ウンコ8本目  「少女マンガが描けない」

自分でも不思議なのだが、あたしは「女向け」マンガを描かない。厳密に言えば、デビュー前には少女マンガ誌に投稿したこともある。別ペンネームで育児マ ンガを描いていた時期もあった。「フィールヤング」にも二回ほど読み切りを描いた。

でも…なんか、向いてないんである。まず、独特なコマ割りやお花が描けない(イメージ、古い?)。それから、オシャレな絵が描けなかった。しかし、「描 けない」なんて言う前に模倣でもいいから描いてみるのがプロを目指す人間のやるべきことだと思うし、シンプルなコマ割りでお花もナシで人気を得ている少 女漫画家もいる。あたしも、育児マンガ誌の中ではそこそこ人気もあった。母親たちが抱えている悩みをリアルに描くことが出来たからであろう(ただし解決 法はヌルイ。そこが人気を取るポイント)。

では、少女マンガ家としてあたしに致命的にかけていたものは何か。結論を言っちゃうと、「男を魅力的に描けない」ということだと思う。

少女マンガの世界に必要不可欠なテーマは「恋愛」である。あたしはデビュー前からあまりこの手のマンガが好きではなく、少女マンガの中でも、清水玲子と か、渡辺多恵子とか、恋愛以外の要素を含んだものが好きだった。「週刊マーガレット」や「別冊フレンド」ではなく、オタク的な「ララ」や、恋愛の皮をか ぶったエロ「週刊少女コミック」等を好んで読んでいた。

現在の少女マンガは、さすがに純愛のみ(キスもしくは結婚がゴール)を描いたりはしないが、恋愛依存症ぎみのマンガは昔よりも増えている気がする。彼を 待つだけの女から、彼を手に入れるためなら何でもするような女に変化しただけ。あたしには、その、「王子様」が描けない。もちろん完璧で非の打ち所のな いような男を描く必要がないのはわかっている。しかし、作者が主人公に感情移入できないのでは、読者にも楽しんでもらえるはずがない。「そこまでしてや るほどの男じゃないじゃ〜ん」なんて、作者が思ってちゃいけないよな。やっぱ。

最近人気の作家に、ジョージ朝倉という人がいる。あたしは彼女の表現力、発想力は素晴らしいと思うし、いつも嫉妬心とともに読んでいるのだが、「ハート を打ちのめせ!」という作品の中に、こんなエピソードがあった。(単行本が手もとにあるわけではないのでうろ覚えです)

中学生である女主人公は教師に片思いしている。しかし先生は自分のことをちっとも見てくれない。そこで彼女は、他の男たちが自分をレイプするよう仕向け るのである。先生が駆け付けてくれ、レイプは未遂に終わり、先生も自分とセックスしてくれる。

こんな激しい女が女性読者に受けるのだ。「おにいちゃんすき」なんて言ってる幼女もキモいが、恋愛依存症の女も同じくらいキモい。

女性の連帯やレズビアンがテーマの少女マンガもあるにはあるが、そこに漂う「コジャレ感」が、どうにもこうにも苦手なあたしだ。「NANA」にしても、 生活感をある程度描いてはいるものの、若い女があんなオシャレで広いアパートに住めるという設定になじめない。ファンタジーだということはわかっている つもりなのだが…。やはり、子どもの頃一番好きだったマンガが「うる星やつら」だったという時点で、「オンナ道」から外れていたのだろうか。

そこであたしはフィールドを青年誌に決めたわけだが、かといって、石坂啓さんのように「青年誌の女の子像を変えたい!」というような野望もなかっ た。「かわいい女の子の裸が描ければ売れるかも」という、ただただ甘い考えだった(もちろんそれが甘かったということは身をもって知ることにな る)。「男向け」マンガでは、恋愛もののフリさえすれば、純粋(?)な「欲望(=エロ)」が描けると思ったのだ。女主人公が惚れる男よりも、男主人公が 惚れる魅力的な女の子を描く方が楽しかった。もちろん、男読者への「媚び」は必要なわけだが。

昔、「TVタックル」で、田嶋陽子さんが江川達也を目の前にして、「東京大学物語」の女性差別的表現について語っていた。ヒロインの遥ちゃんの巨乳ポロ リ絵を指差し、「女はオッパイがでかければいいというメッセージだ」とか(昔のことなので曖昧ですまん)。田嶋さんの言うことはもっともなのだけれど、 いかに田嶋さんが「マンガ」というものを読み慣れていないかが丸わかりで、見ていて、正直、痛かった。魅力的な女の子の表現として、「巨乳」を描かなけ ればいいというものではない。それではまんこちんこにほんのちょびっとの「白塗り」を加えれば後は何をやってもいいという、従来の規制となんら変わりが ないではないか。やっぱ、フェミ本しか読まないフェミニストはダメだよなあ…と、テレビを見ながらため息をついた覚えがある。

「悪」と闘う美少女マンガは「セーラームーン」以降、どんどん生産されているけれど、「吉祥天女」の叶小夜子のように「男」と闘うヒロインはもうどこに もいない。100のフェミ本より、よほど女性読者への影響力があったと思うのだが。あの作品はあの時代だからこそ、小学館漫画賞を取れたのだろうか。青 年マンガ誌の表紙を土井たか子が飾るような時代(週刊ヤングジャンプ/1990)は、きっと、もう二度と来ない。そんな中で、あたしは今後、どんな戦略 を練るべきなんだろうか?



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[2004/06/29]
「久々にテレビの話」
[2004/06/15]
「お前らのせいだ」
[2004/06/01]
「個性」というプレッシャー
[2004/05/18]
「血が好き」
[2004/04/27]
「少女マンガが描けない」
[2004/04/14]
「命の重さ?」
[2004/03/30]
「ひきこもりと私」
[2004/03/16]
「過剰なもの」
[2004/03/02]
「キムタクにしてください」
[2004/02/17]
「君は、yoshiを知っているか?」
[2004/02/03]
「ハロプロ!」
[2004/01/20]
「ウンコ、出てますか?」
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