●第20回 世の中には「本気」と「浮気」しかないのか?

タイトルは別立てだが、流れとしては前回コラムの続編のつもりである。なので、読者諸姉もそのつもりで読まれたし。

マルチガミーを名乗る以上は、モノガミスト(あるいはカップル主義者)を批判するような言動はなるべく働きたくないのだが、どうしても解せないことがひとつある。

それは、ポリアモリーを「浮気/遊び/不真面目」呼ばわりすることである。そうやってポリアモリーを周縁化しておいて、自分たちモノガミストは「本気/真剣/誠実」というポジションを勝手に確立する。

へーぇ。

なんだか、例の構図に似てるよね。同性愛(もしくは非規範的性愛)を「異常」呼ばわりすることで、異性愛は「正常」であるとふんぞりかえる、例のアレ。「異常」な同性愛の存在なしには自分たちの「正常」さが補完されないわけで、結局は自分たちが「正常」であることを(かれらなりに)証明するために、「異常」な同性愛を必要としているという、例のアレ。

モノガミストの「本気/真剣/誠実」さを証明・補完するためには、ポリアモリーが「浮気/遊び/不真面目」でなければならないわけですかそうですか。同性愛なしに異性愛の「正常」さを証明できないように、モノガミーもまた自律できない関係形態なのですね。ポリアモリーを批難・矮小化しなければモノガミーの正当(正統)性が失われるのですね。

そもそも性愛関係における「本気」ってなに? 「真剣」ってどういうこと? 「誠実」って、なに言ってんの? 「私は“真剣”な交際を希望します」って言われてもぜんぜんピンとこないし、嬉しくないし安心もしない。だって、「本気/真剣/誠実」な付き合いって、肩こりそう。どっと疲れてすぐ燃え尽きそうで、わたくしには無理。

おそらく、「私は絶対に浮気しません!」というような意味で「本気/真剣/誠実」と言ってるんだろうけど、どうしてそんなこと言い切れるわけ? と不思議に思う。いつなんどきだれとどんな出会いがあるかわからないのに。「本気/真剣/誠実です!」ってわざわざアピールするのは、自分の本気度/真剣度/誠実度に自信がなくて、自分で自分を奮い立たせるために言っているんでしょ? という気がする。独り言ならひとりで言ってくれ。

ついでに言うと、「私にはあなたしか見えない」っていうのも勘弁してほしい。お願いだからもっと視野を広げてください。「あなた色に染まりたがる」ひととは会話が成立した試しがありません。

「本気/真剣/誠実」だろうがなんだろうが、そんなことをいちいち口に出して相手にアピールしなくても、わたくしの場合は親密になれそうな、あるいはなりたいと思う相手のことをいつも考えるようになって頭から離れなくなるし、相手の行動や思考のクセにはいつの間にか影響されるようになっていく。その相手とかかわることで、それ以前の自分とは、ものの感じかたや受け取りかたが変わっていく。そうやって自分のなかに相手が、相手のなかに自分が、少しずつ溶け合って編み込まれていく。それが、だれかと親密な関係になっていくことなのだと、わたくしは考えている。「本気」かどうかなんて、まったく問題ではない。

いつのころからかわたくしは、他者をその「発言」ではなく「行動」で見るようになっていった。そもそもは相手の「発言」を額面通りに受け取るタイプなのだが、だからこそ相手が額面通りに「行動」しない場合のズレに気づいてしまう。「発言」と「行動」にズレがある場合、その「発言」を嘘だと批難するのではなく(当人は嘘をついているという自覚がない場合が多い)、「発言」はあくまで建前であって、「行動」は本音と受け取ることにしている。

たとえ無自覚であるにしても、「発言」だけならいくらでも虚飾が可能だ。いつぞや、後足で砂をかけるようにしてわたくしの前から逃げていったヤツが、その一週間後にはつらっとして電話をかけてきて、「やり直したい。あなたとちゃんと付き合いたい」とほざいたことがあり、わたくしは電話口で思わず失笑した。暇つぶしのつもりで「付き合うって、どうすること?」と訊くと、「どんなことでもふたりでとことん“真剣に”話し合って解決するの」だとさ。それができないから逃げ出したのではなかったのかね。

相手がどういうつもりでアプローチしているかは、「発言」と「行動」のズレに注目すれば容易にわかる、というわけである(ソイツの「発言」の“真剣さ”はつねに演技っぽくてわざとらしくて、わたしは鼻白んでいたりした)。

それはともかくとして、「本気/真剣/誠実」でなければ「浮気/遊び/不真面目」と単純化して分割する「本気/浮気の二元論」はもういい加減おしまいにしませんか? リアルな関係構築って、お互いのモードを「真剣」とも「遊び」ともはっきり名付けられない、むしろどちらでもない別次元のモードにシフトして営まれるものだとわたくしは思うのである。

というか、わたくしは「遊び」をこそ「真剣」に楽しんでしまう性質だったりするし、ポリアモリーにはそもそも「浮気」という概念はない。浮気とはモノガミストのやることである。「本命」とは「本気/真剣/誠実」モードで接し、本命以外の相手に対してはいい加減に、自分の気が向いたときにはいつでも気分次第で都合よくもてあそべるとでも思っているのだろう。

とんでもない誤解である。他者をバカにするのもたいがいにしろと言いたい。また、やっていることは単なる浮気にすぎないのにポリアモリーを僭称する向きも、じつに救いがたい。

ポリアモリーはとにかくマメでなければ務まらない。どの相手とも分け隔てなく優劣つけず接するというか、いずれも優劣つけがたいプレシャスな関係だからこそ優先順位がつけられないのである。それぞれの関係をリスペクトこそすれ、ケチをつけたり別れを要求したりすることはない。

ついでに、誤解のないように申し添えておくが、ポリアモリーのパートナーは「誰でもいい」わけではない。そこらへんのテキトーなヤツを拾ってくるぐらいなら、独りでいるほうがずっと望ましいのである。

そう、わたくしの考えるポリアモリー(あるいはマルチガミー)キーワードは「孤独」。ポリアモリーとシングル指向は、じつはとても近い関係にあるとわたくしは思う。これについては、また機会を改めて述べることにする。


【タフまんワールド・用語解説】
▼モノガミー/ポリガミー(ポリアモリー)/マルチガミー

前回の用語解説欄を参照のこと。


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[2009/01/06]
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[2008/12/31]
第34回 まんこ座談会(2)
[2008/12/25]
第33回 まんこ座談会(1)
[2008/12/17]
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[2008/12/10]
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[2008/11/26]
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