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「東京国際レズビアン&ゲイ映画祭」が今年も開催されました。なにか一本見てなにか書けたらいいな、とぼんやり思っていましたが、行くことが出来ないまま終わってしまいました。毎週の休みをぜんぶデートにあててしまっていたからです。相手の彼の職業はダンサー(社交)なので、ダンサーと表現します。

ダンサーは映画祭にあまり興味がないようです。念のため誘ってみましたが、彼が興味を示さないことはなんとなくわかっていました。「東京プライドパレード」は誘ったら行くかもしれない、と思います。それはデートとしてお祭りに行く感覚なのだろう、と思われます。ダンサーはリブの人ではないのです。私は、参加することに意味を見出してしまうタイプです。
最近、二丁目で出会う人たちを、リブ色の濃い人から薄い人へ、グラデーションのように並べることは可能かもしれない、と気がつきました。

そんなことを思ったのは、ある夜、ゲイバーで出会った人との会話がきっかけでした。
私はその時、「ヘドウィックアングリーインチ」というゲイ映画を見終えたばかりで、けれど、その前に見た同じ監督の「ショートバス」という映画の方が私は好きだわ、なんて思い、映画好きのマスターとそういう会話をしていたのでした。マスターは、「ショートバス」もよかったけど「ヘドウィック~」は生涯の映画ベストスリーに入るね、と言います。そこへ、カウンターの端に座っていた男性が、僕は「ショートバス」がダメだった、と入ってきました。へぇー、三者三様だね、とマスターがつなぎ、私は彼に、「どういうところがダメだったんですかー」と、ゆるく質問しました。
すると彼は急に手を横に振って、「そんな! 僕はこの通りの人間じゃないからいいです!」と、私に向かってなにかを大きく拒絶しました。

初対面(だと思う)の人です。まず、その反応に驚きました。そして、発言の意味がわかりません。「この通り」というのは、二丁目の仲通りのことを指しているのかと思い、「の人間」は、二丁目で働いているゲイのことを言っているのかと想像しました。彼は私のことを、どこかのゲイバーの店員だと思ったのでしょうか。
もしそうだとしても、「じゃないからいいです!」の箇所が解せません。

彼は何を拒絶したのか、もしくは、どうして自分が意見を言うことに対して過敏な反応を示してしまったのか。
とりあえず、大きな拒絶にあってしまったように感じた私は、疑問で渦巻く頭を抱えながら、沈黙することにしました。ちょっと怖いので、彼のほうをなるべく見ないようにマスターに向けて姿勢が戻ります。マスターが笑って彼を落ち着かせ、じきに彼は「ショートバス」がダメだった理由をマスターに言いました。
「なんか・・俺はこんなにいろんなセックスができるんだぞ、って自慢されているみたいで嫌だった」(映画に・・?)
だそうです。マスターは、そうなんだー、と笑っていますが、私は、なんだそれ、と思いました。

そんな自慢映画じゃなかったはず・・セクシュアルマイノリティーを含む大都会の住人たちが、誰かと共に生きていく過程におけるセックスのありようにいろいろ苦悶しながら、それでも肌を合わせることを選んでいく、という繊細な物語ではなかったか、あそこで描かれた様々なセックスの形態は、観ているひとたちのセックスも捉えなおす意味をもっていたのではなかったか。
私は、「なかったか」なんて語尾を頭の中で連発し始め、やはり何も言わずにこの場をやり過ごしてしまおう、とふいに思ったのでした。

今にして思えば、「この通りの人間」というのは、リブ語のような言葉を操るひとたち、という意味だったのかもしれません。いつも言い負かされる気がするからそういう会話は嫌いなの、という感覚でしょうか。「映画」にだって自慢されてしまうのです。
でもそういう感覚もわかる気がします。リブ語のようなものは、わからないことは言葉で言い表す、という使命を持っているように思うからです。それは時に現状を打破する力を持ち、逆に当事者を黙らせてしまうこともあります。

「ショートバス」という映画に、「いろんなセックスが出来る」と自慢されたと感じた彼は、自分がもっといろんなセックスを楽しみたい、と思っているのかもしれないし、いろんなセックスを楽しんでいない自分を否定的に捉えていて、それをさらに他人からも否定されることを拒絶しているのかもしれません。
と、このように分析すらされたくないかもしれません。

昨日もべつのお店で、パレードの歴代関係者の人たちに向かって、「僕はあなたたちのようなプロじゃないから」と揶揄していた人がいました。ゲイリブの足を引っ張るネガティブな反応です。パレードの人たちは、言い返すことを我慢していました。私はいつもそういうネガティブな人たちに対して、なんか無責任だわ、と思ってしまいます。
映画祭に行けるかもしれない最後のチャンスが残された休日に、ダンサーは二人で浴衣を着て入谷の朝顔市に行きたい、と申しました。当日ダンサーの家に行くと、新しい浴衣が一式用意されていました。ダンサーのアクセサリーになる私です。そのことがとても恥ずかしく、同時に、こういうのも悪くない、と思っていました。
映画祭を蹴って(私だけの感覚ですが)、下町のお祭りに繰り出した浴衣の二人はどう見てもゲイカップルでした。これはゲイリブを実践しているのか、それともただの保守的なカップルなのか、私は混乱しながら、入谷の鬼子母神に、初めまして、と挨拶しました。

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茶屋ひろし

茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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