突然だけど、LTPはロングタイム・パートナーシップの略ね。先日、チャット仲間のヒコヒコさんに第23、24回原稿を読んでもらってブレインストーミング(という名の雑談)をした。なかなか興味深い展開だったので、そのときのログを公開してみるよ(手抜きって言うな)。ちなみに、チャットのなかでわたくしの一人称が「おれ」になっているけど気にするでない。一人称を固定化しないのはわたくしの単なる癖なのよ(文体も液状化しつつある)。
*注:ヒコヒコさんは、去年大恋愛をして即破局したというドラマチックな展開を経過し、真っ白に燃え尽きたまま現在にいたっているかたである。
ヒコヒコ(以下、H)「LTPでセックスレスになった恋人関係と、最初からセックスしない友人関係ってどう違うんだろ? どこか違うと思うけど、どのみちオレは、友だちも恋人も長続きした関係がひとつもない気がする(泣)。家族は18年でいちばん長いかな」
ミヤマ(以下、M)「ま、おれらは旅人ってことで。いちいち環境を変えないと生き延びられないタイプなんだと思う。同じところにいると苦しくなる感じ?」
H「オレも仕事がそうだった。長続きするひとが不思議。恋人とは長続きしたいと思っていた。喪失感というか、ひとりにしないでくれーっていう感覚がすごく強い」
M「およよ」
H「喪失感って、自分の体の一部が消えるような感覚じゃね? でも、手に入れるとぜんぜんどうってことねーっていうか、なんでこれがほしかったわけ? みたいな(笑)。付き合ってるときに相手に何を見ようとしてるんだろ。そのまんまの相手なんてぜんぜん見れてないのかしら」
M「相手(との関係)に“いまだ見ぬ自分”を見るのでは? それは理想の自分かもしれないし、それまで感知すらしなかった自分を、相手という鏡のなかにかいま見るのかも。だから、そのまんまの相手ではなく、ちらっと見えた“いまだ見ぬ自分”を捉えたくて執着するのかな」
H「自分が条件反射的に魅かれるのって、相手のハッピーな部分や才能や素敵な部分より、すげー暗くてドロドロした部分なんだなと思って、そこがオレは病気なのかなって思った」
M「ほう」
H「ex(以前の交際相手)はある意味ハッピーなひとだった。でも、ハッピーさんで自己肯定感が高まって満たされたので、いよいよ自己解決に向かおうとして次の本を開いたら、すげーもんがでてきちゃった(苦笑)」
M「おれもLTPで自己肯定感が育まれたのは確かよ。そしたら次は………(苦笑)」
H「別れかたによっては自己肯定感が低くなるよね。exとたまたまメル友になって、いまさら突っ込んだ話できたりして、相手の当時の状況がやっといまのオレにわかったわけ。ほんと『自分のバカ!』って思って、泣いて謝った。こんな健康なひとを簡単に……って。オレほんと自分は病気だと思う(笑)」
M「旅人でありチャレンジャーなのよ、あーたは。exからもらった安心感とハッピーを、次のかたにお裾分け♪」
H「そう思ってたけど、無理だったみたい。すげー敗北感で、自尊感情がズタボロ……」
M「いきなりラスボスに出会っちゃった感じ? それもあなたの力になってるはず。経験値とかMP(マジックポイント)とか」
H「ラスボスって(笑)。前は、終わった関係は見ないことにしようと思えばできたの。『オレ平気だもんね。じゃ次』みたいに、パッと本を閉じる感じで。でも今度は、あえて閉じないで感情のアンテナを開いているから、すげー修行だなと思った。ラスボスをちょっとでも連想させるものを見るとフラッシュバックが起こる。以前は無自覚に相手を傷つけて吟味も反省もなかった。すぐ閉じてたから」
M「すごいね。すごい気づきですよ、ヒコヒコさん!」
H「えー、ほめられちった………」
M「ひとりひとりの恋人とは長続きしていなくても、exとの関係で下手こいたことを、ラスボスへの敗北から気づいて学びなおそうとしてるじゃん。点と点がつながって、ヒコヒコさんのなかでは線になってるんじゃね?」
H「うーーーん、そうかなぁ」
M「当時はばっさり切るしかなかったってことに気づけただけでもすごい発見ですよ。気づかずに同じこと繰り返すのってありがちじゃん。自己肯定感が低いほど、防衛のため自分の過ちに目をつぶるものだし」
H「それまでさんざん同じこと繰り返してきたからね(苦笑)。原稿の話だけど、LTPについてもっと掘り下げて書いたら? 『長ければいいってもんじゃない』の続きをもっと読みたい。ほかになにが重要なのかとか」
M「悩ましいな(笑)。でもチャレンジする価値はありそうだ」
H「自己肯定感はLTPの大きな利点のひとつだと思う。ただ、その関係が終わると一気に肯定感が下降するのは逆にデメリットかも」
M「そうかな。exとのあいだでアゲられた肯定感は、関係が終わった後もサガらない気がする」
H「なんとなくわかるけど、ラスボス関係での自尊感情の引き下げがはなはだしい(笑)」
M「exによってアゲられた自己肯定感とラスボスにサゲられた自己肯定感は別物っぽい。いま目の前にあらわれた敵キャラをきっちり倒さないと、もっと強い敵キャラとは出会えない設定みたいな? 確かにラスボスからのダメージは大きいんだけど、それを受けるに足る基礎体力としての自己肯定感はちゃんとあるって感じ」
H「ほう。しかし、なぜにRPG比喩?」
M「別な言いかたをすると、ひとにはそれぞれ自分の身の丈にあった出会いの縁があると思うのよね。根拠ないけど」
H「じゃあ、オレのはなんだったんだろうか……」
M「あんまり急いで敵陣に向かうと、いきなり太刀打ちできない強敵と出会っちゃうのよ>RPG」
H「オレ急いじゃった? そういう場合、RPG的にはどーすんの?」
M「さっさと馴染みの土地に舞い戻り、もっと経験値あげてから出直し。でもね、ドラクエのパートいくつかで、主人公の経験値をマックスまであげてボスキャラと対面したら、ボスキャラが逃げていった、という逸話がある(笑)」
と、うまいことオチがついたところで、また来週(逃)。
【タフまんワールド・用語解説】
▼LTPでセックスレスになった恋人関係と、最初からセックスしない友人関係
チャットでは「風呂の比喩」が持ち上がったが、発展性はなかったので割愛した。つまり、友人とは一緒に風呂に入ることはあっても欲望はしないし、裸を晒すことに抵抗もない、だからどーした、というような話。
▼ex(イーエックス、エックス)
以前の恋人のこと。たとえば、前カノのことはex-girlfriendという。
▼本を開くとか、閉じるとか
ここでは、「本=恋人」「開く=出会う/付き合う」「閉じる=別れる/別れの感情にふたをする」という比喩で使用している。
▼ラスボス
RPGのラストに登場する最強のボスキャラ。恋愛業界のスラングでは、「地雷」との別名もある。つまり、恋人にするには(特にメンタル的に)かなり厄介でヘビーな相手という意味。あえて地雷と付き合う勇気ある行動をPKO活動(地雷撤去)と言ったりする。