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SMAPファンじゃない私のSMAP

田房永子2016.08.16

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 10年くらい前、mixiを見てた時にたまたま「木村拓哉が大嫌い」な人が書き込む掲示板が目に入った。キムタクのことを大嫌いだと言う人がいるんだなあ、と驚いた。
 アイドル好きがほとんどいない私の周りでは、キムタクは好きになる存在でも嫌いになる存在でもなく、ただ「キムタク」でしかなかった。「キムタクみたいでかっこいい」とか「キムタクみたいな髪型だね」とか、「キムタク」を発する時は必ず「みたい」が付いている。基準としてのキムタクという認識しかなかった。
 だからキムタクに対して「大嫌い」という意志をはっきり持つ人がいるという当たり前のことにビックリした。

 私が読んだ、その「木村拓哉が大嫌い」な人は、なんでキムタクが大嫌いかと言うと、「その時流行っているものにすぐ乗っかって、言うことやることがコロコロ変わるから」とのことだった。「90年代、武田真治が大人気だった時、武田真治と仲良くしていて、武田はサックス、木村はギターを持って、夜中に公園でセッションしたりしてたくせに、いまは武田真治の話なんか全然しない」と、キムタクが常にその時最前線の芸能人とだけやたらと仲良くする、ということにこの人はとても憤慨していた。
 その気持ちはなんか分かる。そういう人っているよね。転校生とか入ってくると、もうその人の隣を常に陣取って、やけに仲良くする人。でもその転校生がクラス内での株をちょっと下げたりすると、クラスの一番のボスの横にちゃっかり戻ってる、みたいな人。そういう人へのイラッとくる感じって分かる。
 キムタクってそういう感じだとしたら、それってキムタクの印象を全く超えてない、イメージ通りな行動だと思った。
「夜中に武田真治と公園でセッション(なのに今は全く武田真治の話をしない)」ってなんか可笑しくて、むしろキムタクの愛嬌を感じるエピソードだけど、真剣に憤慨してる人がいるというところが、スーパースターなんだなと思った。

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 予備校の夏期講習で出会った一つ年下の女の子でSMAPファンがいた。高校1年生なのにコンサートのために大阪とかも行くっていうかなり気合いの入ったファンだった。その子を毎日のように茶化す女子がいる。「なんでSMAPなんか好きなの」とからかう。SMAPは当時も人気はあったけど、「SMAP×SMAP」はまだ始まってなくて今ほど国民的スターではなくアイドル色が強かったから、ファンはそういう風にからかわれることが多かった。
 茶化される度に、SMAPファンの子は「うるさい!かっこいいのー!」とプンプンという感じで怒ってたけど、ある日の昼食時、茶化す子が「SMAPの頭文字は、スケベ・マヌケ・アホでパーなんだよ」と言ったら、SMAP好きな子の表情がみるみる変わり、「…うるせえんだよッ!! すぐそういうこと言う人がいるからイヤなんだよ! 人が何好きでもいいだろうが!」とドスの利いた声で怒鳴りあげた。横で見てただけでも震えるほどの恐さだった。
 しかし、ごもっともである。その時から、アイドルが好きな人のことをからかっては絶対にいけない、と改めて強く思うようになり、それどころか、興味の無い自分にはSMAPがどうだとかアイドル(特にジャニーズ)に思いを馳せる権利すらないから、考えてはいけない、と封印した。
 そういうことがあったから、SMAPは単なるよく見るタレントであり、キムタクは基準の記号としての無機質な存在になっていった。私の周りの人たちもそれぞれに、そういった「アイドル好き」な人との温度差によって、それに近い状態になっていった経緯があったと推測する。

***

 でも99年に発売された曲「Fly」のPVが、当時すごく流行っていたミニシアター系映画によく出てくるアイテムが全てぶち込まれたものだった。なんかすごくて、テレビで流れる度、釘付けになった。
 悪者に捕まった稲垣吾郎を、他のメンバーが助けに行くというドラマ仕立てのPVで、当時ヒット作を連発していた映画監督の石井克人が監督して話題になっていた。
 奇天烈な風貌の悪役(我修院達也)、暴力、流血、咥えタバコで黒人ギャングとの交渉(キムタク)、笑顔でピストル、よく分かんないけどレトロアメリカンなインテリア、部屋には「トレイン・スポッティング」の巨大ポスターが立てかけられている、アメリカのモーテル的な所で下着姿の二人の女の子とシャンパンかけあいベッドでじゃれる(香取)、ポールダンスをやっているバーでビリヤード(草彅。そういえばこの頃、ビリヤードめっちゃ流行ってた!!)、ゴーグルを前頭葉部分にかけもみあげが長いヘアスタイル(中居)、それぞれの場所にいた4人がラフな格好から黒いスーツ(シャツは白)に着替え(これもアイテム)、ピストルを持って、縛られた仲間(稲垣)を助けに行く。
 合間合間に黒スーツで並ぶSMAP5人が映るんだけど、この複数の男性が黒スーツで並ぶ、という図も当時とにかくめちゃくちゃトレンディだった(パルプフィクションとかミッシェルガンエレファントとか)!
 たぶん、この「Fly」を見るまで、私とか友達は、SMAPをジャニーズとしか見てなくて、ジャニーズというのは流行と全く別の独自のセンスで押し切っている団体、というイメージが強く(嵐のデビュー時の乳首丸見えのビニール製のジャケットや、TOKIOの袖のない衣装など)、常に第一線にいるにも関わらず何故か流行とはズレ続けている、という印象だった。
 だからSMAPがここまで徹底的に、流行ものを全力でやるSMAPにビックリした。それまでもやってたんだと思うけど、自分がよく見ている分野にSMAPが堂々と入ってきた、という感覚になって初めて知ったという具合だった。
 当時、「Fly」のPVは流行り物を取り入れすぎて格好良すぎてむしろダサい、という感じだった。小っ恥ずかしいのに、なぜかすごく心地いい。

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 その少し後、「SMAPの歌は実はそんなに上手くない」という話題が世の中に出た時期が、SMAPの人気の不動っぷりが本格的にスパークした時だと思う。
 それが、いつ頃かはっきり分からないけど、「世界に一つだけの花」が出たあたりだったと思う。
 世の中に「実はSMAPって歌下手だよね」「SMAP、歌が上手くない!」っていうのがババーーン!!と出た。それまで、ジャニーズ(夢を売る人、絶対的カッコイイアイドル)っていうのは崩せないから、誰も大声で言えなかっただけで、みんな心では思ってた!! という大衆の解放が確実にあった。テレビとかでバンバンそれが出ちゃって、見てるほうがハラハラと心配になった。
 だけどそこでなんと、中居君がバレました?という雰囲気で「僕、下手なんですよ」と開き直った。そしてバラエティ番組などで自分の歌の下手さや弱点(その頃よく自分のことを「なんちゃってタレント」と言っていた)をさらけ出したことで、SMAPと世間の距離が一気に縮まったと思う。
 しかも「歌が下手」を自称するメンバーは中居君一人で、他のメンバーはそこについてあまり言及しなかったのも、SMAPとしての品格を保ったまま好感度だけを爆上げする結果をもたらしたと思う。
 結果的にSMAPの歌が下手問題は、「上手すぎない歌唱力で『世界に一つだけの花』など普遍的で分かりやすい歌を歌うからこそ、一般人の胸に響く」というSMAPにとって最良の結論で世間が一致し、「SMAPの歌は下手」は当たり前のこととなった。

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 キムタクって、なんでも器用にできてキザにすましてても顔がいいから絵になるのに、足が短い。歌ってる時の表情とか動きとかめっちゃくちゃ雰囲気あるけど、歌が上手くない。その時流行ってるもの(最近だとジョニーデップ的な私服)にすぐ食らいついているものの私服はいつも結構ダサいのに、そのダサさを絶対に他人にいじらせない・自分でもいじらせない。好きな曲がいつも超王道な洋楽とかでそれを自分だけが知ってるかっこいいものとして堂々と紹介したりする。そんな致命傷(ダサさ)をたくさん持っているのに何故かそういう彼を目の当たりにしても、視聴者のこちらが「まあ…キムタクだから」と納得せざるを得ない希有な人物、キムタク。
 2009年の年末の生放送のスペシャル番組で、キムタクが熱湯風呂に入ることになって「なんで俺なんだよ」と不機嫌ながらも服を脱いだ。生放送でキムタクが服を脱ぐところ、キムタクの上半身が見られるってレアすぎる、きっと締りきった裸体に違いない、と誰もが思ったその時、プヨプヨのだらしない上半身が登場し、日本中が震撼した。ブスッとしているキムタク。後ろにいる明石家さんまとか広末涼子とかも、ハッキリとは言わないけど明らかにキムタクの上半身の脂肪の多さに動揺していた。そして不機嫌なまま、ちゃんと熱湯風呂に入るキムタク。
 コンサート映像とかで見るキムタクの胴体は締ってるのに、なんで寄りによってこんな時にプヨプヨなのか。普段めっちゃかっこつけててパーフェクトなはずなのにダサい、それこそがキムタクだから、間違ってない。とにかく私はこの時、キムタクという人の「隙」が大好きになった。いや、前から大好きだったことを初めて自覚した。

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 キムタクの印象は、SMAPのそれに重なる。「SMAP×SMAP」にはその時に流行っているミュージシャンや外国人タレント、現在放送中のドラマに出ている俳優・女優、しかゲストに来ない。SMAPメンバーが個人的にすごく会いたい無名の人とか、昔流行ったミュージシャンとかが再び来ることは絶対にない。世の中で注目されている真っ最中の、とにかくトレンディな人しか出られない。
 その点は、「笑っていいとも!」の番組の終わり間際に唐突に通訳と共に登場する外国人タレントと似ているけど、タモさんは外国人タレントと事務的な会話をするだけで、その人の持ち歌を一緒に歌ったりはしない。
 だけどSMAPは歌う。ゲストで来た人と一緒に、その人の歌を思いっきり歌う。相当練習もするだろう、タモさんと外国人タレントの距離とは全く違い、SMAPはゲストとの親密さを披露する。だけど、そのゲストは売れ続けていないと「SMAP×SMAP」には二度と出られない。PVも、「Fly」が格好良かったからって、あのテイストで続けようなんてことはしない。
 そのスタンスは、キムタクが武田真治と公園でジャムったのに今は全く武田のたの字も出てこない、という話と重なる。キムタクは、というかSMAPは、とにかくその時、「今」流行っている、人気があるもの、そういう浮かんできた石をポンポンと渡り歩くというスタイルだと思う。その石に対してのこだわりやプライドは一切ないから、軽く渡り続けることができる。服装のテイストも曲ごとにコロコロ変えられるし、髪型も最先端のものにその都度変える。流行だけにこだわっていると、流行と普遍はたまに重なる時があるから、その中の石が、ものすごく普遍的真理っぽい曲だったりすることがあって、そうすると大ヒットになって、SMAPがトレンディであり続けることになる。
 EXILEが、HIROが考えて作った大きな船に乗ってメンバーを交代したりチーム編成を変えながら流行の石に当たることを狙って進んでいるグループだとしたら、SMAPは5人が手を繋いで「せーの!」とかけ声と共に流行の石に飛び移りながら進んできたグループだと思う。だいたいのグループは、EXILEスタイルだと思うから、SMAPはすごく珍しいグループなんじゃないだろうか。そして、5人同時に飛び移っていくスタイルというのは、相当にメンバーのバランスが取れてないと難しいから、そう考えるとよく24年間も続いていたんだなと思う。
 SMAPの解散については、香取とキムタクが仲が悪い説とか、事務所の思惑説とか、メリーさん極悪説とかいろいろネットに書いてある。何が本当なのか全くぜんぜん分からないし、真相なんか知れることもないと思うけど、私は、キムタクの持ち味である「隙」によって、5人の手が繋げなくなってしまい、石に飛び移っていくというSMAPのスタイルが保てなくなった、と思うことにした。

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 SMAPは、一般人の前でサプライズライブをよくやる。SMAPほど、国民的スターなのにしょっちゅうサプライズでミニライブをやる、その様子がテレビで流れる歌手っていないと思う。結婚式で突然5人が登場して歌い出すとか、芸能人の母親たちが集まっているところで急にライブを始めたり、そういう、至近距離でライブをしている様子を何度もテレビで見た。熱狂的なSMAPファンでチケットを取らないと見られないわけじゃない、というのが夢がある。
 私もいつか「SMAPのミニライブを至近距離で見てみたい」と思ってた。
 解散ってニュースを見て、あ~あ、あの夢は叶わないんだなあ、と思った。
 見たかったな-、悲しいなー。
 自分の説はこれであるので私はこれで納得します、って長い文章書かないと落ち着かないくらい、結構、かなり、自分ってSMAPが好きだったんだなー、と思いながら書いています。

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田房永子(たぶさ・えいこ)

漫画家・ライター
1978年 東京都生まれ。漫画家。武蔵野美術大学短期大学部美術科卒。2000年漫画家デビュー。翌年第3回アックスマンガ新人賞佳作受賞。2005年からエロスポットに潜入するレポート漫画家として男性向けエロ本に多数連載を持つ。男性の望むエロへの違和感が爆発し、2010年より女性向け媒体で漫画や文章を描き始める。2012年に発行した、実母との戦いを描いた「母がしんどい」(KADOKAWA 中経出版)が反響を呼ぶ。著書に、誰も教えてくれなかった妊娠・出産・育児・産後の夫婦についてを描いた「ママだって、人間」(河出書房新社)がある。他にも、しんどい母を持つ人にインタビューする「うちの母ってヘンですか?」、呪いを抜いて自分を好きになる「呪詛抜きダイエット」、90年代の東京の女子校生活を描いた「青春☆ナインティーズ」等のコミックエッセイを連載中。

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