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「令和」となり、そしてまた一歩、戦争に近づいた

深井恵2019.04.11

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統一地方選挙が行われたが、選挙報道はほとんどされなかった気がしている。「全国一斉」というわけではなかったからなのか、選挙に注目させたくなかったからなのか。

道府県知事選挙が数多く行われた4月7日。一週間前の4月1日は、選挙戦が始まったにもかかわらず、新元号「令和」報道に明け暮れた。

新元号の発表日程が明らかになった時から、統一地方選挙を報道させない、絶妙なタイミングだと思っていた。

新元号発表以外にも、芸能人のガンの手術だとか、カルロス・ゴーンの一連の報道(これは、籠池さん夫妻の保釈と日程を合わせた感もあった)とか、選挙や厚生労働省の不正統計問題等から、国民の目をそらす報道が続いている。

新元号発表の報道で、菅官房長官が「令和」の文字を掲げた映像を最初に見た時、ゾクッと背筋に寒気が走った。「令」に「命令」「司令」の意味を感じ取ったからか、「和」に第二次世界大戦を連想させる「昭和」とのつながりを感じ取ったからか。

更に、「令和」が万葉集から取ったという報道を聞いて、「また一歩、戦争に近づいた」と震えがきた。理由は、大学時代に聴いた講義を思い出したことによる。

もう既に亡くなっている国語学の恩師が、講義の中で語られた内容だ。雑談として話をされた、第二次世界大戦に赴いた日本兵の話だ。当時の日本兵の多くが、戦地に『万葉集』を持って行ったという話だった。

内容の詳細は、残念ながら覚えていないが、「大和魂の源」とでも言えばいいだろうか、持って行ける数少ない荷物の中に、心のよりどころとして『万葉集』を忍ばせていたという話だった。

兵士の多くが、懐に『万葉集』を入れていたというお話だったから、『万葉集』の文庫本でも買って、戦地に向かったのだろう。命懸けで戦地に向かう、その心の支えとして『万葉集』が一役買ったのだ。

今回の元号改正で、「令和」にまつわる巻を含む『万葉集』が、本によっては売り切れたというから、多くの人が購入したことは間違いない。その『万葉集』を再び戦地に持って行く日が来るのだろうか。そんな日が来ないよう、次なる参議院選挙に臨まねばなるまい。

さて、新年度が始まり、今年度はクラス担任を外れてしまった。クラス担任から外れたのは5年ぶりだ。5年前にクラス担任から外れた時は、ちょうど夜間定時制の高校から全日制の高校に異動した時だ。生活リズムの急変を考慮して、担任業務から外してくれたのではないかと思っている。

5年前に外れた時は、「一年経てば、またクラス担任になるだろう」という確信があり、実際に翌年度クラス担任になって、3年間持ち上がった。だが、今回の「クラス担任外れ」は、「もしかしたら、二度とクラス担任をすることはないのかもしれない」という外れ方のニュアンスがある。

先月、卒業生を送り出した時、「これがクラス担任として卒業させた最後のクラスかもしれないなぁ」としみじみとした気分になっていたのも事実だ。実際、昨年度と一昨年は、学年の中で最年長のクラス担任だったし、学年主任も一つ年下だった。

退職の年になってみないことには、「最後のクラス担任」がいつになるかは不確定だが、50代のクラス担任はほとんどいない状況を見ると、もう二度とクラス担任はできないかもしれない。

いま思えば、クラス担任として「あんなこともしておけばよかった」「こんなこともしておけばよかった」と、後悔することが多々ある。そのような後悔は何もクラス担任の仕事に限ったことではないが。

今年度は、クラス担任を外れて学年主任になり、同じ学年のクラス担任には新採用者がいる。新採用者とは、つまり、初めてクラス担任をする教員だ。

新採用者を見ていると、初めてのクラス担任として、新学期初日に向けて何をどう準備すればいいのか、あたふたとしていた自分を思い出す。もう20年以上前の話だ。

自分が新採用の時に、同じ学年のベテランのクラス担任から「クラス担任としての新学期の準備事項」をわかりやすくまとめたワンペーパーをいただき、本当にありがたかった。

その時のワンペーパーをずっと大事に取っていて、今年度、新採用のクラス担任にコピーして渡した。新採用の方は、喜んでくれた。新年度の準備に忙しい春、少しでも役に立てたなら、幸いである。

生徒の春休み期間は、教員にとって、一年のうちで一番忙しい期間となる。時間割担当者は、既成のPCソフトでは作成できない、複雑怪奇な時間割を作り上げなければならない。

人事異動で人が入れ替わり、兼務する人や非常勤で時間と曜日に制限がある人、選択科目で同時に授業展開する複数の授業担当者。授業時間内に会議が設定されれば、その会議の時間には授業が入れられなくなり、時間割を修正しなければならない。

以前勤務した職場では、時間割作成に深夜までかかったり、土日に出なければならないことも多々あった。

特別活動担当なら、歓迎遠足などの学校行事に備えて、警察や国土交通省などの外部団体との連絡調整も、春休み期間から動き始める。外部講師を招聘するなら起案文書の作成に、発送・打ち合わせ等々、しなければならないことが山積みだ。

各種健康診断を企画する保健部は、春休みのもっと前から学校医などと連絡調整を始めて、春休み中の職員会議に備える。様々な分掌から出される職員会議資料は100ページ近くになる。

これらの様々な新学期準備を受けて、クラス担任は、生徒にわかりやすく確実に伝え、自分のクラスをスタートさせなければならない。もちろん、自分の授業準備も忘れずに。

しかし、授業以外の業務に追われて、一番肝心な授業準備になかなか辿り着けないのが現実だ。実際のところ、私も、今年度扱う教科書を、まだゆっくり読めないでいる。

今年度の、慣れない「学年主任」という立場は、新採用者をフォローする担任業務の下支えと、生徒とクラス担任がスムーズに教育活動ができるよう、他の分掌主任との連絡調整役だ。

手探りの仕事だし、クラスの生徒がいない寂しさもあるが、一クラス200人の担任になったつもりで、一人の生徒も「戦地」に行かせないつもりで、この一年臨もうと思っている。

「令和」になろうが、教え子を再び戦場に送らない。

 

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深井恵(ふかい・めぐみ)

九州某県の高校日本語教員。
日教組の「教え子を再び戦場に送らない」に賛同して組合加入。北原みのりさんとは、10年以上前(ジェンダー・フリー・バッシングがひどかった頃)に組合女性部の学習会講師をお願いして以来の仲。

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