ウンコ3本目  「君は、yoshiを知っているか?」

yoshi。彼の名前を知らなくても、彼の著作物を、一度は目にしたことがあるはずだ。一般の書店のみならず、最近はコンビニにも置かれてい る、「Deep Love」シリーズ。涙を浮かべた少女(もしくは少年、犬)の瞳の表紙である。帯にはこう書かれている。「100万部突破!(DeepLoveシリー ズ)」「第一部アユの物語2004年映画化決定!」「あなたの街で上映しよう! 100万人の応援メールを募集!」「渋谷発のインディーズ小説に100万 人が泣いた!」「この本の売上金の一部は、日本エイズストップ基金に寄付されます」

…うさんくさい。しかし、腐っても100万部。である。私も一応作家の端くれとして、売れる本のツボというものを研究せねばなるまい。そして、私は 「Deep Love 第一部アユの物語」の表紙をおそるおそる開いたのだ。

主人公はエンコーをしている、とってもかわいい、女子校生アユ。彼女は両親にも見放されているので、近所のおばあちゃん(親戚ではない)の家に、虐待さ れた子犬、パオとともに居候している。
愛なんていらないと思っていたアユだったが、戦争で妹を亡くし、自らの足も不自由になったおばあちゃんの身の上話 を聞いたり、心がキレイな心臓病の美少年、義之と知り合ううち、自らの行いを反省する。
反省したとたん、おばあちゃんは老衰で死ぬ。
親友のレイナは、輪 かんされ、妊娠。出産。
アユは義之の手術費用のために一度は止めたエンコーを再び始める。
アユは、エンコーの相手からいつのまにかエイズをうつされてい た。
義之の父親はろくでなしで、アユが自分の食費を削ってまで貯めた手術費用をすべて酒代に変えてしまっていた。
その上、アユにセックスを強要する。
ア ユは、パオとともに、おばあちゃんの家で衰弱死する。
自分もエイズに感染していた義之の父は自殺。
義之は、まもなくドナーが見つかり、手術は成功する。

これは、あらすじではない。これが、「Deep Love」のすべてである。舌を切られた子犬は獣医に見せることなく回復するし、心臓移植の現実などは全てはしょられる。おばあちゃんに泣かれれば、不 良少女はあっさり「改心」する。これに、5ページに一回はエロシーンが挿入され、さらに、10ページに一回は神の視点から説教が入る。神、というか、作 者・yoshiなのであるが。

〈人は過ちを犯す生き物。ときには深い悲しみから……、あるいは深い憎しみから……。深い絶望や、深い迷いから……。そこから救ってくれるのは、……深 い愛だけなのだろう〉

〈ホームレスに天使に見えたほど、今のアユは清く、大きな愛を持っていた。自分を犠牲にしてまで、義之を救おうとする悲しい決意が、彼にも伝わったのか もしれない〉 

そして、最後はすべてを時代のせいにしてしまう。義之の父親は最後、こんなセリフを吐く。

「何を言っても、言い訳になるけどな、俺たちは時代に流されたんだ……時代のせいになんかするな、そう、お前は思っているだろう。でも、お前には……」 そこまで言って、話すのを止めた。義之には父親の言いたいことはわかっていた。

これが、負け犬の遠ぼえだとわかっていても、言わずにはいられない。「こんなんでいいのかよ!」と。オヤジたちが最近の若者の学力低下を憂いても、学校 で良い成績を取ることだけに価値観を見いだしていないあたしは、何の危機感もない。し・か・し、だ。Yoshiのもとに「生きる意味を教えてくれた (17歳)」だの、「涙が止まらなかった(24歳)」だのと感動の声を寄せられてしまっては、こっちはおまんまの食い上げである。

Yoshiは言う。
〈自分は、Deep Loveという作品を書くにあたって、目指したことがいくつかあります。ひとつは文章が嫌いな人や若者でも読めるように、簡単な言葉でわかりやすく書く こと。(中略)そして、最終的に目指していたのはDeep Loveが、「自分を見つめ直すキッカケ」になればというものでした。〉(第二部「ホスト」あとがきより)

あたしが小学生の時に読んでいた氷室冴子のコバルト文庫の方が、表現力、テーマ共にレベルが全然上だっつ〜の〜!!! こんな浅〜い物語に人生を変えら れた女子が、今後「ウリ」もせず、「深い愛」でつながった男と結婚し、子を産み、「不倫」もせず、「正しい」人生を歩むと、本気で思っているのだろうか この中年男は。そんなに人生が単純じゃないからこそみんな、悩み、苦しむのに。簡単に他人の「人生を変える」なんて言えちゃうYoshiの自伝を読みた いぞ。こんなつまらない小説なんかより。

「Deep Love」じゃ救われないあたしは自分で物語を紡ぐしかない。しかし、こんな本が(シリーズ累計)100万部突破なんて聞いちゃうと、絶望してしまう よ。すべてを「男と女」「勝者と敗者」「善と悪」と二つに分けて、わかりやすいフリをする時代だからなのだろうか……。なんて、あたしも時代のせいにし てみたが、どうか。

読者を先へ引き込むために要所にエロを盛り込むというのは、あたしも使う手なので否定はしないけど、こうゆうとこに実は作者の人間性って出るものなの ね。だって、「Deep Love」のエロシーンって、必ずといっていいほど、レイプか援交シーンばかりなんだもん。Yoshi、本当はお前、女嫌いだろう。



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[2004/06/29]
「久々にテレビの話」
[2004/06/15]
「お前らのせいだ」
[2004/06/01]
「個性」というプレッシャー
[2004/05/18]
「血が好き」
[2004/04/27]
「少女マンガが描けない」
[2004/04/14]
「命の重さ?」
[2004/03/30]
「ひきこもりと私」
[2004/03/16]
「過剰なもの」
[2004/03/02]
「キムタクにしてください」
[2004/02/17]
「君は、yoshiを知っているか?」
[2004/02/03]
「ハロプロ!」
[2004/01/20]
「ウンコ、出てますか?」
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