●第26回 「付き合う」ってなんだろね?

つい先日、原稿執筆のネタ探しを兼ねて、ちょうど一緒にお茶してた瀬久原さんに、「いままででいちばん長かったお付き合いはどのくらい?」と訊ねると、「長くて1年くらい。いちばん短かったのは5時間」との答えが返ってきた。5時間というのは、結果的にはワンナイトに終わったということだが、そういうかかわりもお付き合いの範疇としてとらえる瀬久原さんの度量の大きさにちょっと感動した。

付き合いが長けりゃいいってものではない、と、わたくしが思うのは、わたくしの両親を見てのことだ。結婚生活36年にして離婚し、母T子さんはその1年後に他界。父Sくんは40年ぶりに再会した高校時代の恋人と再婚。Sくんは、T子さんとのあいだにはほとんど会話がなく、つねに不穏な空気を漂わせていたが、現在の妻S子さん相手ならマシンガンのようによくしゃべる。見ているこちらもホッとするほど他愛ないおしゃべりに花を咲かせている。

よく、「なんでも話し合う」ことが仲良しの印であるように語られるが、「なんでも」というのは、哲学的で深淵な内容だとか、いままでだれにも打ち明けたことのない心の秘密などではなく、じつは、くだらないほどどうでもいいことなのではないかと、このふたりの会話を聞いていて思う。

SくんとT子さんは職場結婚だったが、結婚当初からふたりの関係は破綻していた。S子さんもS子さんで、前夫との関係は最悪だった。酒乱による暴力を毎日のように受け、耐え忍んだ末に、前夫は身体を壊して病死。以後、女手一つで3人の子どもを育て上げた。初婚に挫折した同士が還暦をまわって再会を果たし、スクラップ夫婦を形成したわけだ。

また別な日に、L友の荻野目さんからこんな話を聞いた。荻野目さんには「ボーイフレンド」と呼んでいる、月1回お食事をするお付き合いのクライアントさんがいる。昭和一ケタ世代の不破さんである。不破さんのご両親は、それぞれもともと別の家族と暮らしていた。お母さんはお母さんで夫と子どもがいたが、あるときなにもかも嫌になってひとりで家を出て上京した。別のだれかと駆け落ちしたわけではなく、単独の蒸発である。不破さんのお父さんも同じく、もともと妻子がいたが、やはりその生活が嫌になって家庭を捨てて上京。そんなふたりが出会って結婚し、不破さんが生まれた。

不破さん自身も、若いころは某政党の党員で、党員仲間のとある女性と恋仲にあったが、女性のほうは親の決めた許嫁がおり、結ばれることはなかった。その後、知人の紹介で別な女性と内縁関係を結んだが、10年ほどで関係を解消。その女性のことはあまり好きになれず、やはり不破さんの胸の内を占めているのは相変わらず党員仲間の女性のほうであった。そんな不破さんは、現在80歳でシングルライフを満喫している。

父Sくんと再婚相手のS子さん、不破さんのご両親などのケースを知ると、付き合うとか連れ添うとか伴侶とかロングタイムパートナーシップとは、果たしてなんなんだろうかと思う。

いまの若い異性愛者たちのなかには、「恋人付き合い面倒くさい。異性の友だちでいいじゃん」とか、恋人はいても結婚に対して懐疑的なひとたちが少なからずいる。その一方で、付き合いだしたかと思うとすぐに一緒に暮らしはじめたり、将来ともに生活するための青写真を早々と恋人に示してみせるレズビアンたちが身近にいる。安定した永続的な関係の追求は、ひとが本来不安定で非永続的な存在であることからくる不安、心もとなさを解消したいという思いによってドライブがかけられるのかもしれない。それにしても、対男性との性愛関係において、自分の人生の舵取り役を譲り渡すまいと慎重に取り組むヘテロ女子にはいたく共感するが、恋人が男でないからといって易々となにもかも溶け合ってしまおうとするおレズの面々には、なにをどう進言していいのかわからない。

しかし、恋人同士が同居をする必要ってあるんだろうか。少なくともわたくしは恋人だからという理由だけで同居を即OKしたりはしない。そもそも他人との同居については、経済的負担の軽減と生活の合理化以外にどんなメリットがあるのかわたくしには想定できない。同居相手との性愛関係の有無は問わないし、むしろ最低限のプライバシーを尊重しあいながら、頻繁に顔を突き合わせても苦痛にならない程度の気安さと遠慮のなさがあればいい(これがけっこう難しいのだが)。そういう意味では、性愛関係を取り結ぶより同居を実践するほうが、わたくしにとってはハードルが高い。

恋人同士が同居すれば、まるでひとつの人生をふたりでシェアしているような一体感が味わえるのだろうか。それは錯覚にすぎないし、わたくしにとっては息苦しいことこのうえない。生活費を肩代わりしあうことは可能だが、お互いの人生を肩代わりしあうことなど不可能だ。

ロングタイムパートナーシップにおいて、安定と情熱の両立は可能か? 可能だが、誰にでも使えるレシピではない。恋愛感情は不安ゆえに高まり、その不安の解消を求めて互いを引きつけあう。その結果、安定を得る。しかし、情熱には距離が必要だ。距離があるから近づきあうことができるのであって、互いのあいだに距離がなくなり、ぴったりと寄り添いあえば、情熱の炎が鎮まるのは当然のこと。炎を再燃させるには距離をあけて空気を入れなければならない。

なーんて書いてみたが、今回のコラムはどうも歯切れが悪い(エロ味もないし)。多くのひとびとが望むらしいロングタイムパートナーシップとか、恋人といかにラブラブ気分を長持ちさせるかとかいうトピックに、わたくし自身ほとんど興味も考察の意欲も湧かないのだということがわかった次第である。

【タフまんワールド・用語解説】
▼L友(エルとも)

レズビアンの友人の略。ゲイの友人の場合はゲイ友。なんで友人のセクシュアリティをいちいち頭につけるのかっていう余計なお世話的質問は受けつけません。


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[2009/01/06]
第35回 口臭とまん臭のビミョウな関係
[2008/12/31]
第34回 まんこ座談会(2)
[2008/12/25]
第33回 まんこ座談会(1)
[2008/12/17]
第32回 ひどい言われよう
[2008/12/10]
第31回 性を語る困難
[2008/12/03]
第30回 潮吹きは謎でも神秘でもない
[2008/11/26]
第29回 マニアでフェティッシュ?
[2008/11/19]
第28回 挿入するなら指がいい
[2008/11/13]
第27回 オナニーの効用
[2008/11/05]
第26回 「付き合う」ってなんだろね?
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