
前回はお休みしてしまって申し訳ありませんでした。どんくらいあたしの原稿を楽しみにしてくれる読者がいるのかわからないけど、一応お詫びしておきます〜。
さて、先週の土曜日、あたしは幼なじみの友人二人と、実家近くのオートレース場で開催されるお祭りに行って来た。三人とも、いわゆる「負け犬(30代、独身、子なし)」である。一人は現在無職(理不尽な理由で会社をクビになった)。もう一人は地元の市職員。二人とも未だに実家住まいだ。小学校の頃から友達で、そのまま飲み友達になり、今でも時々3人で遊んでいる。
その日は雨模様だというのに、祭会場は多くの人でにぎわっていた。本当に日本は少子化なのだろうか?と、疑いたくなるくらい、小さい子どもと、その両親という組み合わせが多い。もしくは、ギャルとチンピラのカップル。女子の浴衣率は高い。あたしの出身市は、「日本一住みにくい市」に、もう何年も連続で選ばれている。病院の数や交通の便などで判断されるらしいが、そういった環境を除いても、たしかになんだか荒んだ町であった。同級生は、濃度の違いはあれ、みんなヤンキー魂を植え付けられていた。大人になった彼らのほとんどは、同級生やその兄弟など、非常に近しい所から配偶者を選び、未だに市内に住んでいる。
あたしたちはどう考えても体に悪い、そしてたいして旨くもない(でも不思議と旨く感じる)屋台飯を大量に買い込み、ビールとともに食い散らかした。広島流(本当にこう記してあった)お好み焼き、たこ焼き、フランクフルト、焼そば、フライドポテト、唐揚げ、かき氷…ああでも、オートレースの開催日に営業している店のモツ煮はマジで旨かったなあ。その店のおばちゃんはビールもケチらず注いでくれるので、何度も買いに行っていたら、顔を覚えられてしまった。「次飲む時はあたしも誘って!」とダミ声で言いながらビールを渡してくれる。こうゆうおばちゃんたちが、あたしは大好きである。次の日の花火大会のために、席取りに誰かが敷いたゴザに勝手に上がり、酒盛りをする。
無職の方の友人は、中学時代からバイトをして、貯金をしていたにもかかわらず、その金のほとんどは、母親に奪われた。それは姉や弟の専門学校の入学金や、弟が通う自動車教習所の授業料になったりした。弟は「男」だから。ちなみに次女である彼女は高卒だ。大学や専門学校に行かせてはもらえなかった。そして2年前、彼女はようやく自力で車の免許を取った。定職に就かない彼女に向かって、先日、父親はこんなことを行ったそうだ。「毎日ブラブラして! 誰のおかげでこの家に住めると思ってるんだ!」 母親は、次女の援助を受け続けていたことを、夫には一切話していなかったのだ。さすがにこれにはブチ切れて、泣きながら父親とケンカしたと言っていた。「同じこと弟にも言ってみろよ!」と。彼女はビールをあおりながら、明るく、しかしくやしそうに愚痴を言う。
公務員の方の友人は、父親の死後、相続の関係でこれまで住んでいた土地を半分手放さねばならなくなり、残った土地に、35年ローンで家を新築した。特に結婚する気もない彼女は、すでに母親と妹を養う大黒柱である。「負け犬」という言葉の一人歩きはともかく、元ネタである酒井順子さんの「負け犬の遠吠え」に描かれた負け犬たちは、みんな、高学歴、高収入というイメージがある。今ひとつピンと来なかったのは、そのせいだろうか。あたしのまわりには、歌舞伎にハマる余裕のある人など、いない。
8時で祭会場が閉められてしまうので、すぐ側の行きつけの飲み屋に移動する。腹はいっぱいなのに、ついいつものメニューを注文してしまう。その日は反日感情がどうとかで、やたら報道された中国対日本のサッカーの試合の日で、あたしたち以外の客は、店内のテレビに釘付けだった。
石原慎太郎が、自民党が選挙で負けた理由を、「小泉総理は国民がどれだけ年金に依存しなければ生きて行けないかをわかっていなかった」というような感じで、もっともらしく分析していたが、同じ口で、三宅島の島民に向かって、「島に帰るのは勝手だが、それで何があっても自己責任」と言っていた。貧富の差が全くない世の中なんて望まないし、無理だとも思う。だけど、「持つ者」は、「持たざる者」への想像力があまりにも足りない。
少子化だと言うけれど、「1」以上あるだけでも充分じゃない? と思うのはあたしだけだろうか。だって、あたしみたいに産まない女がいるってことは、産む女は二人以上産んでるってことでしょ? 充分じゃん。別の幼なじみに、二人の子どもの母親がいるのだが、金がかかるからと、三人目は全く考えてないらしい。二人目すら、本当は作るつもりがなかったと言う。もしも彼女が二人めを中絶していたら、男たちはそれを女の身勝手と言うのだろうか。彼女は毎日、深夜のパートに出ている。
あたしと無職の友人は、酔っぱらうとなぜかキスをする。口と口で。終電前に帰ろうとするあたしに、「今日は実家に泊まっちゃいなよ〜!」と友人は抱きつく。しかし、父親しかいない実家になるべくなら泊まりたくないあたしは、「ん〜、また今度!」と、キスを返す。みんないろいろある。今年の夏は暇も金もなく、南の島でリゾートなんてこともできなかったが、その祭りの一日は、とても楽しいあたしの夏休みであった。