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TALK ABOUT THE WORLD フランス編 夜間外出禁止令解除後の地域圏・県議会選挙について

中島さおり2021.06.28

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ああ、もうマスクをしなくていいんだった。と、慌てて暑苦しいマスクを外す。直接、空気に触れる頰や口元のなんと清々しいこと。
フランスではコロナ感染者数の減少とワクチン接種者の増加にともない、6月9日からコロナ対策措置が段階的に緩和されているが、6月17日からは、外を歩く時にはマスクを着けなくてよくなったのだ。

しかし、おっとっと、マスクを着けなければとバッグを。あれあれ、マスクを忘れちゃった、これじゃ買い物ができないよと一度降りた家の階段を上る。外でのマスク着用義務がなくなってから、こんなことは日常茶飯事だ。道にはマスクを外し忘れた人が、いつも一定数存在している。
5月19日にテラスだけ開いたカフェやレストランは、6月9日から、室内でも1テーブル6人を限度に50%まで、客を入れて良いことになった。映画館や美術館、スポーツジムやプール、展示会、集会、冠婚葬祭に到るまでそれぞれ何パーセントと受け入れ人数を細かく決められて再開した。フェスティバルや展示会、コンサートやスポーツ観戦の際に新たに義務付けられたのは、ワクチンをすませたことと、コロナ陰性のテスト結果を提示する「衛生パス」。スマートフォンに入れたアプリで情報をまとめて管理できるようにされている。旅行の際もこれが必要だ。

なかなか日の沈まない長い夕方、夜間外出禁止時間も23時まで延びた。街は夜遅くまで活気を取り戻し、ひっそりしていた何カ月もがウソのようだ。人間のいない間、あちこちのカフェを占拠していた大きなクマのぬいぐるみたちは一掃され、たまに部屋の隅に1匹ぼっちでいたり、2階に閉じ込められて鉄柵のかかった窓からうらめしそうに外を眺めていたりする。
そうこうしているうちに6月20日がやって来た。夜間外出禁止令も完全に解除されたこの日、フランスでは地域圏・県議会選挙の第1回投票が行われたのだ。

地域圏というのは複数の県から構成される自治体だ。日本なら「山陰」とか「東北」とかいうようなまとまりが、公共交通や高校運営など実際の権限を担っていると考えればいい。選挙は比例名簿式で行われ、フランスの選挙がすべてそうであるように2回投票制だ。1回目の投票で10%以上の票を獲得できないと第2回投票に残ることができない。
しかしこの日の選挙結果を圧倒したのは、66・7%という棄権だった。有権者の3人に2人が棄権したことになる。前回(2015年)の地域圏選挙(第1次50・1%)や昨年の市町村選挙(第1次55%)を大幅に上回る史上最高記録。若者は8割が棄権したという。

うららかな晴天に恵まれた日だった。人々はマスクを外して屋外を楽しむことを投票所に足を運ぶより優先したのだろうか? あるいはコロナ禍で、通常の選挙キャンペーンができなかったことが影響したのだろうか。誰が候補になっているのか、何が争われているのか、知らなかった有権者が多かったのかもしれない。あるいはもっと根深く、有権者と候補者との間に齟齬があって、有権者が自分の意志を反映する候補者を見つけることが難しかったのか。

選挙結果は、事前の予想を裏切るものだった。この選挙は来年の大統領選を占うものと言われていて、事前の世論調査では、マリーヌ・ルペンが率いる極右の国民連合が5地域圏で首位に立つとの予測もあったが、実際は唯一、南仏プロバンス・アルプ・コートダジュール地域圏で首位に立つに止まった。そして結局のところ、これを唯一の例外として、地域に地盤を持つ旧2大政党の共和党、社会党が健闘し、現職がそのまま優位を確認する選挙となった。マクロン大統領の与党「共和国前進」も、得票率が1割にとどまる惨敗を喫した。
それにしても、たった3割の投票結果が有効になるということには違和感を覚える。民主主義が機能しているとはとても言えない。この棄権の多さを受けて、投票を義務化するかとか、白票に意味を持たせるかとか、議論が起こっている。
翌日21日は年に一度の音楽祭の日で、夜間外出禁止も全面解除になった中、夜遅くまで町のあちこちで音楽が鳴り響き、人々が集っていた。閑古鳥が鳴く投票所とは大きなコントラストを見せていた。


追記
1週間後の27日、地域圏・県議会選挙の第2回投票では、第1回投票と同じ傾向が確認された。棄権は65・7%とわずかに後退したが、有権者の3分の2には変わりない。注目された極右、国民連合は結局、南仏プロバンス・アルプ・コートダジュール地域圏で2位につけた伝統保守の共和党候補に逆転勝利を奪われ、こうして保守は開戦前の7地域圏、左派は開戦前の5地域圏を守った。
2017年の大統領選で大敗した共和党の返り咲きを思わせる選挙結果であり、第2回59%の得票で当選を決めたグザヴィエ・ベルトランが共和党の大統領候補となる地歩を固めた。エマニュエル・マクロンとマリーヌ・ルペンの一騎打ちといわれる大統領選にどこまで食い込めるかが注目される。地域圏選挙では、共和国前進と国民連合の支持者の7割が棄権したのに対し、共和党支持者の棄権率は4割程度に止まったことが選挙を左右した。大統領選の行方は、棄権した支持者たちがどのような投票行動をするかにかかっているようだ。

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中島さおり

中島さおり(なかじま・さおり)

エッセイスト・翻訳家
パリ第三大学比較文学科博士準備課程修了
パリ近郊在住 フランス人の夫と子ども二人
著書 『パリの女は産んでいる』(ポプラ社)『パリママの24時間』(集英社)『なぜフランスでは子どもが増えるのか』(講談社現代新書)
訳書 『ナタリー』ダヴィド・フェンキノス(早川書房)、『郊外少年マリク』マブルーク・ラシュディ(集英社)『私の欲しいものリスト』グレゴワール・ドラクール(早川書房)など
最近の趣味 ピアノ(子どものころ習ったピアノを三年前に再開。私立のコンセルヴァトワールで真面目にレッスンを受けている。)
PHOTO:Manabu Matsunaga

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