ウンコ10本目  「個性」というプレッシャー

ジェンダーフリーを主張する人たちは、「ジェンダーフリー社会になったら、性差ではなくそれぞれの個性が尊重される」と言う。

しかし、ジェンダーフリーバッシングをする人の中には、「ジェンダーフリー社会になったら、みんな同じようになって個性がなくなる」と主張する人がいる。

一方は、「十人十色」といい、一方は「十人一色」と主張しているようだ。一体、どっちが本当なのだろうか?

「個性」を、「他の人とその人を区別するための要素」のことだとすると、それが一番わかりやすい形で見られるのが、物語の世界なのではないかしら。あた しごときがエラソウに解説するのもなんですが、お付き合い下さいませ。

映画やマンガのキャラクターというのは、物語をわかりやすくするためにも、個々のキャラを区別できるようにしなければいけない。だから登場人物たちは、 見事に見た目も性格もバラバラとなる。主人公は、一番魅力的でなくてはいけないので、特に「個性的」に描かれる。または、導入部こそ、私たちが感情移入 出来るように「平凡」な人物に描かれるが、物語が進行するにつれて、「平凡」ではなくなり、「極端」に個性的になってゆくのである。ずーっと、最初から 最後まで主人公が何の変化もなく、成長もしないのでは、観客がおもしろがってくれないのだ(ただしギャグマンガやコメディは除く)。

モーニング娘。について、「みんなブスじゃん」などと言う人がいるが、あれは、顔のかわいさで売れたわけではない。それぞれの個性がバラバラで、見分け がつきやすかったことがヒットの要因である(辻と加護は「ふたご」というキャラクター)。モー娘。よりも顔のレベルは高いのに消えていったアイドルは数 知れない。見分けがつく。ということは、そこに物語性が産まれるし、また、ファンには「ごひいき」を選ぶ楽しさが与えられるわけだ。プロレスの世界で、 選手たちにキャラクター的な要素を入れるのも、そのためである。

これらの物語が誇張されたものだということは、殆どの人間が自覚している。まわりを見渡しても、ハリウッド映画のヒーローのような人間はなかなかいない し、自分自身ときたら脇役にしかなれないような「平凡」な人間であるからだ。しかし、私たちが自分を「平凡」だと感じてしまうのは、物語のキャラクター が極端すぎるからで、あれは実は10種類くらいのパターンしかない。後はその組み合わせ。これは、物語というものが徹底的にムダを省かなければ成立しな いためだ。だけど、現実の人間はもっと多くの大小様々な要素が、複雑に絡み合って一人の人間となるので、物語のキャラクターよりもわかりづらいくせに、 一人一人が実は全く違うものなのだ。

テレビで北朝鮮のニュースを見ていると、確かに人間は容易にマインドコントロールされるような印象を受ける。同じ表情、同じ動き、同じ思想。だけど、北 朝鮮のテレビ局が選びとった映像を、さらに日本のテレビ局が選び、私たちも見る番組を選んでいる時点で、それはもう「現実」ではなく、すでに「物語」に 近い。

けれども、そういった「物語」の影響かはわからないが、みんな、現実の人間をわかりやすいキャラクターに落としこみたがる。「男」とか「女」とか。そこ からちょっとはずれると、「ヤンキー」とか「オタク」とか「ヤマンバ」とか。個性的な人にはそういった「名前」を与えることで、同時に「変人」という レッテルを貼ることも出来る。こうしておけば、自分を含めた「平凡」な人間が、あたかも正しい生き方のように錯覚できるから。とはいえ、ハリウッド映画 を見なれた私たちは、ヒーローを目指さずに入られない。だって、私たちはみんな、自分の人生の主人公なんだから。現実でも、人から賞賛を浴びてる人間っ て、総じて「個性的」だしね。

そこで、「人には個性なんかない」と思いたい人たちの、アイデンティティーとして、「日本人」というキャラクターを利用しているんだろうなと思う。「日 本人」って、誤解も含め、良くも悪くもキャラ立ちしてるし。着物、寿司、大和撫子、サムライ、マンガ、アニメ、ポルノ、分かりやすい記号で溢れている。 最近、西洋人が「日本的なモノ」をもてはやしてくれたおかげで、自分も「日本人」だと思えばプライドが保てるんだろう。

同じように、「男」ってのも優れたキャラクターとして作用するのかも。強くって!女子供を守るためならどんな困難にもくじけない、サムライ魂を持った、 世界にも認められる日本男児!まあ、なんてステキな自己イメージかしら。キャラ立ちも充分ね!

人間の「個性」を否定しながら、「個性」を渇望する。人間って、なんてめんどくさいんだろう。

あれ? だとすると、保守の人の方が「本来人間はみな平等」って言っているように聞こえるなあ。あたしがバカだから理解できないのか?



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[2004/06/15]
「お前らのせいだ」
[2004/06/01]
「個性」というプレッシャー
[2004/05/18]
「血が好き」
[2004/04/27]
「少女マンガが描けない」
[2004/04/14]
「命の重さ?」
[2004/03/30]
「ひきこもりと私」
[2004/03/16]
「過剰なもの」
[2004/03/02]
「キムタクにしてください」
[2004/02/17]
「君は、yoshiを知っているか?」
[2004/02/03]
「ハロプロ!」
[2004/01/20]
「ウンコ、出てますか?」
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