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学校をやめるか、出産をやめるかの選択を迫るのではなく

深井恵2019.08.09

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先日、組合女性部の学習会に参加したときのことだ。情報交換の時間に、他の高校で演劇部の顧問をしている仲間が、高等学校総合文化祭での演劇について語ってくれた。高校の演劇界では有名だというある高校の演劇のことだった。

ネットのニュースでも地元の新聞が伝えていた。その演劇部は、高校生の妊娠・葛藤を描いた作品を上演していた。仲間の話によると、その県は10代の妊娠中絶率がワースト1位であることについて、改善するための対策を講じようとしているという。対策の一つが、演劇を通じて高校生にアピールするという方法とのこと。その高校の演劇部が委託されて顧問が脚本を手掛けたそうだ。10代の妊娠中絶を防ぐのならば、避妊の仕方をしっかりと教育する必要がある。演劇でも避妊について啓発する内容なのかと期待して、組合仲間の話を聞いていた。演劇のあらすじはこうだった。

在学中に妊娠した女子高生が、学校をやめるか出産をやめるか悩む。お腹の子の父親は無責任にも彼女のもとを去ってしまうが、彼女と同じ部活動の男子高生が、自分が父親になると名乗りをあげ、彼女は葛藤の末、出産の道を選び、一緒に育てていくという。

どうも、避妊の啓発ではなかったようだ。避妊の話をせずに、中絶率を下げようと思えば、「産む」選択をさせることになる。上演された演劇を見て、感動の涙を流した観客も多かったらしい。このような演劇を見せられたら、中絶の道は選びにくくなるのではないか。

文部科学省の調査によると、10代の妊娠中絶は毎年1万数千件に上っている。その中絶をやめさせて、出産につなげたいのが国や地方自治体の本音なのか。この手の委託(「産めよ殖せよ」を意図した委託)は、その自治体だけの話だろうか。全国各地で行われているとではないだろうか。望まなくても産ませたい、そんな思惑があちこちに見え隠れするこの国だ。注意して見ておく必要があろう。

そう言えば、BL(ボーイズ・ラブ)等の分野に詳しい友だちが、つい最近教えてくれたことがある。BLにもオメガバースという分野が広がりを見せ、男性同士で妊娠するという展開もあるとのこと。また、女性向けのロマンス小説も、かつては素敵な男性と出会って結ばれるハッピーエンドで終わっていたが、最近では出産・子育てにまで話の展開が及ぶものが増えているという。素敵な男性と出会って妊娠発覚前に別れるも、自分の子どもを出産して子育てしていることを後で知った元彼が、彼女の元に戻ってきて一緒に子育てしたり、あるいは、シングルマザーで頑張っている女性が、素敵な男性と出会って一緒に子育てしていくパターンが多くなっているそうだ。

これら妊娠・出産・子育て推進が意図するところは何なのか。一つは、年齢層の変化が考えられる。以前は素敵な人との出会い・結婚への憧れが興味関心の中心だった世代が、子育てや離婚を経験している世代へと移行したと考えると納得がいく。

それに加えて、労働実態を反映しての側面もあるかもしれない。総務省が先月30日に発表した6月の労働力調査によると、日本の女性就業者数が前年の同じ月より53万人増えて3003万人になってるという。3000万人を超えたのは初めてのことだそうだ。男性の就業者数は7万人増えて3744万人とのこと。就業者数の男女差は縮まっている。

ただし、女性の非正規率は約55%。男女雇用機会均等法が成立した1986年以降改善されるどころか、悪化すらしている。賃金面での男女差も大きい。5月の平均賃金では、女性は男性の6割以下の水準でしかなかったようだ。男性の非正規率は約23%。約四人に一人が非正規雇用。若年層ではもっと割合が高くなる。男性の収入減が女性の就業者数増につながっていることは想像に難くない。非正規労働では、安心して子育てできるはずもない。子育てがストレスになり、児童虐待にもつながっていく。

女子高生に、学校をやめるか出産をやめるかの選択を迫るのではなく、そもそもそんな選択をしなくていい社会にしていかなくてはならない。そのためには、避妊についての教育が不可欠である。

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