ウンコ23本目 「オスカルになった日」

大阪に行ってきた。旅の主目的は京都へ紅葉を見に行くことだったのだが、この時期、京都の宿はどこも満室。そこで仕方なく、大阪のホテルに四泊したのである。しかし、拠点を大阪にしたのには、もう一つ理由があった。「宝塚大劇場に行く!」である。関東在住のヅカファンにとって、本場である大劇場での観劇は、いつか叶えたい夢の一つであるのだ(たぶん)。

荷宮知子さんの本を読むと、昔のヅカファンは、「ヅカはフェミだから好き」などと言ったそうである。残念ながら、あたしは「ヅカはフェミだから」好きなのではない。経営者も作家も男だし、劇中の分かりやすい「男像」「女像」も理解出来ない。客もフェミっぽくない。そもそも最初は、「ツッコミどころ満載」なその舞台を、笑っていたのである(今でも本気で笑いをかみ殺す時もあるが)。たしか、初めて見たのは衛星放送でやっていた、「JFK」。あの、「JFK」である。舞台には、でっかいJとFとKの電飾がギラギラと輝いている。そこを、ケネディの棺を持った役者たちが、「JFK…JFK…♪」と、裏声で歌っていた。「なんじゃこりゃあっ!!」と、テレビの前でひっくり返った。あたしが今まで突っ込みながら見ていた、内舘ドラマや昼メロの比ではないおもしろさである。それで、テレビで放映されている宝塚を見るようになったのだ。ところが、いろいろな舞台を見ていると、はじめは見分けのつかなかったスターの顔の区別が付くようになる。演技や歌にも個性があることを知る。そして、いつのまにか、ごひいきのトップスターがあたしの心の中にいたのだった。

今回大劇場に見に行った、雪組公演「青い鳥を探して/タカラヅカドリームキングダム」(このタイトルセンス…すてき)で、主役を張っていた轟悠も、あたしのごひいきの一人である。ただし、彼女は現在の雪組トップスターではない。2001年に雪組のトップを引退し、現在は専科に所属する役者である。宝塚には、雪、星、月、花、宙組の五組の他に、専科と呼ばれる組織がある。専科は、単体で舞台を作ることはない。そこに所属するのはたいてい、第一線を退いた年配の役者であり、組は関係なく、王様だの、女王だの、貫禄のある役を演じるのだ。普通、トップスターまで上り詰めた人間は、この専科には残らず、すっぱりと引退する。だが、轟悠は、その実力故に、宝塚に留まることを許された、スターの中のスターなのである(他に、トップを務めた後、専科に残ったのは榛名由梨や鳳蘭など)。

轟悠は、エロい。その風貌は、男には見えないが、女にも見えない。「宝塚の男役」としか言えない。舞台に立つ轟悠を、オペラグラスで観察してみると、その流し目のエロさは、国籍すら不明である。最近ようやくわかった。あたしは、この手の、「宝塚の男役としてしか居場所のないタイプ」が好きなのである。たしかに、天海祐希や真矢みきにも、スターのオーラは感じた。しかし、日本の芸能界ですんなり「女優」が出来てしまう人(ヅカでは少年っぽい役をやる中性的なタイプね)には、いまいちハマれないのだ。

宝塚というものは、男役トップと、娘役トップの純愛ストーリーを楽しむものと思われがちである。確かに、「ああいう男性に愛されたい」と、うっとりする客もいるのかもしれないが、あたしはそうではない。主役の男役と、2番手の男役のカラミこそが、あたしにとっての、見どころなのである。二人は、友人だったり、兄弟だったり、ライバルだったりする。彼らの、娘役を差し置いた絆に、やおい的物語を見出すのである。もちろん二人の関係は、ストレートには表現されない。と・こ・ろ・が! 今回のレヴュー、「タカラヅカドリームキングダム」では、轟悠と、雪組トップ朝海ひかる(少年タイプ)との、キスシーンがあったのだ!! もちろん、オペラグラスで堪能させていただきました。轟悠と娘役のキスシーンでは、観客から「イヤ〜!」なんて声が飛んだが、朝海ひかるとの時は何も言われてなかったなあ。ああ、あたしも、轟悠に抱かれたい…。

さて、以前にもコラムで書いたが、娘役に感情移入できないあたしは、男役になりたいオンナである。ここ、宝塚大劇場では、その夢が叶うのである。宝塚の衣装を着て、写真を撮れるスタジオがあるのだ。たくさんの貸し衣裳の中からあたしが選んだのは、もちろん、男役フィナーレ(燕尾服に羽根を背負うヤツ)と、「ベルばら」のオスカル。残念ながらここにはメイクサービスはなく、自分で化粧をしなければならない。同行した友人から、「こんなに化粧の濃いエリちゃんは見たことがない」と言われるくらい化粧をしたのであるが、本物のヅカのように、目から1センチもはみ出たアイラインを引く勇気はなかった…。受付を済ませ、更衣室へと向かう。二人掛かりで衣装を着せられていると、気分はちょっぴりトップスター。しかし、その衣装は本物に比べ、安い生地で作られているのは明らかで、オスカルの衣装などは、やはり人気があるのか、ところどころほつれていた。それでも、羽根を背負った時は興奮したさ。でも、勝手にポーズを付けられ、カメラのシャッターを切られ、あっという間に脱がされ、ゆっくりと堪能する暇はなかった…。

さて、出来上がりであるが、やはり、化粧が薄かった…。次は、恥ずかしがらずに、付けまつげを二枚は付けよう。アイラインも目からはみ出させよう。チークもばんばん入れよう。そして、もう少しやせよう…。あたしの理想の男役になるには、やっぱ、頬がこけてないとなあ。男のためにはダイエットできないが、男役のためならあたしゃやるよ。東京に戻り、このヅカ写真を、友人知人約20人に見せてまわったのであるが、本気でうらやましがってくれたのは、あたしのヅカ師匠である、弟(あたしより全然ヅカに詳しく、一人でも見に行く)だけであった。ウエディングドレスを着たがる人は「普通」扱いされるのに、なんで?

(あたしが見た轟悠の舞台は、来年、東京でも上演されます。もう当日券しかないみたいだけど、興味を持たれた方はぜひ! その際は必ずオペラグラスをレンタルするように。でも、お芝居の内容には期待しないでね…)


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[2006/02/02]
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