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捨ててゆく私 Vol.42「悪女(わる)について」

茶屋ひろし2007.09.06

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夏祭りの話をずっと書いていたら、もう台風が来て、夏も終わりかけになっていました。今年の夏はどこへも行かず、部屋でマンガばかり読んでいました(って、年中そんな様子ですが)。

先々月の誕生日に友達が、「悪女(わる)」(深見じゅん、講談社、1989~1997)というマンガを全巻セットでプレゼントしてくれました。37巻もあります。「ガラスの仮面」を始め、たいていの長編少女マンガは読んできたつもりでしたが、このマンガだけはなぜか手付かずのままでした。タイトルから、「花のあすか組」の人が書いたものかと思っているくらい、ほとんど知りませんでした。
そう、私はこのマンガを、ヤンキーの話だと思っていたのです。「本気と書いてマジと読む」レディースとか、「下妻物語」とか・・。全然違いました。一流企業に就職した落ちこぼれの女の子が、出世をしていくという物語でした。そのドラマの引っ張り方は「チャングム」を思い起こさせるくらい見事で、ページを繰り出す手が止まりません。

充分に堪能したあと、私はタイトルに疑問を持ちました。主人公の田中麻里鈴(マリリンと読む)は、その名前に反して色気のない女の子として描かれています。住んでいる部屋は殺風景だし、皿まわしができるし、大酒のみです。
一流企業をのし上がっていく女性の物語で、題名が悪女なら、オカマ的には、オトコを手玉にとっていくやり方で楽しませる話を想像してしまいます。映画でいえば「Wの悲劇」(これは女優モノですが)とか、小説でいえば有吉佐和子の「悪女について」(そのもの!)だとか・・、それが、マリリンは皿まわしです(それはそれで、取引先のオッサンたちを喜ばせますが、それでマリリンが昇進するわけではありません)。

なんとなく腑に落ちないまま、翌日出勤したら、お局姉さんが朝からため息をついています。どうしたのかと尋ねると、どうやらスタッフの中で最年少(といっても26歳)のバイトちゃんに対してのため息のようです。
「あの子、最近、私にタメ口が多くなってさ・・」
ヤンキーの話ではありません。

そのバイトちゃんは年齢が一番下だけではなく、勤務年数も一番短い二年です。お局姉さんは十二年、スタッフの中でトップです。
とはいっても、私の職場で働いている人はみんなアルバイトなので、仕事の内容にさほど、差があるわけではありません。基本的に時給も同じです。ただ、勤務年数において、多少の差があります。よって、格差は年数で生まれます。
ですが、単純に年下の子からタメ口をきかれてムカつく気持ちもわかります。それに、タメ口の使いようもあるでしょうし、使っても年上の相手にムカつかれないタイプと、そうでないタイプがいるような気もします。
そのバイトちゃんは、タメ口の使い方も下手で、どちらかというと、タメ口を使うと非難されるタイプです。
です。って・・、私も彼のタメ口にひっかかります。なので、私は姉さんのため息に同調して、「どうしたものかしらねぇ」なんて答えました(タメ口です)。

そんなことがあった数日後、私がその26歳に先輩風を吹かさなければならないような出来事が起こりました。私が頼んだ仕事を、彼が「めんどくさいから嫌だ」という理由で拒絶したのです。
「そんな態度はいけないわ! どれも仕事よ、文句言わないでやりなさい!」
私が叱ると、26歳は凹みました。(うん、いい子)と気を良くした私は、つい説教モードに入りました。
「苦手なことでも逃げてばかりいたら解決しないでしょう」などのお決まりの正論を、私が調子に乗って気分よく述べていると、26歳はとつぜん、こう言いました。
「ところで、茶屋さんはどうしていつも遅刻するんですか?」
え? と私は頭が真っ白になりました。彼はお局姉さんに続き、これまで無遅刻無欠勤の皆勤賞です。比べて私の遅刻は日常茶飯事です。その件に関しては、あきらかに非難されるのは私のほうです。でもちょっと待って!
「どうして、今、私の遅刻問題が出てくるわけ? あなたの問題となんの関係があるというの?」
声の調子はすでにひっくり返っていました。説教モードはその一言で破壊され、私は逆ギレして終わりました。
なんだか負けたような気がしました。だんだんくやしくなってきて、お局姉さんにその話を聞いてもらいました。すると、
「それは茶屋ちゃんも悪いわよ。あの子にしてみれば遅刻ばかりしているような人になんでそこまで偉そうにされなきゃいけないの、っていう気持ちも出るでしょう」
と返されました。返す言葉もありません。
でも、あの時、彼はとぼけたように私の遅刻を指摘してきたのです。
だんだん笑いがこみ上げてきました。
あの子って、「わる」!!

そうでした、マンガの田中麻里鈴が、年功序列の男社会で出世するために次々に繰り出すアイデアは、この26歳の一言のように、瞬間的に相手の権力をひっくり返すような技でした。それが、「わる」だったのです。
やっと私は、このマンガをちゃんと読み終えた気持ちになりました。

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茶屋ひろし

茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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