アンティルさんのコラムで告知済みの通り、LPC人気コラム「私はアンティル」を、私・坂井恵理がマンガ化することになりました。マンガの方のタイトルは「うで毛女子校生」です。ぶんか社「ほんとにあった笑える話」3月14日発売になります。アンケートはがきに「サカイのマンガが面白かった」と書いてどしどし編集部に送りましょう。よろしく! てゆうかお願い!! ついでに、マンガの方でPRしている「女には向かないオンナ」もよろしくね!!
さて、前回の続きである。ジゴロ美少年Gとの「話し合い」の時、あたしは友人の借りているヴィラに二日間、タダで滞在させてもらっていた。前回書いた通り、ここではもう一人の美少年D(20歳)が、友人のメイドとして住み込みで働いている。ヴィラ滞在初日、あたしの友人はビザの更新のため一度インドネシアから出なければならず、日帰りでシンガポールへと旅立った。いくら一番近い外国とはいえ、帰りは深夜になる。その夜、あたしはDと彼女のヴィラで二人きりでお留守番をすることになった。
Dは、現在日本語学校へ通ってはいるが、ほとんど日本語が話せない。一方のあたしもインドネシア語は少ししか話せない。あたし、日本語ですらコミュニケーション能力低めだっつーのに、ハードル高すぎ…。しかし、何か話さねば間がもたぬ。
サカイ(以下サ)「恋人はいるの?」(…我ながらなんて陳腐な質問)
D「バリ人の彼女がいたんだけど、別れてもうすぐ一年になる。僕にとって初めての恋人だったのに、彼女には他にもたくさんボーイフレンドがいたんだ。それがトラウマになって一年間彼女ができない…。(意訳)」
うわ〜っ! こいつ、かわいいなあ! と、フィリピンパブのおやじモード。
サ「夢は何?」(…さらに芸のない質問)
D「日本人女性と結婚して、ガイドになること」
サ「どうして日本人なの?(まあ、金持ちだからだろうけど…)バリの女の子もかわいいじゃない」
D「バリの女の子もかわいいけど…日本人は、心が好き(直訳)」
…玉の輿狙いの日本人の女かよ!! と、心の中でツッこむ。「お金目当てじゃないのよ、彼の性格が好きなの」ってか。バリ人から見たら、どんな日本人も金持ちに見える。しかも、企業に永久就職するという考えをあまり持たない彼等は、すぐに独立したがる。日本人女性と結婚して、旅行会社を設立するバリ人男性は少なくない。若いバリ人にとって、わかりやすい成功の道なのだろう(しかし、テロの影響でつぶれている現地旅行会社も少なくないんだが…そこまでは考えが至らないみたいだ)。アニメ「オバケのQ太郎」が好きだという彼に、「ああこれ?」とQちゃんの絵を描いたりしていると、いきなり、Dが日本語でこんなことを言った。
「えりさんのえがおはどうしてそんなにあまいですか」
…どう反応して良いものかわからず、あたしの口をついて出てきた言葉は「…誰に習ったのそんな日本語」であった。だって、その時のあたしといえば、ちょっとリゾートっぽいワンピースは着ていたものの、南国の暑さで顔面は汗と油でテカテカ(もちろんすっぴん)。日本と違う水質と強い紫外線にやられ、いつもより1.5倍は爆発した髪。しかも彼との年の差は13歳。「これはくどかれているのですか、それともにほんごのべんきょうですか」…なんてもちろん言わなかったけどな。
D「えりさんいいおんな」
サ「『いい女』は、あまり良い言葉じゃないから、『かわいい』って言った方がいいよ」
やっぱりうまく返せず、サカイ日本語教室開校。相手より知性のあることを示し、優位に立つことがコミュニケーションだと勘違いしている、女慣れしてないオヤジか。あたしは。
Dはあたしの目を見つめながら、インドネシアのラブソングを歌う。日本人にすら口説かれたのなど何年も前のことで、口説き方も口説かれ方も忘れてしまった。Dはかわいいけれど、欲情はしない。しかし、これはGのジゴロトークとは違うのだと思いたい自分がいる。Dだって、あたしが日本人(=金持ち)だからちょっと突ついているだけだろうに。所詮、キャバクラとメイドカフェ程度の違いしかないのだ。これが岩井志麻子だったら押し倒しているのかなあ…でも、日本人との結婚を夢見ていて、そして元カノのヤリマンぶりに傷付いている彼を相手に、気軽にやり逃げするわけにいかないし。だいたい、彼があたしの年齢を知ったらきっと引くわ…。
…と、ここまで考えて、これが、男女逆だったら、あたしは、こんなことを思うのだろうか。と、さらに考えた。33歳のオヤジが、20歳の女の子を愛人にするなんて、…よくありそうな話ですね。日本人同士でもよくありますね。年下に引け目を感じている暇があったら、相手がハタチだろうが欲情しないと!って、オヤジと張り合ってどうすんだよ。
蚊取り線香に、ガスコンロで火をつけているDを見て、あたしは日本から持参した使い捨てライターをDにあげた。すると彼は「わたしのために?」と、日本語で嬉しそうに言った。…リアルメイドカフェだ…(彼はメイドさんなので)。対等な一対一の関係などどこにもないのは知っているけど、あたしは結局男たちがやっていることの裏返しをしたいだけなんだろうか。ああ、「そんなんじゃないよ! 彼の素直な性格が好きなの!」とか、本気で言えちゃうくらい思い込めたら楽なのに。