ウンコ4本目  「キムタクにしてください」

美容院で、芸能人の髪型を指定する人がいるという。あたしは、これができなかった。例えば、「長谷川京子の髪型にしてください」とか言うのだろうか。そ んなことを言って、美容師に笑われやしないだろうか。顔も髪質もスタイルも似ても似つかない一般人がそんなことを。男受けする髪型にしたがっていると思 われないだろうか。わかっている。こんなことを思う方が自意識過剰だということは。

では、男の芸能人を指定するのはどうだろう? 先日行われたLPCのイベント(楽しかったですね・)で、スタッフに与えられたドレスコードは、ひげ。そ こであたしも、一か月前から鼻の下の産毛をのばし、男になるべく備えていたのである。しかし、平均的女子に比べれば短い髪も、男になりきるには髪の長さ が中途半端だ。完璧主義のあたしは、行きつけの美容院で、こう言ってみた。

「キムタクっぽくしてほしいんですけど」

この「ぽく」が、我ながらまだ照れを感じる。だって、このタイミングでキムタクなんて言ったら、髪をいじられている間、ずっと「プライド」の話をされる んじゃないか。しかも、好意的に鑑賞しているという前提で話題を振られたらどうしたらいいんだあっ!という、童貞的妄想により、ひよってしまったわけ だ。そんなあたしの心配をよそに、美容師さん(女性)は、男向けのヘアカタログを持ってきてくれ、普通に髪型を決めてくれた。髪を切っている間も、キム タクの話題など出なかった。

さて、はたしてあたしは「男」になれたか? …自分で言うのもなんであるが、なれたんである。しかも、「イケメン」なんである。髪をワックスでたたせ、 厚底スニーカー(でもギャルっぽくないやつ)を履くと、あたしの身長は170Bを軽く超える。そして、黒のパーカーにストレートジーンズ、グレーのピー コート、AIPの黒い横がけカバンに、ABCストアのビニール袋をぶらさげてみた。普段だったら、何かさし色が欲しい。と思ってしまうような地味なコー ディネートも、自分を「男」だと思ったとたん、無難なオシャレに見えるものだ。

とりあえず街に出てみる。オヤジから美容院のチラシを渡された。むう。まだ女に見えるか。しかし、そのチラシには「男性も歓迎!」の文字が。これでは判 断できない。そのまま歩いていると、前から来たサラリーマン風のオヤジが、あたしを見て一瞬ビク! と体をこわばらせ、あたしを避けてすれ違った。おお!  オヤジに避けられるなんて、女っぽい格好をしている時には考えられないことだ。

一応あたしの顔について書いておくと、あたしはいわゆる「美人顔」ではない。顔に破たんはないが、合コンなどでモテるタイプかと言うと、決してそうでは ない(合コンに行ったことはないが)。ところが、である。「男」になったとたん、周りから「イケメン」コールの嵐。こんなことは生まれて始めてであ る。「女」としてはマイナスの広い肩幅、華やかさのない地味顔、無表情。これらが、「男」になったとたん、なぜかプラスに働くのである。ただし、ジャニ ーズ系ではなく、ケミストリーの川畑系(チンピラ系ともいう)なのであるが。つまり、モテる女とは、華奢で、目がパッチリしており、いつもニコニコ愛想 がいいということなのだろう。そういえば、美容院で渡されたファッション誌には、「ホントはMでもSサイズがかわいい!」と書かれていた。

自分を「男」だと思ったとたん、開いた毛穴も、大きい顔も、気にならなくなる。化粧をするのが恥ずかしくなる。大きい胸が邪魔になる(今はいいけど、夏 はどうしても男装するには胸が目立つ!)。高い声がコンプレックスになる。女だったら濃くて悩むはずの指毛が、男にしては薄いんじゃないかと気になる。

あたしが幼稚園の頃、両親は、将来宇宙飛行士になりたいと言い、科学博物館で恐竜の骨を見るのが大好きなあたしを、「女らしくない」ととがめなかったか ら、あたしは女の子のままで、リカちゃん人形で遊ぶことも出来た。(別に両親に理解があったわけではない。父親は子どもは一人で充分と思っていたから、 自分の趣味を受け継ぐ娘が嬉しかっただけだ)あたしは、基本的にはヘテロだが、女の子に淡い恋心を持ったこともある。もしも初恋が男の子ではなく、女の 子だったら、あたしも「男になりたい」と思ったのかもしれない。性同一性障害の人が聞いたらどう感じるかはわからないが、案外、最初のきっかけなんて、 そんなもんじゃないのかなあ。

より完璧な男になるため、こじゃれ男向けセレクトショップに行ってみた。すると、男向けの服も、以前に比べて肩幅や全体のラインがスリムになっている。 あたしは男のMサイズでちょうどいいくらいだ。最近、女の服がどれもこれも小さくて着るもんねえと思っていたが、若い男も華奢になっていたとは。最近は デザインもユニセックスなものが多いし、これからはこじゃれ男店でお買い物をするとしよう。しかし、なんでここ十数年でそんなに骨格が変わるんですか ね? 何か恐い。

P.S. イベントの時、入り口近くで小林万里子さんのライブを聴いていたのだけど、風邪気味だったので咳払いをしたら、前に立っていたお客さまによけ られてしまいました…。そんなにあたし、恐かったのでしょうか? 脅えさせてしまったのなら、本当にごめんなさい。そんなつもりじゃなかったの…。



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[2004/06/29]
「久々にテレビの話」
[2004/06/15]
「お前らのせいだ」
[2004/06/01]
「個性」というプレッシャー
[2004/05/18]
「血が好き」
[2004/04/27]
「少女マンガが描けない」
[2004/04/14]
「命の重さ?」
[2004/03/30]
「ひきこもりと私」
[2004/03/16]
「過剰なもの」
[2004/03/02]
「キムタクにしてください」
[2004/02/17]
「君は、yoshiを知っているか?」
[2004/02/03]
「ハロプロ!」
[2004/01/20]
「ウンコ、出てますか?」
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