ウンコ25本目「私って、ビンボーだったの?」

先日、東京・丸ビル近くのカフェでお茶を飲んでいた時、あたしの隣に二人の若い女の子が座った。二人とも、とてもかわいい顔をしていて、一人はパステルブルーのニットカーディガンを、着膨れすることもなく、さらりと着こなしていた。合コンなどではモテモテのタイプであろう。二人は、運ばれてきたケーキセットを前に、互いの顔をデジカメで撮影し合っている。撮った写真を液晶で確認しながら、二人は盛り上がっていた。

「もう少し胸張った方がいいかなあ?」
「前髪はこうした方がかわいいよお」

自分の、一番イイ顔を、友人の前で、テレもせずにできるとは。これがプリクラ世代なのか。それとも、二人はモデルか何かなのだろうか。ところが、続けて会話を盗み聞きしていると、二人は就職活動中の大学院生のようであった。

「他の人より就職が2年遅れるわけじゃない? そうすると、結婚できるのかなあって心配になっちゃう。あたし絶対仕事は一生続けたいのね。でも、それだと子どもがかわいそうじゃない?」

確かに、女が仕事を続けると、子どもを育てにくい社会だよねえ。でも、なんだろう。この共感できない感じ、つーか、ムカつく感じは。

「あたし、前は社会貢献したいから女子アナになりたいって言ってたでしょ? でも、よく考えたら女子アナって、社会貢献じゃないよねえ」
「サオリ(仮名。ちなみに自分のこと)はね〜、絶対起業したいの!」
「しなよしなよ〜。そんで、パパの会社、買収しちゃえ!」

社長令嬢…大学院生…しかも美人…。あたしは、彼女らに何一つかなわないではないか。
高校受験の時、母親は内職をしながらあたしに言った。「公立なら予備校行ってもいいけど、私立ならダメ。うちにそんな余裕はない。」もちろん浪人など許されるわけもなかったので、女子大付属の私立校を選んだ。そのくせ親は、娘に学歴を付けたかったのか、大学院に行ってもよいと言ってくれたが、遠慮した。まるで「チキンライス」(作曲・槇原敬之 作詞・松本人志 歌・浜田雅功)の歌詞ではないか。嫌いなのに。あの歌。本当はもう勉強したくなかっただけだが。だいたい、なぜあたしなんぞがこんな、こじゃれカフェにいたのかといえば、その日はとても天気が良かったので、皇居、銀座、丸の内を巡る、2階建てオープンバスに乗りにきたのだ。しかし、日曜日だったため、あたしのようなおのぼりさんでバスは満席であった。そこで、時間を潰すためにカフェなどに入ってしまったのだ。

「一生仕事したい」などと言いつつ、どうせお前らはバリバリの証券マンかなんかと結婚して、かわいい赤ちゃんを産むんだろうよ。と、心の中で毒づきつつ、そんなことを考えてしまう自分をまた恥じてみたり。彼女たちはきっと、こんなドス黒い心を持たず、一生ニコニコして暮らせる人種なのだ。彼女らとあたしを、同じ「女」という言葉でくくるのは、あまりにも乱暴ではないか。

丸の内のカフェを出て、銀座七丁目のライオンビヤホールへ向かう。ここは、外観からは想像もできないが、昭和9年に作られたビヤホールがそのまま使われている店舗なのである。天上は高く、壁も床も全て細かいタイル貼り、正面には大きなモザイク画。店内に一歩足を踏み入れると、タイムスリップしたような気分になる。最近、町を歩いていると、自分の体型が一世代前になりつつあるように感じるが、このビヤホールではあたしも小顔。なぜなら、客の年齢層が高いのである。銀座という場所柄か、オヤジだけでなく、おばさん率も高い。みんな楽しそうにジョッキをあおっている。メニューは普通のライオンと変わらないが、雰囲気はとてもいい。つまみで人気なのはなんと言ってもナポリタン! 壁には、開業当時の写真が飾られている。写真の下に添えられた「女性もビールを飲む時代になりました」の一文。昭和9年からそんなことを言われ続けているのだ。ビール会社が水着キャンギャルをやめたとニュースになる平成16年。とほほ。

お育ちのせいなのか、それとも年をとったせいなのか、あたしは最近、場末の居酒屋で飲むことが多い。「昭和なつかし風創作和食居酒屋」とかではなく、本当に昭和からず〜っと営業している店。あたしの行きつけは、東京北区赤羽のOK横町。そういえば、日本もアジアなんだよなあと、再確認できる、無国籍な小汚い路地である。居酒屋に混じって、「トレンデーサルーン」という名の、風俗店がある。看板には、「F4000円S8000円」としか書いていない。フェラとセックスか。この店だったらあたしでもナンバーワンになれるだろうか。などと妄想しつつ、居酒屋ののれんをくぐる。壁に張られた手書きのメニュー。つまみは激安、ポテトサラダにもつ煮込みどちらも300円。生ビールを2杯ほど飲んだら、次はホッピー。開店は朝10時で、昼間っからオヤジが飲んだくれてる、そんな店。店内はオヤジだらけだが、時折、女二人組などもいて、うれしい。こんな店で、「負け犬」友達と飲んだくれる幸せ。でも、酒井順子さんは行かないよな。きっと。

「女性が入りやすい店」なんてくそくらえだ。こじゃれバーで交わされるカップルの会話の方が、アル中オヤジよりも恐いことだってあるのだ。赤羽も、再開発が進みそうな町なのだが、空室だらけの高層ビルはもういいよ。あたしの憩いの場所をこれ以上奪わないでくれ。

とはいえ、あたしはまだまだ成り上がる気満々である。こんなあたしでも金持ちになったら代官山に住みたいなどと思ったりするのだろうか? …なんて、捕らぬタヌキの皮算用は止めにして、2005年こそいい年でありますように! みなさまにとっても!


INDEX
[2006/06/12]
ウンコ 最終回
[2006/05/06]
ウンコ57本目「リアル男子とフェイク男子とマイ女子」
[2006/04/19]
ウンコ56本目 今週はマンガだけだよ。
[2006/04/04]
ウンコ55本目 新・爆食女王誕生戦!
[2006/03/23]
ウンコ54本目 コーちゃん
[2006/03/09]
ウンコ53本目 サカイ、美少年に口説かれる??
[2006/02/22]
ウンコ53本目 サカイ、美少年に逆ギレされる。
[2006/02/08]
ウンコ52本目 メイド体験
[2006/02/02]
ウンコ51本目 二人の教祖様
[2006/02/02]
ウンコ51本目 二人の教祖様
これより前のコラムを見る
▼コラム一覧へ戻る  ▲topへ