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<寄稿>鈴木涼美さん 最悪のセックス・最高のセックス

鈴木涼美2015.01.15

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 週に6日くらいはビクビクと周囲の空気読んで生活している涼美ちゃんなので、たまには思いっきり空気読まない発言してもいいかなってことでしょっぱなから言わせてもらうと、ワタシ本当にセックスには大して興味がない。外イキも中イキもするし、それなりの相性くらいはまああるかなとは思うのだけど、基本的に体位なんて正常位だけでいいし、前戯もフェラチオと手マンくらいで十分だし、場所はベッドの上以外は面倒くさい。別に、今から一生セックスしちゃダメですと言われても、ワタシ全然困りません。


 ・・・いや、それなりに困る。それは、セックスしないとクリトリスが浮腫むとか、アソコがむずむずするとかそういう話ではなくて、オンナのワタシにとって、セックスは男に求められている、愛されてる証だと感じてしまうからです。隣にオトコの人がいて、ワタシが無防備にしていて、もし手を出されなかったら、なんとなく自分は求めるに値しない、魅力と価値のないオンナに思えてしまう。なんていったらなんて前近代的な、自分で自分の価値もつくりだせない、男性依存的な人間だとみなされるだろうか。でもしょうがないでしょ、どんなに頭で補正しようとしても、そう感じちゃう私の心は直らないもん。私にとっては、間に何が介在しようと、セックスってそういうものだ。


 セックスには2種類あって、一方は目的のあるセックス、もう一方は目的や意味がなんにもないセックスで、いわばセックス自体が目的であるものだ。かといって、その境目がそのまま、悪いセックスといいセックスを隔てるかといったら、全然そんなことはない。本当に時と場合と相手によるのだ。


 自分にとって、オカネもらうとか仕事もらうとかコイツの弱みを握るとか、しっかりした目的があるセックスだったとしたら、気持ちよかろうが気持ち悪かろうがある程度割り切れる。50万円もらって、なおかつ相手が顔も性格も良くて清潔でセックスも痛くなかったとしたら、文句なしにいいセックスだけど、顔が悪くていけすかないヤツでも200万円くれたらそれなりに達成感のあるセックスになる。自分に夢中な男がするようなそれなりに気持ちのいいセックスでも5万円しかもらえなかったら、ちょっと不完全燃焼だし、逆に、500万円もらっても、本当に傷つくようなセックスをされたら、後悔することもある。ただ、泣いても笑っても500万円は手元に残るので、あー辛かった、と思って次にいけばいい。


 問題は、目的も意味もないセックスの方。カレシとのセックス、ゆきずりのセックス、自分にとっては何のメリットもないセックス。こっちはダイレクトに満足と後悔に分かれる。本当に好きで好きでしょうがない人と初めてした時なんて、この世の中からお酒もタバコもシャネルもディオールもなくなっても、もう何も文句ないってぐらいに満足する。最高のセックスがどんなものかなんて、人生ようやく折り返した程度の、セックス歴15年にも満たない、しかもそんなに性的に積極的じゃない私には、到底判断できないけど、少なくとも私が今まで経験した中で最高のセックスは、ほんとにほんとに好きな人の大久保にある自宅に初めて行って、10分間だっこされて2回キスされて、その後前戯も何もなく、素っ気ない無印良品のダブルベッドの上で4分くらいで終わらせた、味気ないセックスだった。


 で、当然、なんとなく相手の押しに負けて、別に嫌いでも好きでもない人としちゃったりすれば、5回イッたとしても、なんか無駄な体力使っちゃったぜ、と思う。そういうセックスは、する度にちょっとずつすり減ってくような、何か膨大な損をしているような気分にさせられる。セックスは自分の価値を認識できる数少ない機会ではあるものの、する度に自分のレア感とか純潔さとか、手放してる価値だってあるわけで、目的も報酬もなく、したくもない相手としたら、うっかり間違った切符を買って2000円損した時のような感じがするのだ。


 だがしかーし。そんな無駄なセックスくらい、別にワタシたちの人生においては大したことないのだ。それこそ、間違ったチケット代2000円くらいには悔しいけど、その日1日ブツブツ心の中で文句を言えば、次の日には忘れはしないけど諦めがつく。だいたい、少なくともワタシが全然大してしたくもないのにコトが起こったということは、相手はそれなりにしたかったってことで、てことはワタシにはそれくらいの女としての値打ちがあるということだしね。


 本当に心が傷つくのは、自分にとっての最高のセックスが、相手にとってそうじゃない時である。自分にとって無目的で無意味だけれども何より価値があるセックスが、相手にとっては何か目的があるが故にセックス自体が目的じゃなかった時。ワタシにとって、セックスは自分が求められている、愛されてる証なのに、求められたり愛されたりする前に彼に別の目的があると知ったら、ワタシはその辺で平和に暮らす野良猫たちを蹴っ飛ばして歩きたくなるほど悔しい。


 大久保の家で、好きで好きでしょうがない人とした後、彼がワタシの元カレとすごく仲が悪いことが分かった。仲が悪いっていうのは、仕事上結構恨みがあるような関係で、ワタシはなんとなく、元カレへの腹いせとか嫌がらせとかそういうもののために抱かれたような気分になった。もしかしたら、内容が淡白だったのは、それだけで満足できるからじゃなくて、抱くことで元カレへの嫌がらせが完結するのであれば、内容が充実する必要がないからなのかもしれなかった。ワタシにとって最高のセックスだと思っていたものは、史上最悪にワタシを傷つけた最悪のセックスだった。


 セックスの行為になんて、ワタシは本当に興味が無い。そこに付随する意味こそ、ワタシを天国にも地獄にも連れて行く強烈さがある。

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