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北原みのりさんと朴順梨さんの共著『奥さまは愛国』を読んだ。憲法が「改正」されようとしている、集団的自衛権が拡大解釈されようとしているいま、非常に興味深い内容だったし、恐ろしい世の中になってきていることを感じた。以前、東京の友だちから新大久保でのヘイトスピーチの話やデモ行進の話は聞いたことがあったし、地元商店街でも「在日特権を許さない市民の会」(以下「在特会」)の街宣活動を見たことはあった。地元商店街で行われていた「在特会」の街頭演説がでは、たいして人は集まっておらず、ほとんど相手にされていない様子だったが、『奥さまは愛国』で書かれているほどの広がった動きになっていようとは、思いもよらなかった。しかも、愛国活動にはまる女性が増えていようとは・・・。格差が広がり、「俺は男だ!舐めるな!」と、男であることで(根拠のない)自信をかろうじて保っている(?)日本人男性のそばで、「私は女だ!舐めるな!」と言ってもアイデンティティは確立できない日本人女性は「私は日本人だ」「やまとなでしこだ」と、「日本人である」ということに活路を見いだしているのか。

school13326a.jpg 先月参加した平和教育の集会で、美術の教員から、こんな話を聞いた。中学校の美術の授業実践で、色の組み合わせを扱ったリポート報告があり、平安時代の十二単でおなじみの「襲ね(かさね)色目」について学習し、「日本人の色彩感覚はすばらしい」とまとめていた教員がいた。色の感覚は、たとえば、イヌイットの人たちは、白の識別能力に長けていて、十以上の白を識別できるという。北極に近い白銀の世界に住んでいる人間と、四季の変化がある土地に住んでいる人間。その土地その土地の気候風土に応じて、人間は色彩感覚を発達させているのであって、日本人だけが色彩感覚が秀でているのではないのに、いまの教科書をそのまま扱っていくと、「日本人はすばらしい」と教えてしまう虞がある。そんな内容の話だった。

そう言われて、自分自身が扱っていた国語の教科書教材を思い出した。「国語総合」という科目の教科書に掲載されている金田一春彦が書いた「漢字の性格」という文章だ。冒頭でまず、日本語を文字の面から眺めて、「一番大きな特色は、日本語はさまざまの字を使う言語だ」という。「調布市青山二-13-3ゆりが丘ハイムA206」という、著者の知り合いの住所を引き合いに出して、「『調布市青山』―漢字、『二』は漢数字だが、『13』と『3』はアラビア数字、『ゆりが丘』―平仮名と漢字、『ハイム』は片仮名、『A206』はローマ字まで使っている」と述べ、「皆さんがたにとっては何でもない、ごく普通な文字使いとお思いかもしれませんけれども、こういった複雑な文字を使い合わせている国は、地球上ほかにはないと思います。日本人は、子どものときからこういう文字の使い方に慣れております」と続ける。

そうして、「世界の文字は、大きく分けて、表音文字と表意文字の二つに分かれます」、「漢字というものは、発音だけではなくて、いっしょに意味も表すという特殊な文字だということになります。世界の文字の多くは、仮名、ローマ字、ハングル(朝鮮半島で使用されている文字)、あるいは昔のギリシアの文字などの表音文字です。発音だけしか表しません。(中略)漢字はその点大変珍しい文字です」と、漢字の持つ、表意性について説明していく。

その表意性を有効に使ったものとして、「事務経理多少 高卒年32迄・固給15万昇給年1賞与年2隔土休・歴持細面」という新聞の求人広告を例に挙げ、「経理の多少できる人、高校卒業程度、年は32歳までの人。固定給十五万。隔週土曜日が休み。履歴書持参。委細面談」といいった意味を、「こんなに簡単に書けるということは漢字なればこそでありまして、仮名やローマ字ではとても書けるものではありません」と持ち上げる。

さらに、「新しい言葉ができた場合に漢字で書いてありますと意味がすぐにわかる、といったようなことがあります」と、「失語症」を例に挙げて、「失語症を英語でaphasiaというそうだが、(中略)イギリスの中学生には説明されなければわからないそうです。(中略)ところが、『失語症』のほうは、『話すことを失う病気だ』と見当がつく。何かものがいえなくなる病気だろう、と小学生でもわかります。これがもし、仮名で書いてあったり、ローマ字で書いてあったりしたのでは、わからない。やはりこれは漢字の大きなプラスの面です」と、表意文字であることから、組み合わせると新語がいくらでもできるし意味の面からはすぐ理解できると、漢字のすばらしさを繰り返し述べて本文は終わる。

確かに、漢字の持つ表意性は、表音文字にはない特性だ。しかしこの文章、そもそも漢字は中国から伝わったものであることや、仮名も、漢字を変形させたり漢字の一部をとったりして作られた文字であることについては、全く触れていない。日本以外にも漢字を使っている国があることについても語られていない。この本文だけを読むと、日本人だけが複雑な文字を使い分けることができ、漢字の持つ表意性を使いこなしていると、受け取りかねない。前にあげた美術の授業の「日本人の色彩感覚はすばらしい」に通じるものを感じる。

他の教科はどうかと思い、同僚の英語の教員に、「日本人はすばらしい」に通じそうな教材が含まれていないか聞いてみた。すると、「Bento世界で注目される日本の弁当」や「Ando Momofuku:the Father of Instant Noodles安藤百福:インスタントラーメンの父」といった教材があると教えてくれた。「Bento」の本文は、日本の弁当はカラフルで栄養もバランスよく、世界が注目しているという内容だった。教科書付属の問に「Do you usually make your bento yourself?」とあり、ほとんどの生徒が「No, I don’t.」と答えると言っていた。この英語教材、ジェンダーの視点で見ると、母親に弁当を作ることを暗に強要している教材ともいえないだろうか。和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたことは記憶に新しい。和食のすばらしさを否定するつもりは全くないが、「和食を食べる日本人はすばらしい」と教えてしまうような教材が、今後、教科書検定をくぐって手元に届く日も近いのかもしれない。

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