CD情報
アーティスト名:Shonen Knife
タイトル:Lets's Knife
品番:V2-86638 (Virgin Records America, Inc.)
「ライオット・ガール:90年代初頭に起きたロスでの暴動後、ワシントンDCの女の子達から火がついたムーブメント。女の子達がバンドやミニコミを作るきっかけとなった」
LPCから音楽コラム連載の依頼を受けた時、「私なんかで大丈夫なのかいな?」と心配した。今まで幾つかの音楽雑誌で書いたことはあったけれど、どれもインディー音楽を扱うものばかりだったし、私の音楽の趣味は相当かたよっているから。で、今も正直そう思っているので、今回はこんな嗜好に至るまでを書いてみようと思う。
所謂「メジャー」というのは宇多田ヒカルやあゆだったりと、大多数の人が知っている人であろうアーティストを指すんじゃないかと思っている。お恥ずかしい話、私はそのへんの音楽に本当ウトい。小学生の頃は普通にチェッカーズやおニャン子クラブ、ジャニーズが好きだったんだけど、思春期にイカ天を見た辺りから危なくなってきて、「メジャー=ダセー」、有名じゃない方がカッコイイんじゃない?と思うようになってきた。当然、テレビドラマなんか見てらんなくなってきて(でも、『ムー』と『ムー一族』の再放送は大好きだった)、ベストテンなんて「ケッ」ってなもんだ。
ま、そんなのもポーズにしか過ぎないから飽和状態になれば、皆が見ていた『東京ラブストーリー』にハマり、小田和正による主題歌“ラブ・ストーリーは突然に”をカラオケで歌うようなフツーの高校生になっていた……かもしれない。
かも。つまり、そうはならなかったのよねん。最近になるまでテレビドラマというものを真剣に見たことがなかった(注:『木更津キャッツアイ』以降、これは変わった)。こうなってしまったのは……という言い方は適切じゃないかもしれないけど、少年ナイフに出会ってしまったのがきっかけだと思う。
高校生だったある日、何気なくテレビを見ていた時のこと。都内の某デパートのCM曲が私の心をぎゅっとワシ掴みにした。今まで聞いたことのない感じにガガ〜ンときてしまった。画面の片隅に書いてあった、アーティスト名をすぐにメモ。「SHONEN KNIFE」。ショウネンナイフ? 何じゃ、それ? 日本のバンド? 何だかよく分からないまま、とりあえずレコード屋に行った。でも近所のお店には売っていなかったので、家から離れた輸入版やインディーズを扱っているお店に行ってみることにした。ここでSHONEN KNIFEが大阪に住んでいて、海外でも人気があるらしいということを知った。でも、そんな予備知識はどうでも良かった。ニルヴァーナの前座をやろうがやるまいと、とにかく少年ナイフはかっこよかった! ロケットに乗って宇宙に行く歌やはたまた、お風呂屋さんに行く歌、チョコバーが食べたいよの歌……、どの歌をとってみても今までテレビで聞いてきた音楽と全然違っていた。
夢中になって、ナイフのCDとレコードを買い漁った。高校生のバイト代なんて、たかが知れているだろうに、日本盤はもちろんのこと、同じタイトルであろうとアメリカ盤とヨーロッパ盤も買った。その中の一枚に『EVERY BAND HAS A SHONEN KNIFE WHO LOVES THEM』という、ナイフ好きのバンドが集まって作ったトリビュート盤がある。つたない日本語で歌っているバンドもあって泣かせる。私も彼らに負けない位、大好きだった。小さい子が「大きくなったら、仮面ライダーになる!」と他愛もないことを言うのはよくある話。なのに私は、高校生にもなって、本気で少年ナイフになりたかった。執念というものは恐ろしいもので、見よう見真似でレコードのジャケットの写真を見ながらモンドリアン柄のワンピースを作成。その服を着て、大阪までライヴを見に行ってしまった。あの時直子さん(ボーカル/ギター)が、「今日は東京からかわいいお嬢さん達が来てくれています」と言ってくれたのを今でもよく覚えている。
亀の子束子の歌なんてものを日常的に聞いている女子高生にとって、「ラブ・ストーリーは突然に」なんて言われてもシャラくさい事この上ないっつー訳で。こうなるとヒマさえあればレコード屋に行ってはジャケ買いや「コレ良さそうかも」というテキトーな勘を働かせながらCDやレコードを買っていった。特に私が好きだったのは、インデイーポップと言われるものでアメリカのKやイギリスのSlamtptといったレーベルからリリースされるものだった。とにかくこの頃は聞くもの全てが新しく感じて面白くて、7インチのレコードのジャケットを眺めているだけでも時間がつぶせた。
その頃、ニルヴァーナのカート・コバーンが少年ナイフに対してこんな事を言っていた。
「少年ナイフを見ていると涙がでてくる」
当時の私は、この発言がてんで理解できなかった。だって、楽しいのは分かるけど泣ける音楽じゃないのに泣くのはおかしいでしょ。
でもそれから数年後、久しぶりに少年ナイフのライヴを見ていたら涙がでてきた。自分でも「あれあれ?」って思っているんだけど、何故か泣けた。その時と高校生の頃に比べると私を取り巻く状況は全く変わっていた。あの頃知っているバンドなんてほんのちょっとだったけど、もう違う。働いているし、散々な恋もしたし、いい思いもした。でもステージの少年ナイフは相変わらずかっこよくロックしていた。そのことにグっときてしまった。
さすがに今はモンドリアン柄のドレスを着て、ライヴには行こうとは思わない。けど今でも、少年ナイフになりたいとは思う。いつまで経ってもカッコイイ! しかもロックだ! それを飄々とこなしている姿に憧れる。