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工業高校の女子生徒の就職先は・・・

深井恵2014.11.11

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先日、ある都道府県のある工業高校の教員と話をする機会があった。機械科や電気科、建築科、化学科など工業系の学科が複数ある高校である。工業高校に進学してくる女子生徒は、わずかながら増えてきているという。かつて工業といえば、男子ばかりのイメージだっただろうが、ジェンダー・バイアス・フリーな高校選択が少しずつ進んでいる証である。しかしながら、その高校に勤務している教員の話によると、工業高校に女子生徒が増えたことを手放しでは喜べないという。いったいどんな悩みがあるのか、興味深い気持ちで話を聴いた。

 

 

その教員の話によると、その高校に来る求人には、女子専用枠と女子受験可能枠、男子専用枠があるという。本来、求人票には男女の性別は記載されているわけではない。それがなぜ、女子・男子で「専用枠」があるのか?
疑問に思ってさらに話を聴いてみると・・・。その高校の進路担当者が求人票を出してきた企業に対して、聞き取り調査を行い、女子がいいのか、男子がいいのか、どちらでもいいのか、話を聴いて明らかにしているという。なぜ、そんな聞き取り調査をするのかと言えば、男子がほしいのに、女子が受験してきて、「不合格」にして、その理由を「女子だから」とは言えないから・・・。未然に企業の求める人材と受験者とのミスマッチを防いで、無駄な「不合格者」をださないことにもつながるから・・・。「女子専用枠」や「女子受験可能枠」は、工業の専門とは無関係な求人が大半だという。

 

 

聴いていて耳を疑った。いまだに、そんな就職試験が行われていようとは。募集や採用について、性別を理由とする差別は、してはいけないはず。明らかな違法がまかり通っている。男女雇用機会均等法の「第5条(性別を理由とする差別)事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない」が、有名無実化している。この事実は、この話をしてくれた高校だけの話だろうか。他校でも?
あるいは、他の都道府県でも? そう考えると本当にぞっとする。

 

 

罪深いのは、よかれと思ってわざわざ女子がいいのか男子がいいのか、「好意」で企業側に問い合わせる教員だ。したくてしているのではないかもしれない。性別を理由に不合格にされるよりは、より合格率の高い求人のところの就職試験を受けたさせたほうが、生徒のためにもなると判断してのことだろう。しかし、そんなことではいつまでたっても、工業系高校の求人に女子の道は開かれない。しかも、企業の思惑のままにその差別を受け入れて、是正しようとしていないことも問題だ。かつて、被差別地区の就職差別を是正してきたとりくみによって、全国統一用紙が生まれ、いまも脈々と受け継がれているように、性別による差別を学校側が跳ね返していかなければ、受験する前に門前払いされる女子生徒たちが浮かばれない。

 

 

男女雇用機会均等法が施行されてから早30年(?!)。自身自身が高校一年生の時にできた法律だ。高校生の私は、この法律のニュースを見聞きしたときに、「何を今更?」と驚いた記憶がある。日本社会の女性差別を大して知らなかった私は、「日本国憲法に男女平等が謳われているから、てっきり男女平等になっているはずだ」と思い込んでいたのだ。憲法で男女平等と謳っているのにも拘わらず、新たな法律で雇用機会を男女平等にするという法律をつくらなければならないという現実に、当時私は衝撃を受けた。裏を返せば、雇用は男女平等ではないという現実があるということに。

 

 

工業高校の女子生徒の就職先は、日本社会がいまだに「機会においても」男女平等ではないことを如実に現している。内閣府が「輝く女性応援会議」を開こうが、「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」が行動宣言を出そうが、女子高生の就職する「最初の一歩」の段階が、既に、輝こうにも輝ける状況にない。まずは、働き始める最初の段階で、性別にとらわれずに合否判定を公正に行い、実際の働きっぷりを見るのが筋だろう。

 

 

さらには、女性が職場でその能力を発揮するには、家庭において「家事・育児」を男性がもっと担っていかなければなるまい。「女性が輝く社会」と連呼されればされるほど、「いまの日本社会で女性は輝けていない」ことが浮き彫りになっている。2014年9月8日付けの朝日新聞の記事にあった、世界の男女平等ランキングで日本が世界136か国中105位だったように、日本女性の家事・育児にかかわる時間は一日当たり4時間59分。日本男性は1時間2分(OECDによる)。約5時間も家事・育児に時間を割かねばならない女性と、1時間程度で済んでいる男性とでは、同じように職場で輝けと言われても、どだい無理な話である。男性が家庭内で輝きを増すことなしに、女性が職場で輝くことはあり得ない。

 

「理系女子」だとか「土建業にも女性を」「女性リーダーを」などと、女性にばかり努力を求める前に、男性が家庭に進出する方向に力を発揮して欲しい。そうすることが、ひいては、工業系高校の女子が専門分野を活かした職に就くことにつながる。

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深井恵(ふかい・めぐみ)

九州某県の高校日本語教員。
日教組の「教え子を再び戦場に送らない」に賛同して組合加入。北原みのりさんとは、10年以上前(ジェンダー・フリー・バッシングがひどかった頃)に組合女性部の学習会講師をお願いして以来の仲。

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