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私はアンティル vol.16 「あなたの将来の夢は何ですか?」

アンティル2005.07.15

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「あなたの将来の夢は何ですか?」

小学校の頃、そんなテーマが出されるたび私はとても困っていた。時代はアイドル全盛時代。まわりの人は「アイドルになりたい」と言っていた。私はそんな同級生を横目に、大好きだった中島みゆきの詞を完璧に理解するため、曲が作られた頃の時代背景を調べたり、わからない言葉を辞書で調べるような子供だった。

『70年安保、べ平連・・・、シュプレヒコールとは?(ペラペラペラ)・・・』
中島みゆきの詞に感動しながら私は『アイドルになりたいかぁ、この人達気楽だなぁ』と、心の中でつぶやいていた。私が子供の頃なりたかったものは、子供だった。

「おねーちゃん遊ぼーよー」近所の子供達の間で人気の中学生のお姉さんN。そのNの手を奪い合い、甘える友達を眺めながら、私は『とても自分には出来ない真似だ』と、しょぼくれていた。私もお姉さんと遊びたかったのだ。でも私にはどうしても言えない。「おねーさん遊ぼーよー」

しかし、ある日私は決意した。『今日こそ言おう』。20メートル先から歩いくるNを凝視しながら、心の中で何度も練習してみる。『お姉さん遊ぼう。おねーさん遊ぼう。おねーさ~ん~』。『よしOK!』

「あの~お姉さん・・・」私は、精一杯友達の真似をして甘えてみた。
「私、お姉さんのこと大好き。遊ぼう。」
「う、うん・・・」

お姉さんは明らかにひいていた。
「こっちに行こうよー」と、Nの腕をさりげなく引っ張ることが出来ない私は、緊張した面持ちで砂場を指差した。砂場でのNは、テンションが低かった。いつもみていたNと子供の友好関係がここにはない。それでも私はテンションをMAXにして、Nの前で無邪気な子供を精一杯演じてみせた。しかし、気がつくとNはいない。少し離れたところで近所のおばさんと私のほうを見ながら立ち話をしている。
「ねぇおばさん、アンティルの様子が変なのよ。“遊ぼう”なんて言うのよ・・・」
砂団子を作る私の手が思わず止まった。『やっぱりだめかぁ』

私らしい子供、自分が楽な自分でいると、大人は“私を可愛げのない不気味な子供”と、距離を置いた。先生や親戚の叔母さん、叔父さんといった大人との人間関係が、どうも上手くいかない。みんなと同じような子供になれれば気苦労が減るのになぁ~と、私は子供らしい子供をバカにしながら、羨ましく思った。子供になれないことより、子供になろうと努力している時のほうが辛かった。だから私は子供になることをすぐに諦めた。

私のクラスにはもう一人、私のように子供ノリに加わることができない女の子がいた。出っ歯の木幡さん。木幡さんは、友達を観察しては、それをネタにして漫画を書いるような人だった。性格が悪く、趣味も合わない人だったけど、私は木幡さんといると楽だった。「木幡さんとアンティルはなんかいい組み合わせだよね。」とか、クラスの人気ものの女子に言われるとムカツいたけど、少なくともそんな女子より、どんなに大勢の人といても、溶け込むことがない出っ歯の木幡さんを私は信じることができた。木幡さんがなりたかったものは腹話術師だった。

子供らしくならねば、オンナらしくならねば、社会に順応する人にならねば、オトコらしくならねば。“らしさ”を求めようとすればするほど、私はその場所からはじかれていく。そしてそのたび私は自分というものを思い知る。
先週、私は2つの貴重な体験をした。

一つは、LPCでカウンセラーとして二人の方とお話をしたこと。
そしてもう一つは、摂食障害の自助グループNABAの会で、講師をつとめさせてもらったことだ。まんこ持ちとのセックスとオナニーが大好きで、気持ちよくイキたい!とまんこを触ってきただけの私が、なぜカウンセラーや講師として声をかけてもらえたのか、私にはわからなかった。

私はこの2つの場所で、多くの人の体験談を聞いた。そこには何かにならなければならない人達の怒りや苦しみがあった。迷いから開放されて、自分の欲望を肯定できるようになりたいと、願う人達がいた。家族や友達、会社や学校の中で奪われそうになる“私の声”を守ろうとする人、奪われた自分を取り戻そうとする人の声を聞きながら、私は私に何を求められているのか、わかったような気がした。“私と私を奪おうとするものとの闘いのストーリー~アンティル編~”を求められていたのではないだろうか。“欲望”を探しながら揺らぐ私を見たかったのではなかったろうかと。

『こうでなければならない』という声に苦しめられるオンナ達。それでも自分を諦めないオンナ達の怒りの声を聞き、私はこの社会で自分が不快なことにも気持いいことにも、すぐ反応できる力を持ち続けるのは、とても難しいことなのだとあらためて実感した。そう思ったら、まんこ、まんこと大声を上げて街を歩きたくなった。どうしたらそんな社会を変えられるのか私にはわからない。でも体験をシェアーすることで力を獲ることを私は知った。この社会で共に生きる、まんこ持ちの闘いのストーリーや、「気持ちよくなりたい!」とバイブを手にする人達の話しを、私はもっともっと聞きたい。

NABAのみなさん。カウンセリングを希望してくれたお二人。ありがとうございました。またお会いできること、楽しみにしています。  アンティル

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アンティル(あんてぃる)

ラブローター命のFTM。
数年前「性同一性障害」のことを新聞で読み、「私って、コレかも」と思い、新聞を手に埼玉医大に行くが、「ジェンダー」も「FTM」という言葉も知らず、医者に「もっと勉強してきなさい」と追い返される。「自分のことなのに・・・どうして勉強しなくちゃいけないの?」とモヤモヤした気持ちを抱えながら、FTMのことを勉強。 二丁目は大好きだったが、「女らしくない」自分の居場所はレズビアン仲間たちの中にもないように感じていた。「性同一性障害」と自認し、子宮摘出手術&ホルモン治療を受ける。
エッセーは「これって本当にあったこと?」 とよく聞かれますが、全て・・・実話です!。2005年~ぶんか社の「本当にあった笑える話 ピンキー」で、マンガ家坂井恵理さんがマンガ化! 

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