ウンコ38本目 「巨匠の迷い」

akukun38.jpg 映画評論といえば、「オクリとマンコのこれを見なさい!」であるが、そこではまず取り上げないであろう二作品について、今日は書きたいと思う。今年の夏の大作・「スターウォーズ エピソード?」と、「宇宙戦争」である。ネタバレ含む!ので、これから観ようと思っている方は、すぐにこのページを閉じてね! ただし、あたしはSF映画好きですが、マニアではないので、スターウォーズマニアの方々、あたしごときが何言っても、怒らないでちょ?

ここを訪れる方々が、どれほど「スターウォーズ」シリーズを観ているのかは知らないが、ダースベイダーが、敵役である。という事くらいはご存じであろう。新三部作の完結編、「エピソード?」は、善良だったはずの青年アナキンが、ダークサイドに落ち、ダースベイダーになるまでという、壮大な物語の核を描いている。旧三部作において、ダースベイダーというキャラクターは、冷酷な強さを持つだけでなく、「知的」な悪役だと、あたしは思っていた。いや、そうでなければこんなにヒットしなかったはずなのだ。悪役が「ただのバカ」である物語ほど、つまらないものはないのだから(例「パトリオットゲーム」)。

ところが…である。新三部作でのアナキンが、あたしにはただの「わがままなバカ男」にしか見えなかったのだ。「エピソード?」の少年アナキンはかわいくて、まだ好感も持てたが(物語のグダグダさはさておき)、「エピソード?」の青年アナキンはいただけない。師匠の言うことは聞かないわ、自信過剰だわ、キレると手が付けられないわ。なぜ、あんなバカ男が、知性あふれる女王・パドメにあんなにも愛されるのか、さっぱり理解できなかった。そして「エピソード?」。バカ、さらに暴走。前作ではアナキンに対してだけでなく、共和国での発言権もあったはずのパドメが、妊娠したとたんご隠居状態になっちゃったものだから、もはやアナキンを止める者はいない。「僕はパドメさえ生きていてくれれば、宇宙なんか、どうなってもいいんだあ〜〜ッ!!!」と、アナキンは、妻パドメを「死」から救うためだけに、一気にダークサイドへ落ちるのであった。旧三部作の戦争は、こんなバカ男のおかげで宇宙中が巻き込まれていただけだったのか…。また、人格者だと思われていたジェダイたちも、実はあんなダメ集団だったとは。あれでよく全宇宙をまとめていたものだ。

…ただ、これ、ものすごく好意的に見れば、現在のアメリカ、ないし世界を批判しているようにも取れるのである。純粋ぶって、利己的な理由で他者を排除し、戦争を起こすバカ男たち。庶民は、その戦争に「大義」があるように勘違いしていたのであるが、実は、バカ男の暴走でしかなかったと。それから、アナキンとパドメの関係もさっぱり納得いかないけど、現実の恋愛って、他人からしたらほとんどが「なんであんな男(女)がいいわけっ?」てなもんだしね。ルーカスは恋愛を描くのが下手なわけではなく、ある意味リアルだったのかも。

さて、一方、「宇宙戦争」である。同じく宇宙人地球侵略映画「インディペンデンスデイ」を、ものすごく期待して観に行ったのに、がっかりした方(あたしの事だ)には、超オススメです! 最初の一時間半は、ここ数年のパニック映画の中では、出色の出来!! もう一回映画館で観たい! ただ、ラスト30分がね…。

監督のスピルバーグは、これまでも「プライベートライアン」のような、「自称・反戦映画」を作ってきた人である。今回も観客が簡単にカタルシスを感じられるようなラストにはしていない。ラストの宇宙人の絶滅についても、確かにあっけないけれど、米軍や大統領を活躍させるより、全然いい!と、思う。が、「プライベートライアン」の時もそうだったが、どうしても、観客が最終的には「米軍がんばれ!」と、一瞬でも思うような構造になっているのだ。そのことを、スピルバーグは自覚しているのだろうか。それからもう一点。トムクルーズ演じる主人公・レイの息子ロビーは、ただ逃げるだけの父から離れ、米軍と共に侵略者と戦う事を選ぶ。彼らは米軍がかなうような相手ではない事が、明白であるにも関わらず、だ。それによって、ロビーは父・レイとはぐれてしまう。当然、ロビーは死んでしまったのだろうと、あたしは思った。彼は、強大な力の前に、ただやみくもに戦う事を是とする価値観を、否定する役割だろうと思ったからだ。ところが、である。人類のほとんどが滅んだと思われる世界で、主人公・レイの家族(離婚した妻の家族も含む)は、全員生き残るのである。レイは、自分の娘を守るために殺人まで犯したというのに!

なんて安易なハッピーエンド。これまでの悲惨なエピソードやメッセージが、主人公の家族が全員生きている事で、薄まってしまった。ハリウッド映画というのは、試写会でのアンケートで、結末すらも変わってしまうというから、これがすべてスピルバーグの意向だとは言えない。だけど、あまりにも。

とはいえ、「スターウォーズ」の、これでもか!と、観客の観たいものを見せるサービス精神、「宇宙戦争」の、無気味なリアリティ。CG全盛の時代でも、この二作品の映像は抜きん出ていた。どのくらいの金と人間を使ったらこんな映像が撮れるのか、あたしには想像も付かない。いつものあたしなら、本当は、この映像だけで、充分満足出来たはずなのだ。

「宇宙戦争」のハッピーエンドを否定しながらも、気持ちの良いカタルシスを求めて、「スターウォーズ」に失望しているあたしがいる。観客が、ツーカイな「勧善懲悪」を素直に楽しめないほど、あたしたちを取り巻く状況は厳しくなってしまったのか。そしてまた、一流のエンターテイメントの作り手もまた、迷っているという事なのだろうか。そういえば、ニッポンの巨匠・宮崎駿もここ数年迷いっぱなしだな。男女の描き方にももう少し迷ってもらいたいものだが。とりあえず、「マーズアタック!」に一票。


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