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軍事研究予算が18倍に ~報道されない日本の軍国化~

深井恵2016.10.13

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 築地の豊洲移転問題が、しつこくしつこく各メディアで報道されている。ほかに報道すべきことはないのか、何か隠してないかと、穿った目でニュース報道を見ているが、「報道しないこと」を知るのは至難の業である。豊洲と同じく、各メディアで報道されていたのが、ノーベル医学生理学賞を大隅良典さんが受賞したニュースだ。今月上旬、日本中をかけまわった。喜ばしいことであるが、大隅さんが、受賞の喜びとともに、いまの日本の大学について危惧しているコメントがあったことを、日本政府は重く受け止めただろうか。

 いまの日本は基礎研究を大事にしなくなり、すぐに利益の出る研究にばかり予算をつけている。こんな状況が続けば、今後日本からノーベル賞受賞はなくなるだろうという趣旨のコメントだった。大隅さんの今回の受賞は、20年前から始めた研究の成果だという。

 2014年8月、文部科学省から「教員養成系、人文社会科学系学部の廃止や転換」が通達されたことは記憶に新しい。当時、このコラムでも書いた覚えがある。国が教育に責任を持たなくてどうする、すぐに儲かることにしか研究費を出さなくていいのか、などと書いたように記憶している。大学の研究費は削減される一方で、企業と提携してすぐに利益の上がる研究にばかり予算配分がなされていく傾向に。

 時をほぼ同じくして、2015年、防衛省が「安全保障技術研究推進制度」というものを設立していた。「防衛省では、装備品への適用面から着目される大学、独立行政法人の研究機関や企業等における独創的な研究を発掘し、将来有望な研究を育成するために平成27年度から競争的資金制度である安全保障技術研究制度を開始します」ということらしいが、この制度、「一件あたり最大3000万円/年(間接経費別途)。研究期間1~3年」、予算要求、2016年度は6億円、2017年度は110億円。この一年で、防衛省の軍事研究助成の金額が、18倍にもなっているのだ。資金提供をして大学側に軍事研究を促す方針を強化し、研究者を金で釣ろうとしているように映る。

 先日、ドキュメンタリー映画『ザ・思いやり』(監督:リラン・バクレー 日本 カラー88分)を観た。1978年当時の防衛庁長官金丸信が在日米軍基地で働く日本人従業員の給与の一部(62億円)を負担したことから始まるという。その後、施設設備費や光熱水費、基地内の住宅や学校を始め、プールやボウリング場、ゴルフ場、マクドナルド、暴行事件の賠償金、台風に備えての戦闘機F-15の格納庫、原子力空母の停泊港、グアム移転費用、辺野古新基地費用などなど、聞いたことのある費用から映画で初めて知った費用まで、すさまじい金額に上る。

 この映画で初めて知った「思いやり予算」の使い方で驚いたものの一つが、京急の神武寺駅の改札だ。神武寺駅には、米軍専用の改札口があるという。この改札、日本人は使えず、米軍家族の利便性のために作られたという。通常の改札を通ると遠回りになってしまうからだとか。日本政府と私鉄の共同計画で1億2千万円かかっているらしい。京急は時々利用しているが、こんな米軍専用の改札を作っていたとは、全く知らなかった。

 映画の中で、沖縄国際大学の前泊博盛教授が解説していた米軍駐留経費の内容が、また圧巻だった。在日米軍への「思いやり予算」と言われれば、防衛省が在日米軍関係経費としてあげている予算(2015年度では4667億円)だけだろうと思ったら大間違いで、他省庁の予算や国有地の借地料、振興予算なども「思いやり予算」に当たり、これらが4244億円で、合計8911億円が、実際に日本国民が負担している米軍駐留経費となるという。

 振興予算は基地所在市町村への振興費や沖縄振興費であり、いわゆる「アメとムチ」の政策となって、基地反対派と賛成派に地元住民同士を分断してしまっていることはいうまでもない。この「アメとムチ」は原子力発電所の地元でも同様のことが行われている。

 映画の中で、東日本大震災の被災者の現状も描かれていた。いまなお、仮設住宅での生活を余儀なくされている高齢の方々が、数多く登場した。「隣の住人のくしゃみが聞こえる」「年をとって、耳が遠くなっているが、テレビの音を小さくしないと、隣に聞こえて迷惑をかけてしまう」「高齢で、家を建て替えるお金はない」。被災者の方が住んでいる仮設住宅は30平米、米兵が思いやり予算によって建てられた住宅は160平米。本当に大切なのは自国民なのではないのか、誰を守っているのか、自国民への「思いやり」はないのか。

 上映後、参加者からバクレー監督へ「18歳選挙権が導入された今日、このような映画を、一人でも多くの日本人、特に若い世代に見てもらいたいが、高校生などの若い世代を対象とした上映会は企画できないのか」といった質問が出された。監督からは「映画にも出てくる、地元綾瀬市内の高校での上映を企画したところ、教育委員会から待ったがかかって、上映できなかった」とのこと。口コミで若い世代にも広げ、若い世代を自主上映会に連れてくるしかない。若い世代に伝えれば、SNSやツイッターなど、情報を拡散させる手段と技術を彼らは持っている。マスコミが報道しない「不都合な真実」は、こちら側から意識して発信して行かなければなるまい。オリンピックに目を奪われることなく、冷静にいまの日本の現状を注視するためにも。

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深井恵(ふかい・めぐみ)

九州某県の高校日本語教員。
日教組の「教え子を再び戦場に送らない」に賛同して組合加入。北原みのりさんとは、10年以上前(ジェンダー・フリー・バッシングがひどかった頃)に組合女性部の学習会講師をお願いして以来の仲。

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