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赤紙も白紙もいらない ~いま、新たなる戦前から新たなる戦中へ?!~

深井恵2015.08.13

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東京の友だちから「映画『マッドマックス怒りのデスロード』がフェミ映画でめちゃめちゃ面白かった。90代の高齢女性も見に来ていた」と聞き、「なぜマッドマックスがフェミなのか? なぜ高齢女性がわざわざ見に行くのか??」と疑問に思いつつ、何の予備知識もないまま、自分の目で確かめようと映画館へ足を運んだ。

レディースデイではあったが、映画館に入っていたお客さんは、なんと全員女性!!さすがに90代の方はいらっしゃらないようだったが、20代から50代くらいの女性ばかりが椅子に座っていた。「マッドマックス」はバイオレンスな映画だと思っていたが、その映画で男性客がいないとは??何とも不思議な客層に、「フェミ映画だからか?」と期待は高まった。

主役の女性フェリオサ大隊長を演じるのは、シャーリーズ・セロン。かつて彼女は、世界初のセクシュアル・ハラスメント訴訟を扱った映画『スタンド・アップ』で主役を演じた。「だからフェミ映画なのかな・・」と考えながら見ていたが、映画が進んで行くにつれて、どうもそれだけではないことがわかってきた。

イモータンジョーの妻たち「ワイブス」は、子を産むだけの出産母体という扱いから逃亡。「貞操帯」も逃亡途中で外す。ワイブスも一緒になってバトルを繰り広げる。彼女たちの逃亡を助けるのがフェリオサだった。フェリオサと出身を同じくする「鉄馬の女たち」は、種を持つ老婆も含め、武器を持って、イモータンジョーの手下たちと対等に闘う。なるほど、高齢女性が武器を持って男とやりあう場面がでてくるとは、異色のアクション映画だ。これからますます元気な高齢女性が増えていく日本社会。興行収入が増えれば映画業界も見過ごすわけはない。今後は高齢女性向けに、こんな映画がはやるのかもしれない。

しかし、究極の男女平等が女性兵士であるなどと考えているわけではない。そもそも、男女問わず兵士になってほしくはない。ところが、防衛省は「すべての女性が輝く社会」の実現を目指す一環として、女性自衛官の配置制限を見直し、対戦者ヘリコプター部隊や潜水艦などへの配置の検討を始めているらしい。自衛隊の音楽隊でも「歌姫」なるものが注目され、引っ張りだこだという。音楽大学の演奏会へ自衛隊員が募集しに赴いているのか。大学で声楽を学び、「歌で人の心を救いたい」という思いで自衛隊に入隊している女性もいるようだ。

第二次世界大戦中、赤紙が来た女性たちがいたことを、先日のニュース番組で知った。当時の日本赤十字社の「看護婦たち」が、戦地に徴集されたのだった。夫や息子のいない家庭は、お国のために人を出せないからと、肩身の狭い思いをしていたらしく、看護婦として赤紙で戦地に赴くことは誇らしいこととして捉えていたという。

総務省のHPに「戦時中の生活等を知るための用語集」という内容がある。いつから掲載されているのか知らないが、集団的自衛権を行使しようとしているこのご時世に、このような内容を目にすると、時代は繰り返されるのではないか・・・と勘ぐってしまう。その用語集に「学芸会」という項目があった。その説明には「・・・時代の影響を強く受けて戦争をテーマにした出し物がほとんどでした。そしてそれが子どもたちの戦争を肯定する気持ちをつくり、男の子は兵隊さんに女の子は看護婦さんになりたいという思いを強くさせました」とある。

子どもの頃、女の子の将来つきたい職業の上位にも「看護婦さん」というのがあったことを思い出す。私も祖母から「看護婦になったら?」と勧められていた。教員になりたいから教育学部に行くというと、「学芸部なんか行ってどうするの・・・云々」と言われた記憶がある。女子に看護婦になるよう勧めることが、戦時中の名残だと捉えるとぞっとする。もし看護師になっていたら、今後、赤紙で徴集されて戦地に赴くことになっているかもしれない。実際のところ、小泉政権下、有事法制で医療関係者や輸送関係者(・・のみならず、国民全体に当てはまるが)は、有事の際、協力義務を負うと決められた。

第二次界大戦下、女性で徴集されたのは赤紙の看護婦だけではない。この総務省の「用語集」には、「女子挺身隊」という項目もあった。こんな説明だ。「若い男の人たちがたくさん戦地に行ったので、働く人が足りなくなりました。それをおぎなうために、政府は法律をつくって、結婚をしていない女性を働かせました。『白紙』と呼ばれた用紙一枚で集められた女性は、女子挺身隊という組織に入れられました。女性たちは、おもに戦争に必要な武器をつくる軍需工場などで安い賃金で働かされ、生産を支えることになりました。そういう工場は、とくに空襲の目標とされたので、多くの女性の命がうばわれました」。世が世なら、看護師になっていなければ、白紙で呼ばれるのか・・・。

一学期、家庭科の授業で「防災ずきん」を作ったと生徒から聞いた。耳を疑った。防災ずきんの原型は、もちろん防空ずきんだ。ある小学校の教員からは、今年の運動会の種目にバケツリレーが入ってきたと聞いた。「防災教育」の一環らしい。前記の「用語集」には「防空訓練」という項目あった。「・・・訓練は焼夷弾の処理や消化訓練(ママ)、防毒マスクのつけ方など実践的な内容でした。しかし、B29爆撃機による大量投下の前には日ごろの訓練はほとんど役に立ちませんでした。火を消そうとしてかえって、逃げ遅れてしまい、犠牲者の数を増やす結果になってしまったのです」。「運動会」の説明では「・・・戦争で立派に死ぬことを教え込むことなどが目的でした。種目も肉弾三勇士(昭和7年2月上海戦線で爆弾をかかえて敵陣に突入した三人をこう呼んで英雄扱いしました)のような戦争気分を高めるものが中心で、全体的に遊び気分というより訓練のような雰囲気でした」。数十年後にいまを振り返ったとき、「戦前」ではなく「戦中」として扱われる時期にさしかかっているのかもしれない。

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深井恵(ふかい・めぐみ)

九州某県の高校日本語教員。
日教組の「教え子を再び戦場に送らない」に賛同して組合加入。北原みのりさんとは、10年以上前(ジェンダー・フリー・バッシングがひどかった頃)に組合女性部の学習会講師をお願いして以来の仲。

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