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進学試験も就職試験も、子どもたちを第一に

深井恵2019.11.14

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大学入試共通テストの英語民間試験の導入が延期された。教員の間では、英語民間試験の導入の話が出てきた当初から問題視していたことだったが、萩生田文部科学大臣の「身の丈」発言のおかげで(?)、世間の注目を集めた格好だ。

いま行われている大学入試センター試験でさえ、居住する地域によって保護者の負担額に大きな差がある。電車やバスに乗って数百円ですむ都市部に住んでいる人もいれば、前日から宿泊して2泊する必要がある周辺地域に住んでいる人もいる。試験会場近くにある宿泊ホテルまでの交通費も結構かかる。

先週から様々な新聞やニュースで報道されているが、英語の民間試験は、1回の受験料だけで数千円から二万数千円だ。「民間業者と政治家との癒着」も報道されているようだが、「保護者負担の軽減」とは程遠いお金の流れができている。

それでなくても、センター入試対策や二次試験対策等の「模擬試験」を何度も受けて、その都度何千円かの受験料払って、本番の試験を目指すのが今の受験体制だ。

非正規労働者が増え、一人親世帯も増え、特に「母子家庭」では、かなり厳しい経済状況にある。高校生のアルバイト代が、生活費にあてられているという家庭もある。そんな厳しい家庭環境で、奨学金を受けながら進学したいという夢を持って努力している子どもたちもいる。

しかし、入学する前の受験の段階で、高い受験料と宿泊費・交通費が必要となれば、進学そのものを断念せざるをえないケースも増えるだろう。民間の英語試験のように、本番までの「練習」もかなりのお金がかかるなら、そう簡単に何度も受けられない子どももいるはずだ。

国語と数学の記述試験についても、アルバイト学生も含めて大人数で採点するなら、公平性を担保できない。こんな入試制度は廃止すべきだ。

せっかく能力を持っていても、保護者の経済格差が受験格差につながり、受験格差が教育格差へと直結するのが、今の日本の現状だ。これ以上、格差を容認してどうする。格差をなくしていくのが、政府の役目ではないのか。「教育の機会均等」を絵に描いた餅にしてはならない。

その一方で、工業科や商業科等の実業系高校の子どもたちは、大学入試センター試験や英語の民間試験等を受験せずに、面接や小論文で推薦入試を受験して進学するケースが多い。

実業系高校の子どもたちは、模擬試験をあまり受けない代わりに、それぞれの専門教科の検定をあれこれ受けるので、これも結構な金額になる。

計算技術検定や情報処理検定等、高校3年間で受験する検定は、かなりの数にのぼる。検定に合格すれば、その子自身の努力の証として、就職・進学の際にプラスに評価されるから、お金の負担も多少は許される気がしなくもない。

しかし各種検定だけではなく、実業系高校の子どもたちに、ベネッセの「基礎力診断テスト」と称した、国語・数学・英語の業者テストを、半ば強制的に課すやり方が、まかり通っている。

このテストは、模擬試験とは全く無関係だ。事前にテスト範囲の問題冊子を子どもたちに配布して、一週間ほどの期間で解いておくよう指示する。

決められた範囲内の課題に対する取り組み方や出来具合を判定するテストだ。3教科で1回千数百円だが、年に2回から3回受験させる。これも保護者負担だ。

実はこのテスト、民間試験か学校独自の試験で子どもたちの学力を図るよう、文部科学省から各都道府県教育委員会に通達が出された結果だ。その対策が、学校目標や各教科の目標、教員の個人目標にまで関わってきている。

この「基礎力診断テスト」、各教科の評価が、高い方から順に、A2 、A3、B1 、B2、C1+、C1-、C2+、C2-、C3+、C3-、D1+、D1-、D2+、D2-、D3+、D3-とわかれている。

これらはGTZ(学力到達ゾーン)と名づけられていて、すべての子どもたちを「Dゾーン」から脱却させるよう、教員側に求めてくる。

ちなみに、「A2~B3」は、「4年生大学一般入試で合格がめざせる」「公務員試験(高卒程度)で合格がめざせる」「学力を重視する企業や競争率の高い企業への合格がめざせる」いう評価だ。

「C1+~C3-」は、「4年生大学推薦入試で合格がめざせる」「一般的な入社試験で合格がめざせる」「短期大学・専門学校の合格がめざせる」「就職後に仕事に取り組む上で最低限の学力が身についている」。

「D3+~D3-」は、「希望が実現できなかったり進学後に授業についていけなかったりする可能性が高い」「希望が実現できなかったり就職後に仕事についていけなかったりする可能性が高い」。

余計なお世話である。実業系の子どもたちは、教育課程上、国語・数学・英語以上に、専門の教科科目の授業を多く受けている。農業科なら農業の、工業科なら工業の、商業科なら商業の授業が、国語・数学・英語の授業を合わせた授業時間の2倍以上ある。

それら専門教科の能力には全く触れずに、国語・数学・英語だけで判断する指標をあてがわれても、実業系の高校生に対して失礼だし、いい迷惑だ。また、お金の無駄にほかならない。

また、来年度以降の高校生の求人票の様式の「改定」は、企業が提示する項目や量を減らすことになっている。

削減される項目は、「有給休暇」の「最大〇〇日」や「毎月賃金」のうち「合計」「賃金から控除するもの」「控除合計」「手取り額」「採用・離職状況欄」等12項目。

文字数が削減されるものは、仕事の内容が490字→300字(190字減)等の10項目。高校生がじっくりと求人票の内容を見比べて受験先を検討する材料がかなり減らされる。

英語の民間試験導入も、求人票の内容削減も、子どもよりも企業側の論理を優先した結果だ。本来なら、子どもを第一に考えるべきだろう。

当事者の高校生たちも声を上げ、4万人以上の署名を集めて、反対の声を文部科学省に届けた。受験勉強に励んでいる中での市民運動だ。

文部科学省が、子どもたちの声を真摯に受け止め、子どもを第一に考え、教育の機会均等に立ち返った制度にすることを望む。

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