ラブピースクラブはフェミニストが運営する日本初のラブグッズストアです。Since 1996

仕事と介護のせめぎ合い

深井恵2020.07.17

Loading...

母が退院し、高齢者施設に入所した。抗がん剤治療をしていく上で、「足元のふらつきがあるため、見守りをして転倒防止をする必要があること」「よく噛まずに食べるので、胃に負担がかかって嘔吐のリスクがあるため、食の管理をして、おかゆと軟菜食を摂取すること」の2つの条件が示されたのだ。
この2つの条件を満たした生活を送るには、認知症を発症した母の一人暮らしには無理があるとのことで、高齢者施設の入所を選んだ。選択肢として「同居」を求められる場面もあったが、フルタイム労働しながらの同居に「転倒防止すること」ができるはずもなく、同居はお断りした。抗がん剤治療は2週間に1回。施設側が対応可能なのは「月に2回の通院」と言っていたので、施設の看護師が病院に母を連れて行ってくれるよう手はずを整え、安心していた。しかし、事態は違った。

「月に2回の通院」のカウントの仕方が、こちらの考えていたものと違っていた。2週間に1回の通院だから、月に2回、施設側が連れて行ってくれるのだと思っていたら、施設側のカウントは「行きで1回、帰りで1回」。つまり、1回の通院で2回のカウントになるという。抗がん剤治療は当初、「金曜日に入院して、日曜日に退院」という計画だった。「月に2回」の施設側の条件を満たすには、金曜日の入院を施設側に託し、日曜日の退院を私が引き受けるしかなかった。「これからしばらくは、日曜日が拘束されるなぁ」と思っていた。

ところが、退院直前のカンファレンスの時、「治療後の様子を見たいので、月曜日に入院して木曜日に退院」と突然提示された。「えー、そんな話、聞いてないよ。入院も退院も平日なんて、いったい誰が了承した?!」と思い、「入院か退院のどちらかを週末にしていただかないと、こちらは対応できません」と即座に伝えた。すると、「では、月曜日に入院して土曜日に退院にしましょう」ということで落ち着いた。しかし、ほっとしたのもつかの間、ソーシャルワーカーから次の一言があった。「ただし、入院手続きに、月曜日のうちに娘さんに来てもらわなければなりません」。結局、月曜日も自分が病院に行く必要があるのか……。施設側に母の入院を頼む意味がある? 二度手間では? さまざまなことが頭をよぎった。

私:「月曜日のいつまでに手続きをする必要がありますか?」
ソーシャルワーカー:「17時15分までです」

月曜日の入院は午前10時までにすまさなければならない。月曜日に自分で母を病院に連れて行くには、授業措置をして、有給休暇を3時間は取る必要がある。いや、一度出勤して1時間働いた後、母を施設に迎えに行けば、2時間の有給休暇で間に合うか。それでも授業措置をする必要がある……。やはり、施設側に入院時の対応を依頼することにした。入院手続きだけなら、1日の授業が終わった後、1時間の有給休暇取得で間に合わせることができる。勤務時間終了直後に職場を出れば、有給休暇を取らなくても、ギリギリ17時15分に間に合いそうだ。

そんなこんなで、施設から入院しての母の抗がん剤治療が始まった。初回なので、余裕を持って1時間の有給休暇をとって入院手続きにのぞんだ。ついでに、請求書が届いていた前回の入院中のレンタルパジャマ(病衣)のお金を支払いにも行った。病衣の受付は、17時まで。そこで、ふと「今回の再入院の病衣の手続きはどうなっているのだろう」と気づいた。病衣の受付の人に事情を説明した。すると病棟の看護師に内線電話で確認してくれると言う。看護師に確認してもらったところ、今日の分の病衣は必要ないけど、明日の分から必要だとのこと。1時間の有給休暇をとってのぞんで正解だった。17時の受付に間に合ってよかった。手続きを終えて、病衣のミッション完了。

すると、病衣の受付の人から、看護師からの別件の伝言があった。「トレーニングパンツ(紙おむつ)がないから用意してほしい」とのことだった。入院時に、施設側が入院中の紙おむつも施設から持ってきてくれていると思っていたら、違った。入院手続きの後に、紙おむつを買いに行って、再び病院に戻らなければならなくなった。病衣レンタルのところで、紙おむつの販売もしていたのだが、割高なのと、市町村の介護用品の受給資格手続きの領収書を添付する専用冊子を自宅に置いていたため、冊子を取りに戻って紙おむつを買いに行く必要があった。

新たに発生した「紙おむつミッション」を胸に、入院手続きに臨んだ。同意書その他含めて7枚程度の書類が用意されていた。患者の名前に生年月日、住所、身元引受人の名前、住所、職業、連帯保証人の名前、住所、職業……。すべて書き終わるのに20分以上かかった。この書類、2週間に1回、毎回同じことを書くのか?!

「勤務時間終了直後に職場を出れば、有給休暇を取らなくても、ギリギリ17時15分に間に合いそうだ」の夢は、もろくも打ち砕かれた。病衣のレンタル手続きのことも考えれば、抗がん剤治療ごとに1時間の有給休暇取得はやむを得ないのか。

17時15分ギリギリに来て、20分以上かけて書類作成をすれば、窓口担当の人の残業につながる。それは避けたい。そのためには、もっと早く到着する必要がある……。こんな状態だから、介護離職する女性やフルタイム労働をあきらめてパートタイム労働に切り替える女性が多いのではないか。こんな形式的な書類に仕事を奪われるなんて、おかしくないか。

不本意な「紙おむつミッション」にイライラしていた私は、入院手続きの担当者に聞いた。「この書類、毎回書く使用があるんですか?」

担当者:「はい。入院のためにお願いしています。ただ、次の入院が決まっていたら、事前に書類をお渡しして、前もって記入していただくことができます。日付が確定していなければ、日付のところは空けておいてかまいません」。

何だ、言ってみるもんだ。入院手続きの用紙を事前に記入できるのなら、こちらが事前に記入しておいて、施設の人に入院の時に持っていってもらって入院手続きを行うことができる。病衣のレンタル手続きも、17時までにたどり着かなくても手続きできないか、看護師に相談してみよう。

きっと自分の他にも、仕事と介護のせめぎ合いの中で、奮闘している人たちはたくさんいるはずだ。気づいた人が声を上げる。一歩前進して、働きやすさ・介護のしやすさにつながるかもしれない。

Loading...

深井恵(ふかい・めぐみ)

九州某県の高校日本語教員。
日教組の「教え子を再び戦場に送らない」に賛同して組合加入。北原みのりさんとは、10年以上前(ジェンダー・フリー・バッシングがひどかった頃)に組合女性部の学習会講師をお願いして以来の仲。

RANKING人気記事

Follow me!

  • Twitter
  • Facebook
  • instagram

TOP