●第19回 傲岸不遜な「振られポリ」

先日、とある飲み会に参加したときのこと(ミヤマって飲んでばっかりねと思われるのも困るのだが)。

なんでそんな話の流れになったのかは覚えていないが(酔っていたのでな)、とあるオカマと「モノガミーvsポリガミー」論争になった。論争といっても向こうからふっかけてきたので、「売られたケンカは言い値で買う」わたくしは、すぐに乗ってしまっただけのこと(しかもオカマ口調で)。

「基本的に、したい相手としたいときにセックスする権利はだれにでも認められるべき。その権利を侵害するのは、たとえ特定のパートナーであっても暴力だと思う」と、わたくしが言い放ったところ、そのオカマは「ほかのひととはセックスしてほしくないという気持ちを裏切るのも暴力よ!」ってなことを言い返し、その気持ちもわからんでもないなと思いつつ、「あんたとあたしがセックスするわけじゃないんだからいいでしょっ!」とぶっ放して強制終了させた。

その後、つらつらとそのときのやり取りを思い返してみた。「ほかのひととはセックスしてほしくないという気持ち」を、モノガマスなひとが抱くということはわかるけれども、わたくし自身はそういう気持ちをこれまでまったく抱いたことがないので、なぜそのような心情になるのかについては謎である。

セックスに限らず、なにかをする/しないについての判断は、最終的には行為者が行うことであって、他者の行動を禁じたり抑制したりする正当な権利は、究極的にはないのではないかとわたくしは思うのである(法律がどうの道徳がどうのとかのレベルはまた別の話として)。

逆の言いかたをすると、自分の身体を自分の望み通りに使用する権利をだれもが持っていて、第三者がそれを禁じる権利はない、ということ。わたくしの行動をだれかに許可/禁止される筋合いはまったくないし、わたくしもまた、だれかの行動を許可/禁止する立場にはない。本人がやりたいことは、だれにも気兼ねなくやればいいと思っている。

そのように考えるわたくしは、根本的に、性愛に関して嫉妬心がない。あるかたからは、「あなたはモノにもヒトにも執着がないんでしょ?」と言われたが、執着のありかたが、たぶん一般的ではないのだと思う。

たとえば、身近な他人の不幸と比較して、自分はそれよりマシだ、救いがある、というふうに己の境遇に安堵するタイプの思考があるが、わたくしはそういう思考で己の幸福を測ることができない。わたくしひとりだけが幸福になることはありえず、わたくしの大切なひとたちもともに幸福でなければ、わたくし自身の幸福もないのである。

幸福の一条件として、「より望ましい相手とパートナー関係を取り結ぶ権利」があるわけで、もし仮にわたくしとお付き合いしている相手が、「(あなたよりも)好きなひとができた」と言って別れを申し出てきたとしたら、わたくしは喜んでその相手を送り出す。実際、高校のときにお付き合いしていた子は、そう言ってわたくしの元を離れたのだが、わたくしはわたくしで、「これで心置きなく受験勉強に専念できる」と、ホッと胸を撫で下ろしていたりした。

あれ? ちょっと話がズレたかしら。まぁ、いいや。気にせず続けることにする。

要するに、「わたくしを差し置いてあなたひとりだけが幸せになるなんて許せない!」的な執着は持ち合わせていないのである。わたくしと付き合うよりも、どこかのだれかさんと付き合うほうが相手にとってより望ましいのであれば、ぜひそうしてください、どうぞお幸せに、と思う。わたくしがその邪魔をする権利はないし、邪魔をしたいという欲望も起こらない。

振られてからもなお、「いつかわたくしを振ったことを後悔させてやる! 見返してやる!」などと後を引くこともない。そのかたとのお付き合いで得たものは得たものとして後々活用させていただくことはあるかもしれないし、そのかたとは縁あって仲良くさせていただいたが、今後はきっとお互いの縁が重なりあうことはないのだろうな、と考えることにしている。

こういうことを言うと、きっとまた例のオカマが、「カッコつけたこと言ってんじゃないわよ!」と噛みついてくるのだろうけれども、別に格好をつけたくて言っているわけではない。実際わたくしはかなり格好悪いほうだと思う。

モノガミストからすると、「ポリガミスト=恋愛強者」のイメージが先行するのだろう。次々言い寄ってはペロリと平らげてうっちゃらかし、また別の獲物を口説いてパックリ食べた後はポイ、みたいな行動を繰り返していると思われているのかもしれない。

ところがどっこい、わたくしなんて振られてばっかりだよ。高校時代に引き続き、これまで振られた理由を挙げてみようか?

*あなたとこういうこと(セックス)してると、自分が男になったような気がする。
*わたしやっぱり男のひとじゃないとダメ。
*仕事に専念したい。
*体力の限界。生活を立て直したい。

わあ、なんか泣きたくなってきた。

それはともかくとして、わたくしが振るより振られる側だということをあるかたに告げると、「振られポリ」の称号(名誉なのかどうかわからない)とともに、「振られてもなおポリでいくのですね」という、半ば呆れ気味のコメントをいただいた。しかし、ポリが理由で振られたわけではない(と思う)ので、モノガミストにシフトする機会は特になかったし、基本的にはわたくしだってひとりのお相手をするので手一杯だし、かといってやはりわたくしはセックスを特定のパートナー間でのみ行われるべき行為とも思っていないので、とりあえずいまはマルチガミーというスタンスをとっている。

振られポリなわたくしではあるが、仲良くしているときには、「このひとはわたくしと一緒にいるときがいちばん安心して楽しめるに決まっているし、わたくしとするセックスがいちばん気持ちよくて幸せを感じるに決まっている」という不遜なほどに楽観的な思考を、とりあえずこの先も手放す気はない。

世の中には、あまりに相手のことが好きだから振られるのが怖くて、そうなる前に自分から振るというタイプのひともいるし、さらには振った後もなお自分のことを好きでいてほしいとか、自分に振られてどん底に落ち込んでほしいなどという身の程知らずで厚かましい願望の持ち主もいる。方向性は違えど、わたくしの不遜さといい勝負である。


【タフまんワールド・用語解説】

▼モノガミーvsポリガミー
モノガミーmonogamyとは、モノmono(単一)+ガミーgamy(婚姻制度)=単一婚、一夫一婦制。そこから転じて、性愛関係は一対一に限るべしというロマンティック・ラブ・イデオロギーを指す。モノガミストからすると、ポリガミストの思考やありかたは「浮気」とされる。また、つねにカップル単位での行動を重視する傾向を「カップル主義/カップル指向」と呼ぶ。

ポリガミーは、ポリpoly(複数)+ガミーgamy(婚姻制度)=複数婚、一夫多妻制、一妻多夫制、多夫多妻制の意。ただし、世界中の多くの国は法律で単一婚を定め、複数の異性との法律婚は重婚として法律違反となるため、「ポリアモリー(複数愛。アモリーamory:愛)」という表現で関係形態をあらわすのが現実的である。これと似た関係形態をあらわす言葉に「複数恋愛」「オープンマリッジ」「オープンリレーションシップ」などがある。

▼マルチガミー
こんな英語表現は存在しない。某人の造語を拝借して使っている。この場合のマルチとは、マルチな性愛関係形態をあらわす。というのも、本文に記したように、モノガミーとポリガミー(ポリアモリー)はなにかと対立しあい、互いに排除しあう傾向にあるが、マルチガミーはどちらも排除せず、パートナーの指向や相互関係の内実によって、関係形態もその都度変容する可能性があることから、指向する性愛関係形態を流動的にシフトする「マルチガミー」という用語を発明した。だが、ポリアモリー同様に、厳密には「マルチアモリー」と表記すべきかもしれない。また、本来のpolyamoryには「一貫した性愛関係形態にはこだわらない」という意味合いがあり、わざわざマルチガミーなどという造語を発明する必要はないらしい。


INDEX
[2009/01/06]
第35回 口臭とまん臭のビミョウな関係
[2008/12/31]
第34回 まんこ座談会(2)
[2008/12/25]
第33回 まんこ座談会(1)
[2008/12/17]
第32回 ひどい言われよう
[2008/12/10]
第31回 性を語る困難
[2008/12/03]
第30回 潮吹きは謎でも神秘でもない
[2008/11/26]
第29回 マニアでフェティッシュ?
[2008/11/19]
第28回 挿入するなら指がいい
[2008/11/13]
第27回 オナニーの効用
[2008/11/05]
第26回 「付き合う」ってなんだろね?
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