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「女性活躍推進法案」&「残業代ゼロ法案」は、「男女雇用機会均等法」&「労働者派遣法」と同じ関係?!

深井恵2015.02.12

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昨年、NHKの番組「クローズアップ現代」「NHKスペシャル」で取り上げられた女性の貧困の実情を見て衝撃を受けていたのだが、その書籍『女性たちの貧困 “新たな連鎖”の衝撃』(NHK「女性の貧困」取材班著 幻冬舎発行)と『最貧困女子』(鈴木大介著 幻冬舎新書)を読んで、さらなる衝撃を受けた。テレビ番組ではあまり触れられていなかった、性産業と女性の貧困との関わりが多くの紙幅を割いて語られていた。
「女性の貧困」は見えづらい。「年越し派遣村」に女性はほとんど行かなかった。その頃から、貧困女性は性産業にとりこまれていると言われていたが、「女性の貧困」を可視化するのは難しかった。『最貧困女子』では、貧困女性の痛みや苦しみを可視化しようとしている。
『最貧困女子』に登場する、「見えない存在」としての女性は次のようなケースだった。「初めての売春は小学5年生。『身体が売れなくなったときが死ぬときだ』と言う、身体中に虐待の傷跡をもつ16歳少女」「風俗店に次々と面接落ち。携帯の出会い系サイトに書き込みをし、一晩5000円で売春こともあったシングルマザー」「知的障害を抱える母親のもとを家出し、同じく知的障害をもつ姉とふたりで売春を続けた少女」「街娼する母親のもとに生まれたが、いまは売春で得た金で母と弟たちを養っていると誇らしげに語る中学3年生」
1985年、男女雇用機会均等法が施行された。と同時に、労働者派遣法が改正されていた。「平成24年就業構造基本調査」によると、若年女性の非正規雇用の割合は、1992年には24.9%だったのが、2012年には47%まで跳ね上がっており、この20年間でほぼ倍増しているという結果だ。男女雇用機会均等法は働く女性に何をもたらしたのか。男性の労働に制限をかけて長時間労働の抑制をするどころか、女性の深夜残業等の制限をはずし、家庭を顧みずに働ける、能力のある女性を登用して、「男性並」に働けるようにした。その一方で、女性労働者の非正規化を進めていった。労働者の非正規化は、今日では男性にも及んでいる。
食料品店やカラオケ店等のパート労働では時給が安いため、自立して生活していくには、ダブルワーク、トリプルワークを余儀なくされている。昼間の仕事だけでは生活していくに足る賃金を得ることができずに、夜は別の仕事に従事する若年女性。以前新宿のレディースバーに飲みに行った時に、「昼間は別の仕事をしている」と語っていたスタッフが何人もいたことを思い出した。当時私は、貧困と繋げて捉えてなどいなかった。昼の仕事の後に深夜まで働く、体を酷使しながらの日々。それでもカツカツの生活。「働く単身女性の3分の1が年収114万円未満」という。そこへ、時給の高い、手っ取り早く稼げる仕事として、性産業が選択肢として浮上する。
性産業は「ワンストップ」で問題を解決してくれると語るシングルマザー。仕事を求め、部屋を借り、託児所を探し・・・これら一連の手続きを公的機関で済まそうと思えば、何カ所にもわたって担当部署を巡らなければならない。その苦労をしても、十分な社会保障を必ず受けられるとは限らない。社会福祉崩壊の受け皿の一つとして、性産業がセーフティネットとなっている現状がある。性産業の中には、仕事と住居と託児所をワンストップで提供してくれるものもあるという。性産業経営者の中には、「シングルマザーは子どもを育てるために生活がかかっているから、時間を守ってきっちり働くので重宝している。サービスもいいとの客からの評判だ」と語る者も。
しかし、性産業のセーフティネットを受けるには、若くてスタイルもよくて、心身ともに健康である必要があり、それがなければ、性産業のセーフティネットからもこぼれ落ちてしまう。「障害」のある女性は、「健常」な女性ならとてもできそうにない暴力的な現場で働かされるリスクも高い。『最貧困女子』に登場するAVのモデルプロダクション社長は「いわゆる三大NGの現場(ハードSM、アナル、スカトロ)に(障害のあるAV女性は)いる。特にスカトロAVに出ている女優の半数は知的障害だ」「1980年代にはやったロリコン雑誌では、知的障害やダウン症などをかかえる小中学生の少女をヌードモデルにしていた」と証言し、多くは親が業者に売る形だったと語っていた。
若年女性の貧困は、将来の高齢女性の貧困問題に直結する。阪神淡路大震災の直後、街で売春をしていたとして逮捕された三人の高齢女性のことが小さな新聞記事になっていたことを思い出す。女性の労働に対する賃金を値切って労働を搾取し、性的にも搾取する日本社会とは何なのか。
安倍政権は、残業代ゼロ法案の成立もめざしている。成果があがれば、労働時間の長短に関係なく賃金を受け取ることが可能になる自己裁量制…と、耳触りはいいが、いくら残業しても残業代が支払われず、正規労働者の労働力が買い叩かれる結果となることは目に見えている。それは、正規労働者の「輝く」女性をまずはターゲットにして賃金を抑制し、最終的には、男性の正規労働者の賃金をも、値切っていくことが狙いではないか。かつて「男女雇用機会均等法」と「労働者派遣法」を同時進行させたように、「女性活躍推進法」と「残業代ゼロ法」を同時進行させる…そんな構図が透けて見えてならない。

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