タイトル画像
ラブピースクラブショップ
スタッフおすすめトーイランキング
バイブレーター編!
No.1
誰もが虜になる大人気吸引式バイブ!!
No.1
女性2人が作った話題のトーイ!
No.1
ラブピースクラブロングセラー! 北欧の最高傑作トーイ。
TALK AOUBT THIS WORLD! フランス編
世界を救う世代
18.10.29 by 中島さおり



 「僕たちは世界を救わなきゃならない世代なんだよ」と、16歳になる息子が言った。
 私はまずいレトルトのヴィーガン・ソースをかけたパスタで息子と二人の昼食を終えたところだった。
 「これはママ、あんまり美味しくないな」と正直な感想をいうと、
 「うん、昨日のチリ・シン・カルネの方が美味しかったよね」と言う。
 チリ・コン・カルネならぬチリ・シン・カルネとは、コンがシンに替えられたもの、つまり「カルネ(肉)抜き」のチリという意味である。

我が家の子どもたちは、食肉を作るのに、どれほど動物が虐待され、化学飼料を用いられ、抗生物質を添加されているかというビデオをインターネットで見て、すっかり肉を食べる気をなくした。もう2年くらい前から、「肉を食卓に出す回数を少なくしてくれ」と言い出し、「どうしても買うなら有機農法のだけ」。そして「ヴィーガンの食材を試してみよう」と誘導されている。

 昨日今日食べているのは、彼が友達の家で子どもだけでご飯を食べたときに買って来たのと同じ会社の商品だそうで、つまりこの傾向は我が家に限らず、子どもたちの世代に共通しているらしいのだ。
「あんたの友だちみんな、肉を食べたくないんだよね。流行ってるの?」と訊いたところ、返って来た答えがこれだった。
「僕たちは世界を救わなきゃならない世代なんだよ」

 しばらく前から、フランスの若い世代(正確にには10代から20代)が環境問題に敏感だということは肌で感じていたが、なるほどそういう理由かと思った。今年16歳の彼は2002年生まれでZ世代に属する。その一つ前のY世代、1980年代、90年代に生まれた世代が、地球温暖化の影響に直面する最初の世代になるといわれている。

 今年、ICPPは、人類がこのままの生活を続けて行ったら、早くて2030年には温度が20世紀初頭に比べて1,5度上昇し、2100年までの上昇を2度に抑えるという目標達成は不可能となると発表した。2030年といえば、息子は28歳、Y世代の最年長者が50歳を迎える年だ。
 地球温暖化は住環境を悪化させ、自然災害を増加させ、生物多様性に変化を起こし、伝染病の発生も促す。大気汚染が進み、衛生環境が悪化する。同時に、現在進行している社会的不平等は深刻化し、政治的経済的危機にも直面すると予想される。

 Y世代、そしてそれに続くZ世代は、自分の生きて行く時代の問題として環境問題、社会問題に鋭敏にならざるを得ないのである。世界経済フォーラムの調査によると、「ミレニアル世代(Y世代)」の約50%が世界規模の問題の中で「気候変動」が最も深刻だと考えているし、米国では、「Z世代」の87%が、社会や環境問題に関心があるそうだが、フランスでも似た傾向にある。

 私は昔、「電気をつけっぱなしにするな」と度々、父親に怒られたものだが、「北極のクマのために電気を消してよ、ママ」ときょうび、息子と娘に叱られている。

 私の19歳になる娘は小さい時からデザイナー志望でファッション業界で働きたがっていたが、中国やインドの劣悪な工場環境で低賃金で公害を出しながら生産され、余れば大量の製品を処分する服飾産業に加担すべきか真剣に悩んでいたことがあった。結局、モード界に進むべく専門の学校に進学したが、聞けば級友たちも問題意識を共有しているのだそうだ。

 彼らは営利のみ追求して環境破壊をする企業、労働搾取をする企業に批判的だ。そして彼らは肉を回避することで食肉産業に打撃を与えるように、消費行動を変えることで企業に変革を迫る。
 10代、20代の消費傾向は、上の世代よりも広告から影響を受けないことも知られている。メディアが提供する企業広告よりも、ブロガーやユーチューバーの情報の方が影響力のある世代なのだ。消費がまるで美徳のようにもてはやされ、広告やキャッチコピーが芸術と混同された、私の若かった頃とは本当に時代が変わったと思う。

 もちろんY・Z世代の彼らも、環境問題に敏感ながらスマートフォンは最新の物を持ちたがるし、飛行機に乗るのをやめてCO2削減に協力しようとはあまり思わないらしい。しかしそれでも「僕たちの世代が世界を変えなければ人類は滅びてしまう」という、少年マンガの主人公たちのような意識を共有する世代は、世界を救う物語を生きられるのではないか?

 そのようなわけで、彼ら子どもたちは、それぞれの親の消費行動を変え、電力の節約を呼びかけることから、世界を変え始めているらしいのである。

プロフィール
中島さおり
中島さおり(なかじま・さおり)
エッセイスト・翻訳家
パリ第三大学比較文学科博士準備課程修了
パリ近郊在住 フランス人の夫と子ども二人
著書 『パリの女は産んでいる』(ポプラ社)『パリママの24時間』(集英社)『なぜフランスでは子どもが増えるのか』(講談社現代新書)
訳書 『ナタリー』ダヴィド・フェンキノス(早川書房)、『郊外少年マリク』マブルーク・ラシュディ(集英社)『私の欲しいものリスト』グレゴワール・ドラクール(早川書房)など
最近の趣味 ピアノ(子どものころ習ったピアノを三年前に再開。私立のコンセルヴァトワールで真面目にレッスンを受けている。)
PHOTO:Manabu Matsunaga