ウンコ46本 「もう一つの復活」

akukun46.jpg 「大食い王決定戦」に続き、もう一つあたしの好きな番組が密かに復活していた。それは、「まんが日本昔ばなし」である。約10年前、裏番組の「セーラームーン」にやられてしまった長寿番組だ。それがこのたび、再放送なのだが、民放のゴールデンタイム(TBS系水曜18:55〜)で復活したのである。子供の頃このアニメを見て育った世代が親になり、自分の子供にも見せたいという声が多かったのだそうな。

ここで、ちょっとひねくれた人だと、「昔ばなしなんて、ステロタイプの『いいおじいさん』が正しい生き方をしていればいいことがありますよ。なんていうリアリティのない話だろ。そんなもん今の子供に見せても何の役にも立たん」なんてことを言うかもしれない。しかし、それは「まんが日本昔ばなし」のある一面しか知らない者の発言だと思う。

「まんが日本昔ばなし」は二本立てである。先日放送された一本目は、「ききみみ頭巾」というお話。これは、困っているキツネを助けた「いいおじいさん」が、キツネから動物の会話が理解できる頭巾をもらって、それのおかげでまた別の困っている人を助け、裕福になるという物語。典型的な「昔ばなし」である。しかし、二本目。タイトルは「キジも鳴かずば」。このお話、「まんが日本昔ばなし」のビデオシリーズにも収録されていないので、もう見られる機会もなかなかないだろうから、ちょっと長くなるが、あらすじをここに書くことにする。(あたしも仕事しながら耳だけで聞いてたので、正確でないところもあるかもしれません。ご容赦下さい)

ある村に、弥平とお千代という貧しい父子がつつましく暮らしておった(常田富士夫風で)。ある日、お千代がおもーい病にかかってしまった。病床のお千代は、「小豆まんま食いてえなあ。」とうわごとのように繰り返すばかり。しかし、弥平のうちにはもう一粒の米もなかった。そこで弥平は、地主様の屋敷に忍び込み、ひとつかみの米と、小豆を盗んで、千代に小豆まんまを食べさせた。このことはすぐに地主様にもばれてしまったが、盗まれたのはほんの少しだったので、犯人探しも行われなかった。小豆まんまのおかげか、お千代の病はみるみる回復し、外で元気に遊べるようになった。お千代は小豆まんまがよほどおいしかったようで、「あーずきまんま、うーまいぞ」と自作の手毬歌を歌っていた。その年、弥平たちの住む村の川が氾濫してしまう。この村では、川の神の怒りをしずめるために人柱をたてることになっていた。例年、罪人を人柱にするのが習わしであったが、その年はたいした犯罪も起きていなかった。しかし、お千代の手毬歌がもとで、弥平の盗みがばれてしまう。村人はお千代の病も知っていたので、気の毒に思ったが、他に罪人がいなかったため、弥平は人柱として、川に沈められた。村には、お千代が父を思い泣く声が、何年も何年も響いたという。しかしある時、その声がぷっつりと途絶えた。そしてそれからお千代は、ひとことも口をきかなくなったという。お千代は娘に成長したが、その姿は村からもいつの間にか消え、村人もお千代のことを忘れていた。そんなある日、ある村人が、狩りでキジを撃ち落とした。キジが落ちたあたりに行ってみると、そこには死んだキジを抱いたお千代が立っていた。お千代はつぶやく。
「キジも鳴かずば、撃たれまいに…。」
「お、お千代、お前、しゃべれたんか!」
お千代は、自分の手毬歌が父を殺したのだと、ずっと悔やんでいたのだ。お千代はキジを抱いて再びどこかへ消えていった。

…どうですか。この話。あまりにも救いがないが、今、だからこそ、リアルに感じられないだろうか。こんなもの、逆に小さいお子さんに見せていいのか? トラウマにならないか? でも、これが、「まんが日本昔ばなし」なのであるよ。

この夏から秋にかけて、戦後60年だかなんかで、やたら戦争もののスペシャルドラマが放映されていた。それらのほとんどをろくに見てはいないが、あたしの印象としては、どれもこれも一応、「戦争の悲惨さ」を描いたものであったように思う。「戦争が、起こると、あなたの大切な人を、理不尽な理由で、失いますよ。」「戦争が、起こると、あなたは毎日のごはんすら、満足に食べられなくなりますよ。」それらのドラマからあたしが受け取ったメッセージは、だいたいこんな所だ。しかしこんな「脅し」、現在の「戦争を知らない子供たち」に、はたして有効なんだろうか?

もし今後、日本が戦争(のようなもの)に参加しても、戦争に行くのは、好き好んで志願した自衛隊員だけだと思っていやしないか。また、戦争が起こったところで、今の日本が、太平洋戦争の時のように餓えるなんて、誰が思っているだろうか。視聴者が、「ほたるの墓」と、「世界の中心で、愛を叫ぶ」を、同じ悲惨さでしか受け止められないのだとしたら。それでは、どんなに「戦争もの」のドラマを放映しても、視聴者の心に訴えかけることなどできない。そんなぬるい「戦争もの」に比べて、「キジも鳴かずば」のリアルさはどうだ。「戦時中」のみ、我々は大切なものを奪われるのではない。戦時中でなくとも、権力者の都合で、あたしたちは「ことば」すら奪われてしまうのだ。再放送開始からたった三回目にこの話を選んだのはなぜだろう。スタッフの良心だと、思いたい。

けど、今の日本って、「貧乏が辛いなら、貧乏にならないようにすればいいじゃない!!」なんて雰囲気だからな。「キジも鳴かずば」なんて言った所で、話、通じないかも。みなさん、わかってますか〜。マスコミがやたら「ドラゴン桜」をもてはやすのは、大手マスコミには、東大・早稲田・慶応卒しかいないからですよ〜。

ちなみに、あたし、この「キジも鳴かずば」、数十年ぶりに見たはずなのに、ひとつだけ強烈に覚えているシーンがあった。それは…「小豆まんま食いてえなあ」って、千代が病床でつぶやくところ。「小豆まんま」がすげーおいしそうに感じたんだろうなあ。その後の千代の運命なんか、全く記憶になかった。さすがエンゲル係数の高い坂井家の娘である。つーか、子供って、そんなもんだよね…。なので、「まんが日本昔ばなし」には、どんどん悲惨な話を放映してもらいたい。「サザエさん」に未だに高視聴率取らせてる場合じゃないっすよ。


INDEX
[2006/06/12]
ウンコ 最終回
[2006/05/06]
ウンコ57本目「リアル男子とフェイク男子とマイ女子」
[2006/04/19]
ウンコ56本目 今週はマンガだけだよ。
[2006/04/04]
ウンコ55本目 新・爆食女王誕生戦!
[2006/03/23]
ウンコ54本目 コーちゃん
[2006/03/09]
ウンコ53本目 サカイ、美少年に口説かれる??
[2006/02/22]
ウンコ53本目 サカイ、美少年に逆ギレされる。
[2006/02/08]
ウンコ52本目 メイド体験
[2006/02/02]
ウンコ51本目 二人の教祖様
[2006/02/02]
ウンコ51本目 二人の教祖様
これより前のコラムを見る
▼コラム一覧へ戻る  ▲topへ