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東京で自分らしく暮らすこと そして韓流 第17回「共に生きることと #BANGBANGCON」

オガワフミ2020.06.16

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歳のせいで近親者との死別が増えた。年長者との別れには、彼らから受け継いだものを次世代に手渡す使命を感じるし、若者の死には胸が張り裂ける。彼らがこちらの世界で過ごした時間に少しでも楽しい、幸せと思える瞬間があったことを切に願うし、もしそういう時を用意できない社会を与えてしまっていたら、大人として若者がもっと生きやすい世の中へと変える責任の重さを感じる。

同世代の死はどうだろうか。正直今も正解はわからないままだが、現時点での心境を告白すると「それでも共に生きて生きていく」という覚悟だろうか。以前も書いたが半年ほど前に親友を失った。かけがえのない存在だった。胸にあいた穴は生きている限り埋まらないと思う。

もともとは仕事の関係で出会った彼女とは初対面で意気投合した。アメリカの患者ファーストの医療チームで訓練してきた自分にとって、ドクターファーストの日本の国立の感染症拠点病院で、感染症対策の立場から患者の予後を改善する医療上の知見を紹介しようとする筆者の努力が、看護部の「権力」に「排除」されて行った無念を受け止めてくれて、替わりに怒ったり泣いたりしてくれた。

お互い父が重度のアルコール使用障害で母への面前DVを見ながら育った生育歴から、同じユーモアのセンスで理不尽な男達を笑い飛ばした。心の奥底で、埋まらなかったパズルのピースがあったことに気づかされた。理解されて初めて、あ人って理解されることで埋まる心の穴があるんだ、と思い知らされた。女の腐ったのと罵倒され性自認に悩んだ幼い頃から、姉がいたらどれだけ良いかと空想した。それがいたのだ。骨を埋めるつもりで移住したアメリカから16年後に帰国したのはこのためだったかもしれない。

ふたりは安寿と厨子王で山椒大夫によって引き裂かれたが長い年月を経てようやく再会できた。ほうやれほ、と頭の奥で声がした(ちなみに勤めていた感染症センターは森鴎外が軍医をしていた陸軍病院の後継組織だった)。ふたりで生き別れていた時間を埋めるように、この生きづらい日本で一緒に冒険した。彼女の闘病の数値を分析し診察に同席した。主治医や父方の親族には「内縁の夫」の扱いを受けた。この国の男達は「無償の友情」を知らないのではないか。血の繋がっていない姉、とは思っていたが純粋な友情なのに。

帰国後に韓流と出会った筆者にいろんな経験を教えてくれた。なので生前彼女は当コラムで「畏友」として何度も登場した。なんなら彼女のコラムの文体をお手本にしてこのコラムを始めたのも事実だ。途中でダメ出しもしてもらった。現在少しでも読みやすくなっているとしたら彼女の助言のおかげだ。畏友と呼んだのはしょっちゅういろんなことに怒っていて、怒ると本気で怖い姉だったからだ。でも真剣さが伝わるので妹としてありのままの姉の怒りを受け止めたつもりでいる。

たくさんのものを引き継いだ。一番は彼女の遺志で、可愛がっていた黒猫を実家に引き取った(筆者が子供時代からずっと猫を飼ってきて、実はひそかに昔から黒猫を飼いたかったのを彼女は知らない)。このコラムを書いているiPadも一緒に有楽町のビッグカメラで買い、その後暗証番号を引き継いで彼女の設定のまま使わせてもらっている。妹の筆者を思いやる履歴に触れると懐かしく切ない。カフェや彼女のマンションでこのタブレットと一緒に過ごした時間を思い出す。フラワーデモもこのタブレットを使った。服も春夏秋冬全部形見にもらった。

若者の死に際してもそうだったが、わがままを言って衣服を形見にもらうと、どこか残された側の自分の気持ちが安らぐのを知った。彼らの息づかいが近くに感じられるのだ。物持ちが良くもらったものは有形無形共に膨大なので、残りの人生をかけてその意味を考えながら共に生きていくのだと思う。若者つながりで言うと彼女は東方神起だけでなく、BTS防弾少年団の熱烈なファンだった。彼らに人類の進化した姿を見て満足していた。

くれた記憶だけで膨大なのだが、今いてくれたらこの状況をどう思うか教えてほしい、という気持ちが強まることが多く悲しくなる。逃げられたゴーンさんについてどう思うか、コロナをめぐる日本の体たらくについてどう思うか、BTSの活躍をどう思うか、美術シーンについて。教えてほしい。緊急事態宣言も休業要請も出さずに対処した韓国は、死者数も感染者の致死率も東京都よりも少ないままだ。生きていたらきっと小池知事の疾病を政治利用する野心と失策を暴いて怒ってくれていたのにと思う。

KCON JAPAN 2020は延期されてしまったが、替わりにではないが、2日間12時間ずつ計24時間にわたるBANG BANG CONがバーチャルで開催された。#StayConnected をハッシュタグに、世界中のファンをつなぐ企画だった。COVID19感染拡大を抑制するため、影響で外出を自粛しているファンが自宅でライブを楽しめるこのオンラインストリーミング祭り『お部屋で楽しむBTSコンサート』は、最多視聴時2,000万アクセスを集めた。書き込みには南米・アラブ世界からのファンも多かった。

よりリアルに楽しんでもらうため、BTS公式アプリと公式ペンライト「ARMY BOMB」を連動する新システムを導入、鑑賞する際アプリのBluetooth機能でペンライトをペアリングさせると、曲に応じてリアルタイムでペンライトのカラーが変わり、部屋にいながら臨場感を楽しめる。筆者はチケットが当たらないので、全部ビューイングのみだったのでリアルBTS観戦経験はなく持っていなかったのだが、姉が遺してくれた普段は白光か青光しかないアーミーボムをこのiPadを使ってペアリングするとあら大変、七色のレインボーカラーに同期して、世界のファンとの一体感を感じつつ2日間24時間過ごした。

2015年から最近までの6回のコンサートおよび2回のファンミーティングを家事をしながらライブ観賞する、という不思議な体験だったが、ライブハウスからホールコンサートへ、体育館ライブそしてドーム、最後は巨大スタジアム へと舞台が拡大してきた様を網羅的に楽しめた。デビュー当初の、若者への社会からの抑圧「防弾」を替わりに受けて守るというコンセプトの学校三部作では、ラップや強いメイクと激しいダンスのメッセージ性が際立ったが、それに続く人生の美しい青年期「花様年華」シリーズで一転した叙情性と、中性的な素顔のメンバーの魅力を際立たせるビジュアルが現在の彼らの活躍の基礎を形造ったのが見てたどれた。

特に売れて予算が桁違いに大きくなってからはビジュアルアートとして現代美術の作家チームが加わって、ライティング、映像、セット、デジタルグラフィック、衣装全てにおいて最先端の演出が可能になって、既成の現代美術の枠組みを超えようとするアーティスト達の意気込みが感じられた。畏友はパフォーマンスアーティストだった。現代美術にも医療のような権威主義・縁故制度がある。そこから自由になるために、枠組みから出る選択をするのも人生だ。

大衆芸能はファインアートではないという考えも成り立つが、同じ表現者がメディアを超えて最新のテクノロジーで才能を発信する意義、を彼女は感じていた。レオナルド・ダ・ヴィンチが好きだった彼女は、アーティストであることを超えて人類がアートと医療と科学と意識を統合するのを夢見ていた。七色に変化するアーミーボムの光とiPadの動画画面を眺めながら、同じライブを彼女とリアルタイム中継で日比谷・練馬・妙典と一緒に劇場ビューイングで観た日と前後の思い出が蘇る。側にいてくれる姉を感じられた、共に生きる2日間だった。

今日のBTS: BTS “Black Swan” Art Film performed by MN Dance Company (5’30)

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オガワフミ(おがわ・ふみ)

福祉職員。ゲイ。中年。杉並在住シングル。心身の健康とKPOPの相関について考える日々。ラブピースクラブがその辺で発掘。A型。天秤座。好きな言葉はアイスクリーム。推しカラーはパープル。好きな香りはグレープフルーツ。TOEICスコア990だが日本語少々不自由。夢は夜間中学保健教諭。ハイビスカスティーを常飲。最近パン作りにハマっている。

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