントに食べさせてもらったほうが美味しいに決まっている」と言っていた。なるほど確かに、上の口だろうと下の口だろうと、繊細な指先のほうが美味しくいだたけるというものである。

【タフまんワールド・用語解説】
▼PC筋

musculus pubococcygeus筋の略で、恥骨尾骨筋と訳される。膣と肛門を8の字型に取り巻いていることから「8の字筋」の別名も。日常的には、おしっこを我慢したり、途中で止めたりするのに使われる筋肉で、肛門を締める要領で鍛えることが可能。

▼Gスポット
ドイツの産婦人科医エルンスト・グレーフェンベルグの名にちなんで名付けられた、膣内の性感帯。グレーフェンベルグは女性器の研究家でもあり、のちにGスポットと呼ばれることになる領域に関する研究は、1950年の論文で発表されている。女性の「潮吹き」に関する研究もこのころに行われている。Gスポットについては、いずれ回をあらためてコラムに書こうかと。


INDEX
[2008/11/19]
第28回 挿入するなら指がいい
[2008/11/13]
第27回 オナニーの効用
[2008/11/05]
第26回 「付き合う」ってなんだろね?
[2008/10/30]
第25回 旅人とRPG、LTPと自己肯定感
[2008/10/22]
第24回 怠け者のロングタイム・パートナーシップ
[2008/10/15]
第23回 セックスなんて早く飽きてしまいたい
[2008/10/10]
第22回 近代的恋愛に内在する不条理とは?
[2008/10/01]
第21回 ポリアモリーには「モテない努力」が必要?
[2008/09/24]
第20回 世の中には「本気」と「浮気」しかないのか?
[2008/09/17]
第19回 傲岸不遜な「振られポリ」
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