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テロは口実で、本当の目的は、経済と社会を支配すること ~スノーデンからの警告~

深井恵2017.04.13

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想定外に、この春の人事異動で自宅からかなり遠くの高校へ赴任した。いままでの職場では、通勤時間が車で10分のところに住んでいたが、今度の職場は高速道路を利用して1時間近くかかる。職場に近くに引っ越すことも考えたが、職員の半数ほどが、高速道路通勤を利用しているということを聞き、引っ越すのも面倒なので、少し早起きして今住んでいるところから通うことにした。

距離にして、毎日往復100㎞ほどの運転だ。高速道路通勤を、車は大喜びしてエンジンを動かしている。高速道路を通勤してみて感じたのは、「一般道を同じ時間運転するより、意外と楽だ」ということ。合流地点は何カ所かあるが、交差点はないし、信号もない。自転車もいないし、歩行者もいない。そのため、神経を使わなければならないポイントが少なくてすむ。しかも、ほとんどの経路が片側一車線だから、複数の車線がある道路と違って、四方八方に神経を張り巡らさずにすむ。

その一方で、高速道路通勤で面倒なのは、事前にETCマイレージサービスへの登録と、ETC利用照会サービスへの登録を必ずしなければならないこと。加えて、ETCの割引時間帯の制限があること(通常の通勤時間の割引率と、それ以外の時間帯での割引率が微妙に違う)と、高速道路を利用するたびに写真を撮られてしまうこと。

顔と車のナンバーの写真を自動的に毎日2枚撮られてしまう。仕方がないことだが、気分のいいものではない。カメラにむかって「あっかんべえ」をするか、にっこり笑顔でピースサインをして馬鹿にしてやろうか・・・などと、くだらないことを考えてしまった。いや、下手にピースサインをしてカメラに写ると、指紋も撮られかねない時代になっているらしいから、それはやめておこう。

先週、大学時代の友達とお花見ドライブに行った。日常から離れた場所でのお花見ができて、気持ちもリフレッシュできた。通ったことのない山道を走らせるドライブ。帰り道、スマートフォンのマップ機能を使って、道案内をさせてみた。

いま自分のいる場所が示され、自宅までのルートと所要時間が即座にわかる。確かに便利だが、「気持ち悪い」と背筋がゾクッとした。調べようと思えば、何月何日何時にどこにいて、どの道を通ったか、全て把握されているという不気味さ。しかも、誰に把握されているのか、相手の姿はこちらには全くわからない。

国会で共謀罪(テロ等準備罪?)の審議が始まった。「一般の人が監視の対象になることはあり得ない」そうだが、何をもって「一般の人」というのか。「一般の人」が、「テロ等の準備をした」と判断されたら、その人はもう「一般の人」ではなくなるのかもしれないが、「一般の人」が、いつ「テロ等の準備をする」かどうかわからない以上、常に「一般の人」を監視していなければならないのではないか。

2,3週間ほど前のTBS「報道特集」で、昨年6月に東京大学で行われた、元CIA職員のエドワード・スノーデンの講演の様子が報道された。不特定多数の人々の情報を監視する立場にあった彼の言葉には、ずしりと重みがあった。

いわく「監視活動に関与している当局者が一番よく口にするのは、『隠すことがないのなら、恐れる必要もない』ということです。これは第二次世界大戦中のナチスのプロパガンダの言葉と同じものだということを理解することが大事です。テロは口実で、目的は経済と社会を支配すること。僕が守っていたのは、政府の覇権だけでした」

いわく「権利というのは少数派を守るために存在します。権利はそれぞれの違いを守るために存在します。プライバシーがなければあなたはあなたではなくなってしまう。社会があなたを見張り判断し、社会があなたの生き方に口を出します。プライバシーはあなたがあなた自身で決め、あなた自身でいられることを保証してくれるもの」

先月、最高裁判決は、警察が令状なしのGPS捜査を行っていることに対して、「違法」の判決を下した。裁判所から「違法」と言われるまで、捜査当局は問題ないと考えていた。本人の知らないうちにGPSを取り付けられていたのは、容疑者の車だけでなく、事件に関係のない、容疑者の複数の知り合いの車にも及んでいた。しかも、GPS捜査をしていたことについて、秘密にするよう指示していたことも明らかになった。

選挙事務所の私有地に不法侵入して、監視カメラを設置していた警察の事件が報道されたのは昨年のことだったか。その警察が持っていた監視カメラの台数は200台近くにのぼるとのこと。これは、一つの県警の所持する台数である。全国の警察でいったいどのくらいの監視用カメラを持っているのだろうか。警察ではすでに、「一般の人」を「監視すること」が当たり前なっているのではないか。「プライバシーの侵害」について、無自覚になっているのではないか。

先の最高裁判決は、いまの「監視」のあり方に一石を投じたが、今後、法整備がなされて、「合法的に一般の人を監視できる社会」がおとずれるのかもしれない。監視されている側は、監視されていることを意識しないまま日々の生活を営み、何かことが「起きそうになったら逮捕できる社会」が、すぐそこに待っている。そうなってからでは遅い。いま、共謀罪に反対する行動を起こさなければ、治安維持法が再来する社会を生きることになる。

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