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「不愉快な思いをさせてしまったようで申し訳ありませんでした。もう二丁目には姿を見せません。さようなら」

以前、二丁目で知り合った同い年のゲイの子に、こんな内容のメールをもらったことがあります。私の友達を介して知り合った人でした。なんどか3人で食事をするうちに、どうもよく知らない人の噂話をする傾向にある人だわ、と気がつき、それがどうやらネットで仕入れたようなネガティブな情報を好んでしているのね、とわかってきて、そのうち私がお世話になったことのある人をその俎上に乗せるようになってきたため、私は間にいた友達に、あの人のああいうところは苦手、と言いました。
直接言えばよかった、と思ったときはすでに遅く、私と同じような気持ちを彼に抱いていたらしい友達は、自分の気持ちを伝えるときに、「茶屋ちゃんも言っていたけど・・」と私の気持ちも付け足してくれたため、上記のようなメールが私に届く結果となったようです。

そのメールが届いたときは考え込んでしまいました。
「不愉快な思いをさせてしまったようで申し訳ありませんでした」で、文章が終わってくれていたら、「こちらこそ、その場で言わなくてごめんなさいね」とかなんとか返しようがあるものを、そのあと「もう姿を見せません。さようなら」とばっさり断ち切られていたからです。
「また今度食事しましょう」とかなんとかで、しばらく時間をおくなりしてまた会ってお互いの気持ちを知る、という選択肢もあるはずです。
ここで関係を切ってしまうということは、そうした噂話に共感できない人はいりません、と彼に友人として却下されてしまったような気もします。
仮にそうだとしても、そこに共感できない私を変えることもできないので、ハアそうですか、と引き下がりますが、それにしても極端なやり方だわ、と思いました。
もしかして、「そんなこと言わないで、また遊ぼうよ」という返事を期待されているのかもしれないと思い、そう返信してみました(そこが私の胡散臭いところですが)。

翌週、彼は二丁目に姿を現しました。
そのあとなんだかんだとまた数回食事をしましたが、そのときの話題はいっさい出ることがなく、私も徐々にその会に参加しなくなっていき、ここ一年くらいで彼とはじっさいに会わなくなってしまいました。間にいた友達も彼と会う機会が減っていきましたが、私よりは連絡を取り合っているようでした。
先日、その友達が疲れた顔をして、私の職場にやって来ました。
「いまアイツとひさしぶりに食事していたんだけどさ、話しているうちにキレちゃって、俺がトイレから戻ってきたらいなくなってやがんの」と言います。
それは食い逃げ? と思いましたが、黙って話をうながします。しばらくして彼からメールが来たらしく、それには「今までお世話になりました。もう二度と会うことはないでしょう。あなたとは縁を切ります。さようなら」と書かれていたそうです。
「まあ、お変わりなさそうで」と、ちょっと吹きだしてしまいました。
今回は彼が怒ったということで、先述の私の件とは内容が異なりますが、相手に怒っても相手を怒らせても、「もう会わない」という結果は同じのようです。

内容の詳しくは避けますが、彼が怒った原因は、「ここだけは自分は悪くない」と信じている部分を、相手にもそう言ってもらえることを望んでいたのに、その友達は「そうじゃないんじゃないの」と言ってしまったからのようです。
絶対に共感して欲しいこと、ということはたしかにあると思います。けれど、そこは共感できない、ということもあります。その二つを会話に折り込んでいくには、なにか「全面的な肯定」とか、「絶対的な信頼」という基盤が必要なのかもしれません(私には夢のような話です)。

「その基盤はそろそろ出来てきたと思っていたんだけどなー」と、友達はためいきをつきました。
その話を聞いているうちに、彼と関係をつくっていこうと努めてきたその友達に比べれば、「なんか苦手」の一言で退いて行った私は、「もう会いません」の結果を出す彼とドッコイのような気がしました。私も、自分の共感してもらいたいことがかなわなかったから、早々と関係を諦めてしまっていたのかもしれません。

鶏が先か卵が先かの話ではありませんが、共感しあえる部分が増えていくことによって続いていく関係もあって、逆に最初から大雑把に共感してしまってそのあと共感できない部分を知っていくという関係もあるように思います。それで言うと彼は前者で私は後者、それは慎重派と能天気派ということでしょうか。

慎重派はひとつずつやってくる共感がとても大事です。その積み重ねで関係を続けていくからです。能天気派は最初にあらかた共感できている気になってしまっているので(だいたいが思い違いですが)、しばらくしてそのアラに気づきはじめます。しかも、「すっ飛ばしていたけれど、そこは共感できないわ」と後から言うので、慎重派は積み上げてきたものを崩して、その時点まで戻る必要があります。そこで折り合いがつかないと、彼のメールの結論のように関係はリセットされてしまうのかもしれません。

・・書いているうちに、だんだん今付き合っているクロと私の話をしているような気がしてきました。クロはもちろん慎重派です。そう思うと、これまですっ飛ばしてきたことの多さに眩暈がします。

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茶屋ひろし

茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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