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【新連載】オーロラ日記 第一回 「クジラと出会う」

あずみ虫2025.05.15

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《編集担当より》
新連載「オーロラ日記」がはじまります!
このコラムを書いてくださるのは、イラストレーター・絵本作家として活躍するあずみ虫さん。
ラブピースクラブHPのアートワーク、商品パッケージや書籍の装画など、長年にわたりブランドの世界観を支えてくださっている、大切なアーティストです。

そんなあずみ虫さんは、毎年アラスカと日本を行き来しながら暮らしています。
この連載では、アラスカでの暮らしのなかで心に残った風景や想いを、あずみ虫さんの言葉で届けてくれます。
大自然に包まれながら静かに始まっていくあたらしい日々を感じていただけたら嬉しいです。

第一回は、海でのちょっと特別な出会いのお話。さあ、一緒に旅してみませんか?



「クジラと出会う」

南東アラスカ・シトカの海には、クジラ、シャチ、トド、ラッコなど、たくさんの海洋動物が生息しています。
私は彼らに会いたくて、海岸からパドルボード(サップ)で、向かいの小さな島へと漕ぎ出しました。



島のまわりでパドルを漕ぎ進めていると、どこからかブシュー、ブシュー…と、クジラが潮を吹く独特な音が聞こえてきます。期待に胸膨らませながらあたりを見まわすと、前方に大きなクジラの背中が現れたのです。グレーの体に白い模様…コククジラです。



コククジラは大きく円を描くように岸辺を泳ぎまわっていて、どうやらコンブに産みつけられたニシンの卵を食べているようです。私はクジラを驚かせないようにパドルを漕ぐのをやめて、ボードに座って観察しました。



クジラは自由に泳ぎまわり、いったん海に潜ると次はどこに現れるかわかりません。興奮しながらあたりを見まわしていると、ザバッという水しぶきとともに、恐竜のような巨大な背中が、手が届くほど近くに現れ、驚いている私の足にクジラのヒレが軽く触れたのです。感動で胸が熱くなりました。

私は毎年、一年の半分をアメリカ北部のアラスカで暮らしています。
アラスカへ行くきっかけとなったのは、20年数年前に読んだ一冊の本でした。写真家・星野道夫さんの「イニュニック生命」に綴られた、アラスカの大自然と、そこに暮らす野生動物や人の姿に魅了され、いつかアラスカに行きたいと、ずっと憧れていました。

転機となったのは8年前。その頃、イラストレーションの仕事が減ってしまい、漠然とした将来の不安を抱えていました。
40才を過ぎても結婚せず子どももいない自分は空っぽのような気がして、何か新しい世界を取り入れなければと危機感のようなものを感じていました。それがアラスカへ行く決心につながったのです。

絵本の仕事をいくつかやっていたこともあり、野生動物の絵本をつくりたい、そのために3ヶ月間アラスカに滞在して野生動物を観察するという目標をもって、アラスカへの旅を計画しました。
アラスカの知識はほぼ無く、海外旅行の経験もあまりなく、英語は話せずお金もない。
無い無い尽くしのため一年間の準備期間をもって、ついにアラスカへと足を踏み入れ、この3ヶ月間の旅が私の人生を大きく変えることとなったのでした。

《つづく》

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あずみ虫

あずみ虫(あずみ虫)

イラストレーター・絵本作家。
1975年神奈川県生まれ。安西水丸氏に師事。
アルミ板をカッティングする技法で絵本、書籍、広告などで活躍。
現在はアラスカと日本を行き来しながら、創作活動をおこなっている。
絵本に「ホッキョクグマのプック」(童心社)、「ぴたっ」(福音館書店)、「よかったなあ」(詩 まどみちお・理論社)など。
講談社出版文化賞さしえ賞、 絵本「わたしのこねこ」(福音館書店)で産経児童出版文化賞美術賞を受賞。
絵本「アザラシのアニュー」(童心社)が2024年の青少年読書感想文全国コンクール「課題図書」に選定。

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