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性暴力被害者を癒す何よりもの薬は、その人を孤独にしないこと

2019.08.30

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伊藤詩織さんが原告となっている訴訟の口頭弁論が開かれたその日、別の場所でひっそりと性暴力事件の民事訴訟の証人尋問がおこなわれました。

原告となった2人の女性はどんな被害に遭ったのかは、前回ご紹介しました。今回は告訴を決めた2人に、そこからどんなことが起きたかについて触れたいと思います。

原告のAさんと同じく原告で友人のBさんは、Aさんの上司のC氏に、3次会で訪れたバーの店内で下着に手を入れられました。その時2人はなぜか意識がなく、それぞれバーのソファで寝ていたそうです。

2人は日頃、何軒もバーをはしごするほどの酒豪で知られていました。しかしこの日に限っては、2人とも3次会の店に入ったあたりで記憶がほとんどなくなっていると言います。「確かに飲んではいたけれど、決して無茶な飲み方はしていなかった」(Bさん)にもかかわらず、同じタイミングで朦朧として記憶がなくなるとは。これはあくまで玖保樹の推測ですが、お酒に何か盛られた可能性も否めません。しかし2人とも帰宅後すぐにシャワーを浴びて服も捨ててしまったので、物的証拠がありませんでした。

「性的暴行を受けたらその場で警察に行き、病院で被害とドラッグ検査をすることへの知識はあったのに、自分の時は全然思い浮かびませんでした。何か盛られてるかもしれないって発想がなかった」(Bさん)

「シャワーを浴びて服を捨てるなんて、物的証拠を自ら消してしまったことが今はとても悔しい」(Aさん)

それでも被害を訴えようと決めたのは、友人の支えがあったからだと2人は言います。

「性暴力被害を相談するのってすごく難しいことですが、たまたまグループチャット内の2人が被害にあったことから、メンバー皆が親身になってくれて。最初のメッセージで『君たちは悪くない』『これは犯罪で君たちは訴えることができる』と書いてくれたのがありがたかったです。その後も『こんな方法があるよ』と教えてくれたので、戦う決意が固まりました」(Bさん)

「そこで『君たちに隙があったのでは』と言われてたら、どうなっていたかわかりません。ただ実家の両親には『証拠もないし勝てる可能性は低いから、忘れて元の生活に戻ったほうがいい』と言われて、『両親は頼れない』と思ったことがとてもつらかったです」(Aさん)

Aさんが「さらにつらかった」のは、メンター的な存在だった女性の先輩から「あなたには未来がある」「痛手を受けるのはあなたの方です」など、暗に告訴はやめろという連絡が来たことでした。またAさんはBさんを飲みに誘ったことを、ずっと悔いていたと語ります。しかしBさんは、

「事件初日に申し訳ないってメッセージが来たんですけど、被害に遭ったのはAちゃんのせいではないから。同じバスに乗っていて交通事故に遭って『このバスツアーの誘ったのは私の責任だ』って、そんなこと言われても困るのと同じですよ」と、笑顔を見せました。

かくして2人の裁判は始まったのですが、C氏は周囲にAさんのことを「元キャバ嬢のメンヘラ」などと吹聴していたそうです。でもこのように相手を悪しざまに罵る人間と、性暴力被害に声をあげる女性のどちらが嘘つきなのか。それは法廷で明らかになると思いますが、裁判が始まってからはその夜のことを繰り返し聞かれたり、被告側の弁護士から、

「学生の時、キャバクラで働いていましたよね?」「被害を受けたのなら、なぜ抵抗しなかったんですか?」(Aさんに対して)

「以前別の準強姦事件の被害に遭ったというのは本当ですか?」「隠部を触られたのなら、なぜすぐ交番に駆け込まなかったんですか?」(Bさんに対して)

などと質問され、ひどく傷つく思いを味わったと語ります。キャバクラで働いている=性暴力オッケーとでも言いたいのだろうか? 意味わかんねー。

またC氏は裁判で「“尊敬する人”と一緒に帰った。3次会には行っていない」と主張していました。しかしバーのマスターが3人でいたのを見たと証言したこと、C氏の供述に不自然な点があったことから、2人に有利な方向で、証人尋問を終えることができたそうです。

まだ判決は出ていないので現時点で結果はお伝え出来ないものの、今はどんな気持ちでいるのでしょう? 2人にそれぞれ、思いを語ってもらいました。

「これまで被害のことを思い出さない日は1日もなく、嫌悪感と悔しさで気が狂いそうでした。被害に加えて、裁判の過程でも相手方に傷つけられ続けたことから、裁判なんて起こさなければ良かったと思う瞬間は何度でもありました。それでも、私たちが泣き寝入りをして、相手が罪の意識もなく、もし再犯を犯したらと、次の被害者が出ることが何より怖かった。

裁判の結果がどうなるかはわかりませんし、裁判を起こしたからといって受けた傷がなかったことになるわけでもありませんが、声を上げた事実は絶対に覆らないことが私にとっての救いです。また一緒に闘ってくれたBさんをはじめ、友人たちの支えがありました。恐怖と不安で取り乱したり泣き叫んだりしても、決して見捨てず傍にいてくれる人がいたから今も生活を送っていられると、友人たちに感謝するとともに、性暴力の被害者にとって、『孤独でない』ことがどれだけの安心に繋がるかを、当事者として実感しています」(Aさん)

「証人尋問の冒頭、『良心に従って真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べないことを誓います。』という宣誓書を読み上げる時、C氏に対する宣戦布告のように感じました。私たちは、黙らない。あなたが嘘を吐いても、本当のことを話し続ける。そう心に誓って、声を張り上げました。

被害の詳細について証言する時、人としての尊厳を踏みにじられた思いが込み上げてきて、涙を堪えるのに必死でした。それでも声を上げ続けるのは、性犯罪を未然に防ぐため、そして性犯罪の被害者にとってこの事件が少しでも役に立ってほしいからです。性犯罪の被害者は被害を訴えづらく孤立しがちですが、被害者は決して独りではないこと、弁護士に相談し被害を訴える方法もあることを知っていただければ幸いです。

被害に遭ったこと自体はつらいことでしたが、私にとって幸運だったのは、周囲の人たちの支えがあったことでした。Aさん自身もつらい思いをしたにもかかわらず、私のことを気づかってくれました。一緒に手を取り合って闘ってくれた彼らには、本当に感謝しています。

私が彼らに助けられたように、私も誰かの助けになれるよう、彼らを見習い、誠実に生きていきたいと思います」(Bさん)

彼女たちが受けた傷は、裁判をしたからといって快復するものではありません。しかし黙って1人で抱えていたら、癒えるどころかじわじわと傷が広がっていったかもしれない。そして何より周囲の支えがあったからこそ、今日まで頑張って来れたのではないでしょうか。

2人のこれからにたくさんの優しさと幸せがあることを願いつつ、今回はこれにて失礼します。

 

 

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