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「女性の政治参加拡大の道は未だ険しく…」

打越さく良2016.06.13

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野党4党が「クオータ」法案を提出
 5月30日、民進党など野党4党が「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律案」を、また民進党が単独で「公職選挙法の一部を改正する法律案」を衆議院に提出したが、国会は1日で閉会してしまい、継続審議となった。各紙が「クオータ」法案などと報じていることから、「お、法律による議席割当制とか、候補者クオータ制とかのこと!?」と盛り上がりそうになる。

クオータ制は政治に多様なニーズを反映させる仕組み>
 世界各国で様々なクオータ制が採用されている。たとえば、女性議員がなかなか増えないことからフランスが2000年に成立させたパリテ法は、小選挙区制がとられている下院議員選挙で政党の候補者を男女同数とすることと、比例代表制がとられる上院議員選挙では候補者名簿の登載順を男女交互とすることを定めるほか、下院議員選挙につき、男女の候補者の比率の差が2%を超えた政党に対する助成金を減額することとしている。フランスでは1990年代中盤までは国会議員に占める女性割合は10%を下回っていたが、パリテ法導入後は大きく増加しているという(男女共同参画白書平成23年版)。
 なお、未だに「クオータ制って、能力のない女に下駄はかせること?それだと議員の「質」が低下してしまわないか?」などという「危惧」を抱く人もいるかもしれない。それを口にするのが男性議員だったり世襲の女性議員だったりすると、「コラア、どんだけ下駄はいているか自覚がないのかっ。というか、そう言うあなたいったいどんな「質」ですかあっ」とドつきたくなるが、まあクールダウンしよう。
 女性議員が増えない理由や増やすべき理由については、この連載でも何度も紹介した三浦まり上智大学教授の解説を参考にしてほしい。政治資金集め等、男女格差がある中で、男女ともに「良質な議員」が生まれない。男女「ともに」というところがみそだ。カネも万全、地盤ばっちりという状況で、実は誰であろうと組織力で当選する。そんな状況こそ、「質」を低下させる。性別の違いほか、多様なバックグラウンドを持った議員が構成する議会では、社会保障等様々な政策について多面的な議論ができ、多様な当事者の意見を反映した政策につなげられる。政治の場で女性の割合を上げていくことは、性別を問わず私たちの多様なニーズを反映させることになる。

法案の中身は
 さて、「クオータ」法案と報じられた民進党など野党4党が提出した「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律案」クオータ制導入関連法案を衆院に提出を確認しよう。
 第2条第1項「政治分野における男女共同参画の推進は、衆議院議員、参議院議員及び地方公共団体の議会の議員の選挙において、政党その他の政治団体の候補者の選定の自由、候補者の立候補の自由その他の政治活動の自由を確保しつつ、男女の候補者ができる限り同数となることを目指して行われなければならない」。
 第4条「政党その他の政治団体は、基本原則にのっとり、政治分野における男女共同参画の推進に関し、当該政党その他の政治団体に所属する男女のそれぞれの公職の候補者の数についての目標を定める等、自主的に取り組むよう努めるものとする」。

 なんとささやかな…。「男女同数」を義務づけたのではなく、「できる限り同数になることを目指してほしいなあ、そうだといいなあ」程度の緩やかなものだ。目指さないと政治資金を減額する等のペナルティを課す、なんてこともない。しかし、単なる理念かあ、とdisってはいけない。理念だろうと、かくあるべしという方向性を掲げることは、まずは意義がある。
 民進党が単独で提出した公職選挙法の一部を改正する法律案クオータ制導入関連法案を衆院に提出は、いったい何を規定しているのかわかりにくい。要は、重複・同一順位の候補を「性別その他」でグループ分けして,グループごとに順番で当選を確定させる、ということらしい。しかし、シンプルに男女だけでなく「その他」が入り、男女交互名簿という趣旨が不明確になっている、重複候補の男女比が2:20みたいな状況では、単独比例候補を含めて男女交互にしなければ、大した効果がないだろう、というものではある(三浦まり教授より説明を受けた)。しかし、これまた、何もないよりはまし。前進がささやかであっても、応援したい。

「均衡」「均等」?「男女同数」こそ肝
 ん?そもそもクオータ法案は超党派の議連で検討していたのではなかった?なぜ野党だけ?5月25日、同法案について自民党はようやく初めての会合を開いたが、その席で、主として男性議員から「男女同数という言葉はきつい」として「均衡」への修正を求める意見が出たという(朝日新聞デジタル5月25日23時22分松井望美記者東京新聞5月31日朝刊)。男女同数という言葉こそ肝ではないか。そこをあやふやにしたら意味がない。いったい誰だ、こんな不見識なことを言い出す議員は(報道では特定されておらず残念)。閣僚を男女同数にした理由を問われて「…2015年だから?」と答えたカナダのトルドー首相が脳内をよぎり、その見識の著しい差にめまいがする(ハフィントンポスト2015年11月9日)。
 本来の理念を打ち砕くような不見識発言でもそれが与党男性議員が発したのであれば対処するというが、日本のオッさん政治。再度議連で話し合い、同数と均衡の間をとるとして「均等」での調整も図られたが、民進党など野党4党は「同数」、自民、公明、おおさか維新の3党は「均等」に分かれたという(上記東京新聞)。「間をとる」?「男女同数」は解釈の余地がない(=「きつい」)からいいのだ。間なんてない。女性の政治参加につきほんのささやかな前進であっても、「主として男性議員」(上記朝日新聞参照)が早速潰してくる。
 自民、公明、おおさか維新は「同数」を「均等」と修正した法案を準備し、秋の臨時国会への提出を目指すとか(上記東京新聞)。与党は、「男女同数」という言葉に強く抵抗したら、安倍政権の掲げる「女性の活躍」がいかに空々しいものかを露呈してしまうと心配にならないのか。本来の目的に立ち返り、「同数」に一致できるよう、党内を調整してほしい。

獲得目標を見失わずに
 と、今回の連載を終えようという朝、朝日新聞を開いたら、違和感のある記事にぶちあたった(2016年6月9日朝刊「女性議員増へ足並み乱れ」松井望美記者、田中聡子記者)。
 「超党派議連から「スタンドプレーだ」という不満の声が出る中」といった記事の論調は、「男女同数」という肝の言葉にNOと言い出した自民党男性議員を「それでは根本を崩します。そういうあなたのような頭固いオジさん議員に牛耳られた国会では多様な意見を反映できるわけない。だからこそこの法案が必要なんです!」とドつくのではなく、むしろその男性議員のしょーもない茶々に右往左往した情けない与党側に理解を示しているようだ。「スタンドプレー」なんて言葉も言ったもんがち。本質を見失った側こそ批判すべきなのに…。
 それにしても、この記事によれば(ご丁寧に、サブタイトルにまでなっている。ほかの見解も表明されたはずだが)、「男女同数」を維持した野党議員に、女性団体が開いた院内集会で、感謝のエールではなく、「政争の具にするのは、もうやめてください」という野次が飛んだとか。悲しすぎる。もちろん、クオータ法案を求めて運動してきた女性団体には頭が下がる。野次をした人は、疲れ切っていたのではないか(よくわかる)。しかし、ここにきて根本を揺るがす妥協を許すべきではない。「もうやめてください」とヤジるべき相手は違うはずだ。
 そしてこのような与党男性議員のしょーもない茶々に対処した用語置き換えへの批判ゼロの記事を書いたのが、2人の女性記者ということにも、しんみりする。大新聞の政治部で、女性記者でも男性中心の政治を当然視してしまうのだろうか。おっといけない。ひたすら暗くなる。
 なぜ「男女同数」?2016年だから。当然でしょう、とあっさり答えらえる社会にしたい。そうですよね。みなさん。

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打越さく良(うちこし・さくら)

弁護士・第二東京弁護士会所属・日弁連両性の平等委員会委員日弁連家事法制委員会委

得意分野は離婚、DV、親子など家族の問題、セクシュアルハラスメント、少年事件、子どもの虐待など、女性、子どもの人権にかかわる分野。DV等の被害を受け苦しんできた方たちの痛みに共感しつつ、前向きな一歩を踏み出せるようにお役に立ちたい!と熱い。
趣味は、読書、ヨガ、食べ歩き。嵐では櫻井君担当と言いながら、にのと大野くんもいいと悩み……今はにの担当とカミングアウト(笑)。

著書 「Q&A DV事件の実務 相談から保護命令・離婚事件まで」日本加除出版、「よくわかる民法改正―選択的夫婦別姓&婚外子差別撤廃を求めて」共著 朝陽会、「今こそ変えよう!家族法~婚外子差別・選択的夫婦別姓を考える」共著 日本加除出版

さかきばら法律事務所 http://sakakibara-law.com/index.html 
GALGender and Law(GAL) http://genderlaw.jp/index.html 
WAN(http://wan.or.jp/)で「離婚ガイド」連載中。

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