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包皮男子のアソコ

田房永子2011.02.01

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 ズラリと並んだボサボサ頭のインテリオタクメガネ地味男子10人の中に、一人だけ"六本木ヒルズ"、ストライプ柄のワイシャツの胸元をあけたIT社長風のその男はいた。
 11人の評論家志望の30代男達が壇上で「電子書籍化社会」についてを討論する「朝まで生テレビ」方式のトークイベント。私は電子書籍化社会についてのいろいろな人の見解が聞きたくて入場料1600円を払って見ていた。
 だが、全員が難解な単語を駆使する勝間和代みたいな押し込むような早口で喋りまくっていて何を言ってるのか全く分からない。
『ある種、特殊性の普遍性につながる』『ある種のプレゼンスが』『コンセンサスによってはその手のキーパーソンが』
 全員がとにかく「ある種」という言葉を多用しまくっており、しまいには「アルシュ」しか聞き取れなくなった。知っている知識、難しい言葉を披露している男の子たち。彼らが普段考えていることや生活感やどんな人なのかが伝わってこなくて、実は電子書籍にぜんぜん詳しくないんじゃないのか? と思った。それを隠すために聞き取れないほどの早口で話してるんじゃないのか…?
 もし「いつもどんなネタでオナってるんですか?」と聞いたら顔を赤らめることもなく聞こえないフリして無視しそうなボーイズ。彼らの"難しい言葉"は”チンチンを守る包皮”思えてきた。
houshidanshi.jpg 中でも、唯一女にモテそうなIT社長風の人の包皮が特に厚かった。IT社長風男は必ず人の話を遮って「今はそういう話してるんじゃないんですよ?」と鼻笑いを含めた「軌道修正」を始める。IT社長風男のおかげでワケのわからない討論が更にグチャグチャになり、結果的に10人のオタク男子たちを一匹づつIT社長風男が攻撃的に否定しまくっているだけの状況になった。当の本人からは、「このダサイ男達の中で唯一自分だけがマトモに討論ができる男」と自覚しているかのような満足げなオーラが放出されている。観客だから見てられるけど仕事先の会議でこんな人に絡まれたら1週間はごはんが美味しくなくなっちゃうなあ…。
 IT社長風男の凶暴性には、「目立ちたい」とか「モテたい」とかいうポジティブな意味合いは全く含まれておらず、一人で何かに怯えまくっている印象だった。大声で泣き叫びながらとりあえず機関銃を撃ちまくって味方全員ブチ殺している感じ。彼の最前線の流行を取り入れたモテファッションも、何か彼にしか分からない弱みを守り隠すための包皮に見えてくる。実際にそういう完全に包まれたチンチンを持っていて、私には計り知れないコンプレックスのようなものから、難解言語の鎧を着るようになったのか、それともかなりのデカチン・デカタマ・良質ピストンを所持しているが評論家という堅いイメージに憧れ過ぎて自分の中の「やわらかさ」を封印してしまったのか─。
 IT社長風男のソレばかりが気になった。もし「いつもどんなネタでオナってるんですか?」と聞いたら血管を浮かせて怒り出しそうなIT社長風男。包皮がブ厚すぎて彼自身のことが見えない、分からない。
 このバキバキのゴリゴリの言語武装のIT社長風男を見ていて、この人がペニバン熟女にアナルを犯されて悶絶させられまくって最後、頬を蒸気させながらカメラに向かって「キモチ良かったです…」って微笑むAVがあったとしたら…と、自分の脳が突然思った。そのAVがあったとしたら、多分絶対買っちゃうって思った。厳密に言うと、正規価格は6000円くらいだと思うから、3000円に割引になってたら絶対買う。4000円だったらかなり迷うけど、迷ったあげくに結局買うと思う。それを見るときは多分、身を乗り出しながらジッと見つめて、自分の体に触れることはなく見終えると思う。それで充分満足するような気がする。
「女教師、婦人警官…男は、堅い職業の女が乱れるところが見たいもんなんですよ」っていう男性の言い分、ハイハイって思ってた。男ってね、そうらしいですね、って思っていた。だが、同じような感覚が自分の体内にも存在している…ということを感じた。
 とにかく淫乱熟女に中田似のアナルを封じさせて黙らせたい欲求。現実のIT社長風にはエロスの風はまったく吹いておらず、とにかくしゃべり倒している彼を無表情で見る自分がいる。その現実をパタンと真逆にひっくり返したいという願望。そういうものを存分に感じ、電子書籍には全く知識が増えぬまま帰宅した。

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田房永子(たぶさ・えいこ)

漫画家・ライター
1978年 東京都生まれ。漫画家。武蔵野美術大学短期大学部美術科卒。2000年漫画家デビュー。翌年第3回アックスマンガ新人賞佳作受賞。2005年からエロスポットに潜入するレポート漫画家として男性向けエロ本に多数連載を持つ。男性の望むエロへの違和感が爆発し、2010年より女性向け媒体で漫画や文章を描き始める。2012年に発行した、実母との戦いを描いた「母がしんどい」(KADOKAWA 中経出版)が反響を呼ぶ。著書に、誰も教えてくれなかった妊娠・出産・育児・産後の夫婦についてを描いた「ママだって、人間」(河出書房新社)がある。他にも、しんどい母を持つ人にインタビューする「うちの母ってヘンですか?」、呪いを抜いて自分を好きになる「呪詛抜きダイエット」、90年代の東京の女子校生活を描いた「青春☆ナインティーズ」等のコミックエッセイを連載中。

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