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多様な人々をリスペクトする社会でありたい

打越さく良2018.11.12

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トランスジェンダーの人々を尊重する政策を撤回
ドナルド・トランプが大統領になるときに何が起こるのだろう。アメリカの魅力といえば、多様性だったはず。それは幻なのか。多様性にむしろ背を向けて、ひとりひとりをありのままに尊重しない社会に転換してしまうのではないか…。あのときよぎった不吉な予感は残念ながら、現実になっていく。
そのひとつが、トランスジェンダーの人々を尊重する政策を次々と撤回していること。2017年6月、トランスジェンダーの人々の新兵募集を半年間延期し、同年7月26日、トランプはトランスジェンダーの人々の入隊を拒否するものとした。オバマ前政権が2016年に下したトランスジェンダーであることを公言している人々の軍入隊を認める決定を転換したものである(「トランプ米大統領 トランスジェンダーの軍入隊禁止を表明」 )。

 2018年10月21日に、ニューヨークタイムズは、トランプ政権が「「生まれ持った性器によって決定された性別は変更不可能である」という方向で、性別の定義の統一を検討していると報じた。オバマ前政権が、教育や保健医療などの分野でジェンダーの法的概念を緩めてきたことの転換かと危ぶまれる(「トランスジェンダーの排除、トランプ政権が検討。ニューヨークタイムズが報道」)。

 しかし、救いなのは、このような動きに抗するアクションがあることだ。11月1日、Apple、Amazon、Facebook、Googleなど、テクノロジ企業数十社が共同でトランスジェンダーへの差別を非難する声明を発表した。声明は、トランスジェンダーや、ノンバイナリージェンダー、インターセックスを自認する人々が、「すべての人に与えられるべき敬意と品位をもって扱われる」よう求め、裁判所が認めた権利を奪おうとするあらゆる取り組みに反対する内容だという。

中間選挙 移民を「脅威」
 米国の中間選挙(11月6日実施)では終盤に入り、共和党候補者を応援するトランプ大統領が移民集団が安全保障の「脅威」であると強調するようになり、候補者も同調するようになったという(「焦点 米中間選挙で「トランプ化」進む共和党、移民攻撃に同調」)。10月31日にはトランプはメキシコとの国境沿いに1万人から1万5,000人規模の軍隊を派遣する意向を示しもした。メキシコとの子どもたちを含む移民集団のどこが安全保障の「脅威」なのか。それで共和党が盛り返すとしたら、どんな悪夢なのか。まさか。と思っていたら、選挙前にも既に、ヘーゲル元国防長官が米軍派遣を「バカげている」「最先端の訓練を受けている米軍が、必要もない、脅威もない国境に送られるなんて、まるでジョークだ」とインタビューで述べるなど、軍や国防総省の元高官から批判の声が上がったと報じられ(「米中間選挙2018 「まるでジョークだ」移民対応のための米軍派遣に批判」)、少し安堵した。

女性蔑視に抗して
 さらに、トランプが米連邦最高裁判事候補として指名したブレット・カバノー氏に、高校生、大学生のころ性暴力をふるわれたとの複数の女性が名乗り出たにもかかわらず(「全米騒然 米差高裁判事候補が10代に起こした性暴力疑惑 過去をかばい合うエリート男性たち」 https://mainichi.jp/articles/20181104/k00/00m/030/072000c )、米議会は10月6日、1881年以来の僅差の賛成50、反対48とはいえ、承認した(「米司法の保守色強まる カバノー最高裁判事が就任」)。米連邦最高裁判時には女性に暴力をしたことがない人物になってほしいという願いを冷笑するかのように。トランプは告発した女性を揶揄しさえした(「トランプ大統領 性暴力疑惑の告発女性2人をやゆ」 )。今さら驚くべき事ではないか。そもそも、トランプ自身、「女性蔑視語録」が集められるほどの人物なのだから(「トランプ氏の女性蔑視語録「スターなら女はやらせる」「女は35歳まで」」 )。

 女性の権利も一層後退するのではないか。そんな不安に呆然としていないで、立ち上がる女性たちも多かった。上下両院と州知事候補に史上最多の女性たちが立候補したのだ(「米中間選挙 女性候補、史上最多 差別的トランプ氏に反発」)。

排除より多様性
 そして結果は。史上最多の女性たちが当選。その中には2人のムスリム教徒の女性たちがいる。そのうちのラシダ・トレイブ氏はパレスチナ移民の娘、もうひとりのイルハン・オマール氏はソマリア難民の娘だ。先住民の女性として初の下院議員となったデブ・ハーランド氏は、レズビアンでもある。コロラド州知事に民主党から当選したジャレッド・ポリス氏は、ゲイであることを公表している。下院は民主党が多数となった(「米中間選挙 女性が最多、ムスリム・先住民・同性愛者も 米中間選挙」)。

 排除より、多様性こそ。そんなアメリカの人々の声が聞こえるではないか。若者、女性が多く投じたという(「期日前1.5倍、動いた女性・若者 これもトランプ効果? 米中間選挙」)。たかが一票、されど一票。私たちには選択できる力があるのだ。

 移民たちが下院議員になり、アメリカに多様性をもたらす力になる。
 と。今国会では、入管法改正での外国人労働者受け入れ拡大を移民だとか移民でないとかいう議論が。「移民政策ではない」と必死になって言うべきことだろうか。私たちは既に共生している。しかし、歴史的背景も学ぼうとしない在日朝鮮人に対する差別や、外国人実習生への人権侵害が問題になっている。少子高齢化で労働力不足だから来て欲しい、しかし居着いてほしくない。そんな勝手なことがあるだろうか。多様な私たちで共生したいではないか。小島慶子さんが指摘するように、受け入れる側の議論だけではなく、受け入れられる当事者の視点にも立ちたい。そんな社会こそ豊かなはずだ。

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打越さく良(うちこし・さくら)

弁護士・第二東京弁護士会所属・日弁連両性の平等委員会委員日弁連家事法制委員会委

得意分野は離婚、DV、親子など家族の問題、セクシュアルハラスメント、少年事件、子どもの虐待など、女性、子どもの人権にかかわる分野。DV等の被害を受け苦しんできた方たちの痛みに共感しつつ、前向きな一歩を踏み出せるようにお役に立ちたい!と熱い。
趣味は、読書、ヨガ、食べ歩き。嵐では櫻井君担当と言いながら、にのと大野くんもいいと悩み……今はにの担当とカミングアウト(笑)。

著書 「Q&A DV事件の実務 相談から保護命令・離婚事件まで」日本加除出版、「よくわかる民法改正―選択的夫婦別姓&婚外子差別撤廃を求めて」共著 朝陽会、「今こそ変えよう!家族法~婚外子差別・選択的夫婦別姓を考える」共著 日本加除出版

さかきばら法律事務所 http://sakakibara-law.com/index.html 
GALGender and Law(GAL) http://genderlaw.jp/index.html 
WAN(http://wan.or.jp/)で「離婚ガイド」連載中。

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