ここ最近のあたしは、とても穏やかな毎日を送っている。そこそこ仕事は忙しく、仕事がないときは趣味の模型作りに没頭し。ま、つまり、ほとんど家から出なかったってことなんだけど。外へ出るのは、編集者との打ち合わせと、たま〜に、友人と酒を飲んだりするのみ。とはいえ家にこもっていても穏やかではいられない出来事は起きる。テレビをつければ、タイゾー議員が「一家のあるじの命は太陽よりも重い」とか、相変わらず意味わからないこと言ってるし、しかしそれよりも、彼の発言に対して誰も突っ込まないことの方がストレスになる。新聞を開けば絶望的なことしか書いていないようだし、それなのに午後6時台の(主婦向け?)ニュースはとてもぬるい。確かにデカ盛り特集とか、つい見ちゃうんだけどさ。それでも、この、狭い2Kの部屋に閉じこもっている限り、世界はとても平和なのだった。
しかし、油断大敵である。先日、あたしは友人の結婚披露パーティーに出席した。友人や同僚のみを招いた、おしゃれなレストランウエディング。あたしは、新郎側の友人だった。彼とは、幼稚園と小学校が一緒の幼なじみで、とはいえ成人してからは年に一度会うかどうかというような仲だった。一緒に呼ばれた女ともだちと、「なんであたしらまで呼ばれたんだろうねー」とつぶやいてしまうような、その程度の友人。彼は、我々の間では、「マザコン」として有名だった。小学校の頃、彼のお母さんは教育ママで、息子にはテレビもマンガもほとんど見せず、付きっきりで勉強を見ていたという。彼は、親の期待通り有名私立中学に進み、早稲田大学に合格し、一流企業に入り、結構稼いでいるらしい。お母さんの自慢の息子だ。そんな彼が、お母さんが最も反対しそうな、「年上、バツイチ、子持ち」の女性と結婚したというのだ(実際もめたらしいが)。彼の「ママ離れ」を、祝福してやらねば!と、あたしはパーティーに出かけたのである。もちろん、野次馬的に、彼の妻を見たかったってのもあったんだけどね…。
パーティーは、予想を裏切らない展開で進行する。上司の挨拶(ちょっとしたユーモア付き)、ビンゴゲーム大会、そして、新郎側の友人が制作した、二人の生い立ちを追ったスライドショー。スクリーンには、彼の子供時代、中学時代、高校時代の写真が順番に映る。そして、大学のサークル仲間との写真。写真自体は、よくあるスナップショットだ。しかし、そこに付けられていたキャプションは…「スーフリ時代」。
一応断っておくが、もちろん、彼は、スーフリ出身などではない。また、女の子を酔わせてレイプした過去もない(たぶん)。ただ、彼が早稲田大学出身だったからというだけの、それだけの「ギャグ」だ。そのギャグに彼の友人たちは大爆笑。一方あたしは…会場の隅で固まっていた。新婦や、彼女の女ともだちの反応すら確かめる余裕はなかった。こういう男たちが、「痴漢えん罪はけしからん〜!」「隠すくらいならミニスカートはくな!」とか言うんだろうなあ。痴漢に遭う女たちの気持ちなど想像もしないで。あたしはこの怒りを誰にぶつけてよいものかわからず、また、怒りをぶつけてはいけない「祝福の場」の居心地の悪さを感じながら、普段は滅多に飲まない赤ワインをあおった。ああ…これだから知らない男たちの集いに参加するのはいやなんだよ…。自分の部屋で、シンプソンズのDVDでも見ながら、一人ビールでも飲んでれば、こんな思いはしなくてすんだのに…。と、心はすっかり引きこもりであった。
そんなあたしが、男と住む、ことになった。相手のことについては、ここで何を書こうが「のろけ」もしくは「いいわけ」にしか聞こえないだろうから書かない。いわゆる「同棲」を決めたのは、単純にある賃貸物件が気に入ってしまったからである(これもいいわけかな?)。あたしの部屋は、あふれる本やおもちゃで、飽和状態だった。ネットで部屋探しをするが、今の家賃から2、3万円足したところで、たいしてグレードアップはしないのである。せいぜい風呂トイレが別になるくらい。出不精なあたしは、人一倍住空間にこだわりを持つ。旅行のプランを立てる時も、まずホテル選びから始めるタイプだ。そんな中ネットで見つけた築浅4LDK。内見してみると、床や壁紙などは正直趣味に合わないが、分譲賃貸だったため、設備がものすごく良かった。しかも、あたしの大好きな街にその物件は建っていた。とはいえ、当然一人で払える家賃ではない。そこで、あたしから、「同棲」をもちかけてしまった。トイレが二つあるので掃除でもめなくていい。寝室も別にできる。と、「よかった探し」をしながら。
テレビでは、26歳で5億円の豪邸を建てたという少女漫画家が映っている。あたしは彼女のマンガをちっとも面白いと思えないが、負け犬の遠吠えでしかないのが悲しい。いつか、一人で豪邸を建てたいと思いながら、引っ越し用の段ボールを組み立てる。早まったかな〜と(きっとお互い)思わないでもないが、それでも、今より広くなる家に、どんな家具を置こうかとか、いろいろ考えるのは楽しいのであった。引っ越し先は定期借家5年。5年後、あたしはどうなっているんだろうか。
…まさか自分でも、こんな最終回のオチがつくとは思ってもいませんでしたよ。異様に力の入っている回、無理矢理2000字埋めたのがバレバレな回、いろいろあったと思いますが、読んでくれてありがとう!! では! みなさままたね〜!