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「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」という女性蔑視発言によって、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)が辞職に至った過程は、フランスでも報道された。フランスの論調は、事実を淡々と伝えるニュースをのぞけば、私の見る限り、この機会に日本の女性差別的状況をあぶりだすという傾向があるものだった。
安心してほしい、と言うと語弊があるが、フランスでも政治家その他の女性差別発言はある。それがスキャンダルになり制裁を受ける。なので、特に日本のことを知らないフランス人にしてみれば、わりと普通のことが起こったまでなのだろう。日本通のジャーナリストたちだけが、「今までにないことだ」「女性たちが声を上げた」と注目したようだ。

おそらくフランス人の中で誰よりも日本のことに詳しいだろう「ル・モンド」特派員のフィリップ・ポンスは、政治家がこのような発言をするのは初めてではなく、すっかり慣れっこになっているが、「世論がこれほど激しく攻撃して辞職に至らせたのは、初めてである」と書いた。
ポンスと同じル・モンド特派員フィリップ・メスメールは、発言直後に立ち上がった辞任を求める署名やボランティアの辞退について触れて、その批判の強さを伝えている。しかしそれと同時に、日本社会の男尊女卑に問題があると指摘して、管理職女性が8パーセントにとどまることや、2020年、日本が男女平等に関して、153カ国中121位であること、#MeToo 運動も日本では他国より活発でなかったなど、背景を詳述している。ついでにコロナで女性の自殺者が増えたというニュースも大きく盛り込んだ。

「20minutes」の記者、ジャン=ルー・デルマスは、「10年前であったら、森喜朗は辞任に追い込まれただろうか?」という疑問で記事を始めている。森会長の発言は失言でもなんでもなく、この御仁は今までも何度も同様な発言をしていて、今回初めて詰め腹を切らされたのだと強調しているのだ。
しかし、フェミニズム革命が起こるのではというジャーナリストの問いに対して、取材を受けた2人の専門家は否定的に答えている。戦略研究基金アジア部のヴァレリー・ニケは、日本は性的分業の思想が他の近代社会よりもしつこく残っている伝統的な社会だと分析している。また老人支配社会でもあり、50歳以上でないと影響力を振るうことができない。若い世代の影響力があらわれるのはかなり先になるだろうと言う。もう一人の知日家エレーヌ・ランスロと共に、森会長を辞任に追いやった力は、フェミニズムよりも外国とスポンサー企業の反応であるとしている。

「フランス・アンフォ」のスポーツ記者アポリーヌ・メルルは、この機会に、日本の女性が生きている性差別にスポットを当てた。日本在住のフランス女性や日本女性に取材し、さまざまな女性のコメントを取り上げながら、性差別は教育に根づいている、人々は日本の外の世界がどうなっているかを知らないので現状を疑問に思わない、年長者を尊重する社会なので新しいことが行われない、#MeToo運動も日本では他国より活発でなかったなどの点が指摘されている。日本人女性のインタビューを通して、「日本女性は男を手のひらで踊らせることができている。性差別はない」という意見も紹介しており、日本で働いた経験のあるエレーヌ・ランスロも、日本では役割分担があるが、西洋のものさしで測っては事実を見誤るという意見を表明している。
たしかに、家計の管理が妻に任されている日本の主婦の地位は、持参金まで夫の管理下に入り、働くにも夫の許可が必要だった、1960年代までのフランスの主婦とまったく同じとは言えないだろうけれども、だからと言って「性差別がない」というのは無理があるのではないか。同じ記事の中で、東洋文化研究所の研究者クリスチーヌ・レヴィは反対の意見を表明して、女性が子どもを持つと同時に仕事を辞めてしまうこと自体が性差別のあらわれであり、「役割分担を認めることは、この社会の構造を認めてしまうことだ」と言う。
その他、東大生に占める女子学生の割合が18パーセントで、それはもともと受験しようとする女子が少ないことを反映していることや、2018年に発覚した医大の女子受験生差別、マタニティーハラスメント、保育園に子どもを入れるのがよく思われないこと、育児休暇を取って復帰しても元の職に戻れないことなど、女性に不利な状況が列挙されており、こうして一望すると、なるほど日本が女性の権利において遅れていることは明らかである。

しかし、周回遅れであろうとなんであろうと、森会長を辞任に追い込むことはできた。たしかに、こんな暴言を許しておいては世界に注目されたときに恥ずかしいという場面になって初めて、こういう人を辞任させることができたのであり、以前にも何度とあった性差別発言は、すべて制裁もされずに通って来てしまったというのはその通りだ。
しかしそれでも、これはやはり大きな一歩だったと私は思う。トヨタやアサヒビールが、企業イメージの低下を恐れたからにしても、女性蔑視発言を看過してはいけないということに気がついたことはとても大きなことだ。署名運動やネット上の辞職を求める声が、直接、辞職をうながしたのでないとしても、その声がこの動きを呼んだとは言えるだろうと思う。

フランス人の目から見ると、とてつもない遅れにしか見えないかもしれないけれど、日本の女性をめぐる状況は、ここ数年で変わってきていると私は思う。諸外国より#MeToo運動のインパクトが小さかったのは事実でも、なかったわけではないし、実名でレイプ被害を明らかにし、裁判を闘った伊藤詩織さんへの支持はじわじわと広がった。性暴力反対のフラワーデモも全国に広がっている。こうした動きを担っている若い世代には、以前とは大きく違うものがある。なにより、女性たちは仕事をし続けるようになった。退職しない女性は現在半数を超えた。半数も辞めていると言うこともできるけれど、確実に増えている。2011年には38パーセントだったのだ。それに、たくさんの、子どもを持たずに働き続けた女性たちがいる。それは女性のおかれた不幸な状況を反映するものであったかもしれない。けれど、その一方で、定年退職まで勤め上げるという女の人生モデルを彼女たちは作ったのだ。

ともかく森会長を辞職させることができてよかった。フランス人の目にありふれた光景になってよかった。辞職させられなければ、そのときこそは驚異の目で注目が集まっただろう。次は後任が女性になるかどうかだ。私は個人的には、震災の復興もかなわず、原発事故の後遺症も続く中、コロナの蔓延する現在、また新たな地震災害すらあって、オリンピックそのものを中止するべきだと思っているから、何が何でもオリンピックをやりたいと考える人々が立ててくるだろう人物は、女性であっても特にうれしくはない。それでも女性を立ててくるのであれば、森会長の差別発言への反省は共有されたということになるだろう。

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中島さおり

中島さおり(なかじま・さおり)

エッセイスト・翻訳家
パリ第三大学比較文学科博士準備課程修了
パリ近郊在住 フランス人の夫と子ども二人
著書 『パリの女は産んでいる』(ポプラ社)『パリママの24時間』(集英社)『なぜフランスでは子どもが増えるのか』(講談社現代新書)
訳書 『ナタリー』ダヴィド・フェンキノス(早川書房)、『郊外少年マリク』マブルーク・ラシュディ(集英社)『私の欲しいものリスト』グレゴワール・ドラクール(早川書房)など
最近の趣味 ピアノ(子どものころ習ったピアノを三年前に再開。私立のコンセルヴァトワールで真面目にレッスンを受けている。)
PHOTO:Manabu Matsunaga

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