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ラブコミック

田房永子2011.04.13

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 ラブコミック(セックス描写込みの少女漫画)は、表紙が限りなく普通の漫画誌に近いので、レディースコミックよりも買いやすい。「全部読みきり」なので、600円程度で20組程のカップル(主人公とイケメン)による“愛のあるセックス”を読むことができる。  ラブコミック内でイケメンが主人公へ施す“前戯愛撫”には、特徴がある。イケメンはまず、恥ずかしがる主人公の服をめくりあげ、「乳首チュパチュパ舐め」を始める。その直後、唐突にクンニへ移り、「ずっとお前が好きだった」的なセリフが入りーの、男根インサートである。この「即乳首、即クンニ、即挿入」の「3即」がラブコミックの通例である。ページやコマ配分の都合上、即、性感帯描写になるのだと推測するが、意外にキス描写はあまりなく、指マン、手マンよりも、クンニシーンが優先されている。「フェラチオ」描写は皆無に等しいほど少ない。ラブコミックにおける「フェラチオ」は、別れを切り出す男を懐柔しようと裏スジを舌で責めるとか、ハッキリしない年下草食男を誘う際に女っぷりを表現する為に棒を吸う、など、愛撫というよりは「秘策」として用いられている。    私がティーンの頃読んでいた女の子向けエロ漫画は、フェラチオは基本で入っていた。私は78年生まれで、バブル崩壊後ブルセラ援交オヤジ狩りの言葉が生まれた「ルーズソックス元年」世代である。当時の私や周りの感覚では「フェラチオ」は至って普通のことで、クラスの○○ちゃんも××ちゃんもみんな、彼氏のをフェラチオをしていた。超絶舌技巧を磨いて男心を操りたいという思惑もなく、みんなが「それがセックスというもの」として、フェラチオをしていた。最近の10代、20代とは、セックス観が違うのかもしれない、とラブコミックを読んで思う。    そして最近、女性セブンのセックス特集で、「R40世代はフェラを風俗のプロがやることだという認識がある」という一文を読み、衝撃を受けた。どうやら私より上の世代のセックスではフェラチオは「普通のこと」ではないらしい。セックスは個人的なことだから、世代で分けることは強引だと思うが、漠然とした世代別の価値観の差というものは、あるような気がした。そして、自分と自分世代に浸透しているフェラ観、クンニ観を裏付ける、ある一つの決定的なことを思い出した。  私は風紀の乱れが少ない私立の女子校に通っていたが、クラスのほぼ半数がアムロ(安室奈美恵)ヘアーを取り入れていた。アムロヘアーの子たちも眉を整えたり化粧をしたり男の子と遊んだりしていたが、それとはまた別に「コギャル」というジャンルの人たちがいた。梅宮アンナや神田うのをファッションリーダーとする「コギャル」人口は学年の5%くらいで、彼女達は日焼けサロンに通って肌を焼き、茶髪にし、スカートの短さもハンパなかった。その中でも「援交」をしているコギャルはまた特殊な存在だった。援交をしていることが明白なコギャルも、やってるっぽいと噂されるコギャルも、こぞって彼女達は生々しくセックスや男性器について語った。  私の学校にいたコギャル達には「クンニはオヤジがするものだから、彼氏にはさせない」という共通意識があった。一度誰かがハッキリ言っていて、それがジワジワと「当然のこと」として浸透していった感じがある。「クンニ」が援交というものへの嫌悪の象徴として無自覚で語られる空間。その会話に参入しなくとも教室にいればその言葉が耳に入ってくる環境は、私や周りの“男と話すことすらできない環境にいる処女”たちの性観念へ爆弾級の威力を持ってストレートに染み込んでいった。実際に私は「クンニ=オヤジ=ダサイ」という認識がかなり長い間拭えず、「クンニで気持ちよくなるのは愛のない恥ずべき行為」という強力な植え付けがあった。  これは東京の女子校がみんなそうとかじゃないし、私の学校でも私だけかもしれない。だが、あの小室哲哉全盛期だった頃の女子高生にとって、セックスの中の「フェラチオ」は、男への奉仕や屈する意味合いはなく、女もセックスに自発的に参加するという前向きなイメージを持つものだったように思う。対して「クンニ」は、自分の体へ一方的な興奮をする男の劣情を受け止めるという、閉鎖的な印象が強かった。いつの時代でも、同級生の中で先頭を切って性体験を切り拓いていく者たちの価値観が、その後ろの者へ多大な影響を与えるという現象はきっとある。ブルセラや援交なんて、同じ時代にいても自分とは全く関係のないものだと思っていたが、あの頃の「オヤジ」達の欲望で作りあげられたブルセラ万華鏡の中に、間接的に自分も混ざっていたのかもしれない、と今更気付いたのであった。 ラブコミック参考文献:「恋愛天国パラダイス」竹書房、「薔薇色恋愛ラブキュートNO.1」コスミック出版、「絶対恋愛Sweet」笠倉出版社、「禁断エデンV」宙出版 2011_04_12_feratio.jpg

「ラブコミック」 女向け商品度★★★★★ ヌケる度★☆☆☆☆ 射精やオーガズムを迎える前に「ずっと一緒にいようね…」とかいっていきなり話が終了する度★★★★☆

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田房永子(たぶさ・えいこ)

漫画家・ライター
1978年 東京都生まれ。漫画家。武蔵野美術大学短期大学部美術科卒。2000年漫画家デビュー。翌年第3回アックスマンガ新人賞佳作受賞。2005年からエロスポットに潜入するレポート漫画家として男性向けエロ本に多数連載を持つ。男性の望むエロへの違和感が爆発し、2010年より女性向け媒体で漫画や文章を描き始める。2012年に発行した、実母との戦いを描いた「母がしんどい」(KADOKAWA 中経出版)が反響を呼ぶ。著書に、誰も教えてくれなかった妊娠・出産・育児・産後の夫婦についてを描いた「ママだって、人間」(河出書房新社)がある。他にも、しんどい母を持つ人にインタビューする「うちの母ってヘンですか?」、呪いを抜いて自分を好きになる「呪詛抜きダイエット」、90年代の東京の女子校生活を描いた「青春☆ナインティーズ」等のコミックエッセイを連載中。

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