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「幸せな毒娘」で継続している「被害者からサバイバーへ」の途中ですが、4月14日からスタートした「産婦人科#MeToo」の出版応援を求めるクラファンに関連する原稿をいただきましたので公開します。
産婦人科が男性とセックスし、結婚し、子供を産む体を前提としていることで、重要な医療の奪われるような体験、足が遠のくような経験をした方は少なくないでしょう。そういう疑問に、レズビアンの女性たちが自分語りをはじめた「産婦人科#MeToo」の出版を、みなさん、ぜひ応援してください。産婦人科が全ての女性に安心な場所であるために、女性の身体が尊厳をもって守られるために、この声がたくさん聞かれますように!(編集部より)

https://camp-fire.jp/projects/view/638573?list=search_result_projects_popular



この間、オヨメと婦人科検査に行ってきました。HPV (ヒトパピローマウイルス) の実態について触れる機会ができ、急に不安になってしまったからです。そしてオーストラリアでの初めての婦人科の相談は、思ったよりも素晴らしいものでした。

オーストラリアに来る前、生理不順で日本で婦人科に通ったことが何度もあります。最初に渡される問診票に性経験の有無をチェックしなければならなかったのですが、男性との経験はなかったため無しとチェックしました。しかし、受付の看護師さんは私の年齢 (当時20代前半) だけを確認し、大声で出産の経験があるかどうかを聞いてきたのです。さぞかし日本では、男性経験のない20代の女性がほぼ存在しないからなんだと思います。でもそれに「経験がない」と、他の患者さんが待っている前で答えるのはなんだか恥ずかしかったです。そう答える私を見る看護師さんの目も、変った人を見ているかのような態度だったので、その後は病院を変えるたびに問診票にチェックすることすら躊躇するようになりました。検査のために腟の中に物を入れるとなったときはいつも激痛が走る。椅子も嫌いだし、下で何をされてるか分からないから余計不安で怖いし、私にとって婦人科の検診はまったく嬉しいものではありませんでした。しかし、オーストラリアの病院はすべてが違いました。

まずはあの「問題の椅子」が存在しない。パップテスト(HPVと子宮頸がんの検査)をするために、半自動の冷たい椅子に物のように置かれ、足を広げられる必要は全くありませんでした。医者と患者の間を遮る不審な布も存在しません。私が通うクリニックは多くが男性のお医者さんでしたが、女性の病気の相談のためにわざわざ女性の医者を雇い、すべての女性疾患の検査は女性の医者を通してやってもらうことになっていました。なので、ベッドに楽な姿勢で仰向けになり、医者が何をしているか直接自分の目で見ながら診療を受けることが出来ました。医者はとても優しく、検査の前にもどういったものか説明をしてくれて、検査を行っている途中にも「大丈夫そうですか?」、「これで全部入りましたよ」、「痛そうだったら無理して入れませんから、安心してくださいね」と何度も確かめながら、患者を安心させてくれました。

「日本の男とやるよりも全然痛くなくてよかった!」

と、検査後のオヨメはホッとしていました。私とオヨメはレズビアンカップルとして12年近く一緒に過ごしていて、オヨメは私に出会うまでは強かんされたことも、それから風俗で働いたこともあり、男との経験が多数あって、私はその逆。男との直接的な性経験はありません。しかし、オヨメは先天的に骨盤が狭く、男との関係はもちろん、痛みのせいで挿入すること自体に大きな拒否感を持っている人です。私もおもちゃ等を入れることは怖いので全く使っておりません。そしてそういったレズビアンカップルならではの相談が、何の偏見に遭うこともなく気楽に出来たのはこれが初めてでした。

男性経験の有無だけを問われる日韓の婦人科とは違い、同性婚が合法化されているオーストラリアでは私たちのようなレズビアンカップルも少なくないので、おもちゃは使ったことはあるか、指は何本使うかなど、より具体的に自分の体の状態を説明することができ、それに沿った対処をしてもらうことができます。私にも「男の経験がないならパップテストは厳しいかも知れませんが、入らなさそうだったら無理させないので。パップテストのために挿入する器具は指2本くらいの太さですが、大丈夫そうですか?」と優しく説明してくれました。男性経験がないからといって変な目で見られることもありませんでした。

それで何故私もHPVの検査を受ける決心に至ったかというと、HPVはレズビアン同士でも感染する確率があると知ったからです。そしてHPVは子宮頸がんの原因にもなり、子宮頸がんは女性を殺す女性癌の2位でもある恐ろしい病気だと知ったからです。毎日世界では853人の女性が子宮頸がんで亡くなっています。そしてそんなHPVはコンドームでも予防が出来ません。全ての性病がそうですが、一番の原因は男性とのセックスです(※1)。一般的に性感染症は途上国で流行る病気と考えられていますが、世界各国の男性は性購買ツアーのために途上国に集まりますし、昔からの性差別と妊娠リスク等のせいで女性よりも男性のほうがはるかに経験人数も多いのも統計学的な事実です。そこで男性とのセックスさえ避ければ安全なのではないかと思いがちですが、それがそうじゃないんです。
(※1)HIVを含めた多くの性病は精液を通して移る可能性がはるかに高いです。

お医者さんによると、私みたいな男性との経験がない女性の場合、パートナーが女性だったとしてもその女性に男経験があれば、HPVになる可能性は低いがゼロではないため、定期的にパップテストを受けたほうが良いとのことでした。HPVはとても感染率の非常に高いウイルスであり、HPV保菌者の唾液が腟や口の中に入った場合は感染する可能性があるので、フィンガーセックスだけを楽しむレズビアンカップルだとしても検査は必要とのことでした。またおもちゃを使う場合にもそれをシェアする場合、感染の確率が上がるとのことです。

HPVは性的接触によって感染するし、子宮頸がんはほぼ100%HPVから発展するのですが、不思議なことに子宮頸がんをはっきりと性感染症だと言ってくれるお医者さんは少ないです。何故なら家庭が、そして「女性は必ず男性とセックスすべき」という社会のシステムが壊れてしまう恐れがあるからです。危険なHPVが子宮頸がんまで至るには平均15年くらいかかると言われますが、児童性犯罪と性売買が蔓延した韓国では12歳の子供が子宮頸がんと診断されたケースもありますし、婚前純潔(結婚する前に性関係を持たないこと)を守っていた女性が、夫との関係でHPV陽性かつ子宮頸がんになったケースもたくさん聞きます。しかし、お医者さんは家庭破綻の責任を問われるのを恐れ、妻にちゃんとした原因を伝えなかったり、HPVは温泉などで移る可能性もなくはないとのあり得ない言い訳をしたりして、男たちを庇うこともあります。男性はHPVにかかることによって命に係わる症状までにはほとんど至らないし、もちろん子宮もないので子宮頸がんになることもありません。そのため自分が性購買や浮気をして陽性になったことを隠し、妻の不正を疑い、妻だけを責めながら離婚を要求するケースも多いようです。

HPVは潜伏期間も長いため、いつ、誰とのセックスが原因になったか確かめようがありません。潜伏期間からいつ症状が発現するかも分かりません。数年後に陽性になるケースもあると言います。1-2年で自然に治る場合がほとんどですが、一度保菌者になると免疫が落ちることによって再発することもあり得るし、完全な治療法や予防法などについてはまだはっきりと究明されていません。性的にアクティブな年齢の人が急にセックスを止め10年、20年関係を持たないことはなかなかないので、追跡研究がほぼ不可能であるせいじゃないかと思われます。そのため保菌者が陰性のうちに関係を持った場合、相手にどれくらい影響を及ぼすか、10年関係を持ってないからといってこれからはずっと安心できるのだろう、など何一つ断言することは出来ません。

ハッキリと言えるのは、性的にアクティブな年齢の人の50~80%がHPVの保菌者であること。そして子宮頸がんは長時間に渡りHPVに触れる頻度が高くなるほどそのリスクも上がってしまうこと。パートナーが一人だったとしてもそのパートナーが保菌者だった場合、知らないうちに互いに移し合い長年に掛けて感染の状態が続くとその分、癌になるリスクも高くなるとも言われています。オーラルセックスをする場合は口腔癌や舌根部、咽喉頭部の癌のリスクが高くなります。すなわち、セックスはどんな形であっても女性にとって、とても危ない行為であることだという事実です。無分別なセックスは女性の命を奪います。

オヨメは自分のせいで私まで大変な思いをしているのではないかと自分を責めましたが、そこまで感染率が高いウイルスだと正直、防ぎようがありません。特にセクハラやロリコン文化から逃れられないアジア文化圏では少女たちも安全ではないでしょう。私がセクハラされたのも小学1-2年の頃だったので、ひょっとしたら私はそのころから保菌者だった可能性もありますし、前に付き合った彼女から移っている可能性も十分考えられるのです。今は幸い陰性だったとしてもこれから年を取り、免疫が下がったときに陽性になる可能性も考えて対策を立てなければなりません。

さて、これからこの恐ろしい病気と闘って生き残るにはどうするべきか。

まずは定期的なパップテストです。どれくらいの頻度・何人と関係を持っているかにもよりますが、大体年に一回受けることが進められています。ご無沙汰だとしても、一度でも性関係を持ったことのある女性は必ず定期的な検査を受けてください。残念ながら口や喉のガンに関するHPVテストは存在しません。とても厄介なのはイボが出来たりする低リスクなHPVウイルスと違い、高リスクなHPVは大体前触れなく癌という形になって我らを訪ねてきます。なので、症状が出てからじゃすでに遅いんです。ワクチンを打つ前に性経験をしてしまった人は、例えあとからワクチンを打ったとしても年に一回から二回、定期的に検査を受けることが進められます。

そしてワクチンです。子宮頸がんは唯一予防接種が存在する癌として知られています。 ガーダシルは子宮頸がん予防ワクチンとしても知られているため、男性たちは接種をする必要を感じなかったり、接種を避けたりする傾向がありますが、男性が主なキャリアであるため男性もワクチンを打つことを強くおすすめします。ガーダシルのリスクに関する誤った論文が発表されてから、日本でのワクチンの接種は1%以下まで落ちました。そして2020年、オーストラリアのKate Simms研究チームは日本の低い接種率がHPVの感染数を2万7300件まで増やし、その中で最大5700人程がHPV感染により死亡する可能性があると判断しました。ワクチンが免疫システムを壊すなどの有意味な副作用は検証されたことがなく、むしろこういった誤った記事からの不安による「気のせい」な眩暈・発熱などの軽い副作用が大体だそうです。

オーストラリアは2007年から10代から26歳までの男女を対象に全国的にワクチンを実施し、今はHPVの感染率が1%未満まで落ちたと発表しました。そのため子宮頸がんの死亡者が減少しあと20年以内に国内での子宮頸がんが消えると見なしています。

そして性経験があってもワクチンを打つほうが子宮頸がんの予防に大きなメリットがあると聞き、私もオヨメもワクチン接種を決めました。ワクチンは自分が保菌していないウイルスに関してのみ確実な予防の効果があるので、すでにHPVを保菌している人に関してはどれくらいの効力を発揮するか明確には研究されていません。ただし、いま現在高リスクのウイルスを持っていないとしたら、それらの感染から逃れられる可能性が高いし、これから接種を受けてもマイナスにはならないので、どちらかというと接種をしたほうが断然良い、というのがお医者さんの説明です。

ワクチンの効果が表れるのは初めての接種から15日目以降。しかし完全な効果が得られるのは3回目の接種(約8か月かかります)を完全に済ませたあとらしいですが、互いのパートナーが一人に定まっている場合は追加感染の恐れがないので、どちらかがHPVの症状を持っていない限りセックスを控える必要はないとも言われました。

その次には出来る限り、誠実な一人の相手とセックスすることです。私が一人としか関係を持たないとしても、相手が浮気をしてしまえば私のリスクは下がらない。そのため、付き合う相手は慎重に慎重を期して選ぶべきです。人の心を読めるわけでもないのでもっとも難しいことではありますが、予防接種と定期健診をしながら、私が関係を持つ相手を絞るだけでも十分に子宮頸がんのリスクから離れられると思います。パートナーと関係を持つ前に一緒にワクチンを打つのも手ですね。あと、おもちゃは絶対に他人とシェアしないこと。

再度強調しますが、すでにセックスの経験がある方はワクチンを打ったあとも定期的に検査を受けてください。互いに信頼できる相手と関係を持ち、互いに相手が変わってない場合は、一度陰性と診断を受けると5年に一回で大丈夫だそうです。しかし結果が陽性だったり、相手が変わったり、多数の相手と関係を持っている等の場合は半年から一年に一回の検査が進められます。

世界一安全なセックスは、一人でおもちゃで楽しむマスターベーションくらいです。私は学校の性教育でこういったリスクをきちんと教えるべきだと思います。ガーダシルのワクチンは全部で6万円ほどととても高額なので、オーストラリアのように国が責任を持って予防接種を実施するのも大事だと思います。「女性の安全」と正しい性教育による「女性のセックスへの選択権」、それはAV新法や性労働論のように女性の「フリーセックス」を主張する前に整えられるべき、より大事なものではなかったのでしょうか。

※オーストラリアの最新情報によるとつい最近一回だけの接種でも有効と言う研究結果が出たらしく、オーストラリアではちょうど1-2ヶ月ほど前からルールが変わったそうです。ワクチン接種予定の方は必ずお医者さんと相談の上回数を決めてください〔2023年5月6日情報更新)


ビョルさん、も応援してくださっている「産婦人科#MeToo」のクラファンはこちらです!
https://camp-fire.jp/projects/view/638573?list=search_result_projects_popular

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JayooByul

JayooByul(じゃゆびょる)

JayooByul (ジャヨビョル)日本のお嫁さんとオーストラリアで仲良くコアラ暮らしをしています。堂々なるDV・性犯罪生存者。気づいたらフェミニストと呼ばれていました。毒娘で幸せです。

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