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韓国のイケメン、日本の痴漢

田房永子2011.06.30

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 井の頭線で「股間富士山男」を見た(お手数ですが、前回参照)直後、私は女性2人と大久保で食事の約束があった。そこで「韓国人男性はイケメンが多い」という話を聞いた。私には、昔のバイト先にいた韓国人男子の足が強烈に臭かった(5畳くらいの更衣室にその匂いが充満して、着替えに支障を来たすレベル)ことしか正直、韓国についての印象がない。ピンと来なかった。だが、「韓国人の男は背が高い!」「肌がキレイ!」「腕の筋肉が日本の男と違う!」「韓国の電車に乗ると必ず一人はイケメンがいる!だから電車に乗るのが楽しい!」と力説されると、そうなんだ…! と心躍ってきた。
 その後、大久保の韓国ストリートを歩いた。イケメンカフェというのがある。店内を覗くと、店員が全員、若い韓国人男性で、確かになんか、ちがう! と思った。腕の太さと顔の大きさのバランス、腕の色のエロさとしっとり感が、日本男性と違う… えっ何これ?! マジ最高っしょ!! 大久保は、最早、どの店もイケメンだけを置いているという最高の街になっていた。小雨が降っていたが、私はものすごい足取りが軽くなり、首をグルグルさせていろんなお店の店員をチェックした。みんな。。うそみたいにカワイイ! 「今の店、カワイイ子いましたよ!ゲヘヘ」と、店を通り過ぎる度にいちいち言ってたんだけど、これってキャバクラ探すオッサンたちと同じだなって思った。「こんな…こんな楽しいことを…男達は自分たちだけのものにしてたんだ!」怒りが沸いてきた。
 イケメンカフェでドリンクを頼むと、イケメン店員が「ゴヒャクエン、デス・・・」と頼りなげな片言の日本語も、私の陰核ダウジングを奮わせた。
 大久保で絶頂的な楽しさを満喫し帰宅した。そして改めて「股間富士山男」について考えた。私が目の前で感じた印象と、本人が思っていること、その答え合わせをしたい気持ちで「痴漢の人たちが語り合う掲示板」を見てみた。みんな、悩みながら苦しんでいるのではないだろうか?
まず、電車内痴漢をはたらいている人たちのあいだでは「痴漢OK子」という用語があることが分かった。これは「電車内で痴漢をされても抵抗せず、されるがままの女の子」という意味である。「最近、すごくいいOK子に出会えたので通勤が楽しいです」等の浮かれた記述が多数見られた。
 彼らの感覚では、「女の中には痴漢されるのをいやがる者と、いやがらない者がいる」ということになっているらしい。つまり、「『女=痴漢をいやがるのが普通』という社会認識によって、『実は痴漢を待っている女の子』がそれを言い出せないことがある」という彼らが共用している前提が垣間見えた。「むしろ、痴漢を待っているOK子を俺は探し出してあげてる」と言わんばかりの勢いのある書き込みしかなかった。自分の性癖、社会的所在のなさ、罪悪感、そんなものを嘆いてるのは一人もいない。「OK子が自分の通勤電車にいるかもしれない(ていうか絶対いるに決まっている)のに、その機会を頂戴しないなんて、男として損してる」という考えになっちゃっている。「OK子が見つかるまで俺はあきらめない」と宣言してるヤツまでいた。触ったりアクションを起こさなければOK子は探せない。自分が10代の時、電車内で触られて怖ろしすぎた出来事、あれは彼らにとっては「君はOKかい? OKなら態度で教えてね☆」という“気軽な最初のご挨拶”だったんだ、と思うと脳がサーッと冷えていく。
 彼らのやる気を煽るかのように、掲示板にはネカマだかほんとの女だかの投稿(「私は痴漢さんにいつも気持ちよくしてもらってます♪」)がいくつも書いてあった。本当に気持ちよくなってる女もいるのかもしれないけど、それならそれで楽しんでもらっていいんですけど、電車の中でしないで欲しいし、その「触りたい男」と「触られたい女」の出会いのお手伝いを、なんで関係ない人が怖ろしい思いをして助けなきゃなんないのだろうか。痴漢冤罪に怯える男たちが、こういった男性心理を想像せずに、怯えて電車に乗るしかない、という現状は本当に理解しがたい。
 もしかして、妄想をネット上に書き込むことで、発散して実際はやらないということもあるのかもしれない。だが、「OK子がいるはずなのに触らないと損」という私の中では想像に至らなかった感覚、はものすごく辻褄が合った。
 韓国の電車には絶対に一車両に一人はイケメンがいるってのに、日本はイケメンいないどころか文字通り肉弾戦でOK子を探す奴らがウヨウヨしていて、本当になんなんですか。
 しかし、痴漢する男って、女のことを「異次元のもの」と思ってる感覚があると思った。私には、イケメンカフェで働いている韓国人男性が、片言で何考えてるかよく分からない、“単に生きてるカワイイ物体”に見える。彼らに対する知識も交流も全くないから、なんだかそういうふうに見える。以下の世界をイマジンしてみる。もし、私を含む日本人女性が韓国人イケメンより体が大きいとする。いつも電車には、彼ら韓国人イケメンがウジャウジャと乗り込み、無防備にポケーっとしていたら、私はおそらく、やましい思いに駆られるのかもしれない。やがてそんな自分の気持ちを正当化する妄想(韓国人イケメン男性は電車で触られると喜ぶ)する妄想を抱くようになり、同士が集まる掲示板へ出向いて、その思いを強固にし、逮捕されないようにOK男子を探すのかもしれない。だけどたぶん、韓国人男性と交流し理解すれば、そんなことする必要のない毎日が送れると思うのだが…。
OKko_20110629.jpg

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田房永子(たぶさ・えいこ)

漫画家・ライター
1978年 東京都生まれ。漫画家。武蔵野美術大学短期大学部美術科卒。2000年漫画家デビュー。翌年第3回アックスマンガ新人賞佳作受賞。2005年からエロスポットに潜入するレポート漫画家として男性向けエロ本に多数連載を持つ。男性の望むエロへの違和感が爆発し、2010年より女性向け媒体で漫画や文章を描き始める。2012年に発行した、実母との戦いを描いた「母がしんどい」(KADOKAWA 中経出版)が反響を呼ぶ。著書に、誰も教えてくれなかった妊娠・出産・育児・産後の夫婦についてを描いた「ママだって、人間」(河出書房新社)がある。他にも、しんどい母を持つ人にインタビューする「うちの母ってヘンですか?」、呪いを抜いて自分を好きになる「呪詛抜きダイエット」、90年代の東京の女子校生活を描いた「青春☆ナインティーズ」等のコミックエッセイを連載中。

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