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茶の間で愛される女犯罪者

田房永子2011.02.16

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 福田和子の逃亡生活の再現ドラマ特番がテレビから流れてきた。
 母親が売春宿を経営していて小学生の頃から女の体は金になることを知っていたとか、松山刑務所事件の被害者になったなどの過去が紹介され、冷酷で残虐な女という印象が薄い作りになっていた。むしろ「刑務所で乱暴されたりして、いろいろつらかったのね~ぇ」な空気がスタジオを漂う。
 最後は「100人いたら100人から好かれる人だった」とスナックのママが激白したり、「俺にとっては最高の母親」という息子のコメントが流れ、長く逃亡するのは何か事情があったのでは?(ていうかもしかして無罪?)と錯覚するほどだった。ドラマの和子役の女優が本人より美人なのも、この効果を上げていた。
  阿部定の生涯を「おもいっきりDON!」でやってたときも、人様のチンポをブッた切った殺人犯というより、愛を貫いた女として紹介されていた。「一人の人をここまで愛せるってすごいな~って思いました!」とスザンヌがコメントしていて、阿部定が何をして有名になった人だか一瞬分からなくなった。

 男の犯罪者は大勢いるのに、その一生を『美談風』にテレビで紹介されることはない。それは「男にはもともと悪い奴がいるが、女は何かしらの理由がないと大きな犯罪はしないはず」という幻想が日本人の心に堅くあるからだと思う。その何かしらの理由というは「大きすぎる母性か、強すぎる愛」のことで、「女が狂うのは、このどちらかのせいでしかない」ということにしておきたい願望が昔から日本列島には染み込んでいる。
 更にそれは日本人の女限定である。福田和子の番組の他のコーナーで紹介されていたアメリカ人の女犯罪者役は、アマゾネス系極悪顔の白人女性が演じていて、同情のしようがない、救いようのない悪女という紹介のされ方だった。チリ人妻のアニータも、強欲でむしろ横領してアニータに金を渡していたに最初からというイメージのみで語られる。
 外国人女犯罪者には容赦ないが、日本人女犯罪者には甘い。それは自分の「母」や「姉」や「妹」とシンクロし易いからではないだろうか。
 その法則を裏切るのが、グルメ魔女木嶋香苗と渋谷セレブ妻三橋歌織だ。木嶋香苗には「愛」も「母性」も感じられず、謎のモンスター感が強すぎて、茶の間は幻想を持ち続けることができない。彼女のことを知れば知るほど、独身男を騙して殺しまくった事実よりも、単にパンを焼いてるだけの木嶋香苗が恐ろしくなってくる。こうして記事を書いていると、「木嶋香苗」が誤変換で「記事まかなえ」と時たま表示される。記事を賄え(適当にみつくろっちゃえよ(笑))と、からかわれているような感じがして、ゾッとする。木嶋香苗は、まさにこうしたよく分からない、意味の無い「ゾッ」を与え続ける女だ。
 渋谷セレブ妻報道も、「『夫を愛してた』と言ってくれ!と日本中が歌織に願った夜」が、確実にあった。でも歌織は「夫が憎かった」としか言わないし、更に歌織にも愛人がいることが分かったあたりで、彼女に対しての世間の妙な期待のようなものがはじけ飛び、消滅した。
 逃亡やチン切りなどの「貫き」に対しては、人は罪悪感を伴いながらも「評価」し、男や子どもを「愛していない」という本人が心の真実を言い続ける「貫き」からは、目を逸らしたくなる心理が、日本の茶の間にはある。
「女犯罪者」
女向け商品度★★★☆☆(男も女犯罪者は好き)
母性要求度★★★★★
木嶋の料理おいしそう度★★★★★
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田房永子(たぶさ・えいこ)

漫画家・ライター
1978年 東京都生まれ。漫画家。武蔵野美術大学短期大学部美術科卒。2000年漫画家デビュー。翌年第3回アックスマンガ新人賞佳作受賞。2005年からエロスポットに潜入するレポート漫画家として男性向けエロ本に多数連載を持つ。男性の望むエロへの違和感が爆発し、2010年より女性向け媒体で漫画や文章を描き始める。2012年に発行した、実母との戦いを描いた「母がしんどい」(KADOKAWA 中経出版)が反響を呼ぶ。著書に、誰も教えてくれなかった妊娠・出産・育児・産後の夫婦についてを描いた「ママだって、人間」(河出書房新社)がある。他にも、しんどい母を持つ人にインタビューする「うちの母ってヘンですか?」、呪いを抜いて自分を好きになる「呪詛抜きダイエット」、90年代の東京の女子校生活を描いた「青春☆ナインティーズ」等のコミックエッセイを連載中。

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