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世界で最も裕福な人

GraceLu2017.03.29

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山田さんの話を初めて読んだとき、インスピレーションを受け、ワクワクした気分になった。
https://www.facebook.com/groups/741363269331408/


山田さんは日本人の青年。彼は、社会や他人が敷いたレールに沿った、ありきたりの人生とは違った生き方をすることを決めた。日本の高校を卒業後、4か月間仕事をして8000ドルほどを貯めた。彼の計画は、労働と食事、寝るところなどを交換する‟ワーク・エクスチェンジ” をしながら DIYの装備で5年間をかけて世界を旅することだ。旅行中、食事や宿には一切お金を使うことはせず、ほとんどを野宿をして過ごす。そして偶然に導かれるままに、様々な人と出会いながら日々を送る。お金を使うのは航空券を購入する時やビザを申請するときのみだ。


バックパックを背負った山田さんは、上海から旅をスタートした。道端に捨てられていた自転車を拾い、その自転車に乗ってベトナム、ラオス、タイを旅してインドに到着。そこからタジキスタン、アルメニア、そしてロシアを経由してフィンランドでは先住民の人たちと冬を共に過ごし、スウェーデンとノルウェーに向かった。

捨てられていた自転車に乗って、旅に必要な装備を自分の手で作りながら、山田さんはすでに世界の4分の1を旅している。簡素な装備で旅し、直接自分の目で見ることで世界が見える、というのが彼の信念だ。ナビも、まともに使えるスマートフォーンすら持っていない山田さんだが、旅を通して多くの人たちと出会い、そして世界中で受け取った優しさを糧に旅を続けている。
路上で出会った多くの人たちが山田さんに助けや備品を提供することを申し出るけれど、彼が受け取るのは食事と油だけだ。もっと良い装備を使うことはしない。それは「愚かなシステム」に巻き込まれたくないから。と山田さんは言う。

「もっと金儲けをして、大きな家や車を買うことが良いことだと世界中が信じているけれど、僕はそんな愚かなシステムの中で生きたくない。世界はそんなふうにあるべきじゃないと思うし、そんなバカみたいなシステムに沿った人生を送りたくはない」
「もっと良い自転車や装備を使わないのも、一度そういうものをお金で買いだすと、もっと良いもの、軽い物、新しい物、という風にどんどん欲しくなって、またそのバカみたいなシステムに巻き込まれてしまうからだ」
「ちゃんとした装備なしに北極圏に行くなんて危険だといろんな人に言われたけど、でも僕は死ぬことを怖いと思っていない」
「死って何か?僕の中での死の定義は、心が死んだ時、それが死だ。歴史を変えた偉大な人たちの信念は、僕たちの中にとどまって、死ぬことはない。僕は何も持っていないけれど、僕の魂は豊かだし、それが僕が生きている意味だと思う」

山田さんのストーリーは、瞬く間に私の情熱に火をつけてしまった。私が若いころも、そこまではっきりとではないにしろ、似たような思いで世界をとらえていた。しかし、仕事で上海に移り、なんの警告もなしに、気が付いた時には、その「愚かなシステム」に巻き込まれてしまっていた。

私が上海で働いていたころ、中国はちょうどバブルを迎えていた。私の周りでも、突然「成金」になった友人たちがたくさんいた。私たちが日々の生活で考える事は、どうやって儲けて、儲けたお金を何に使うかという事ばかりだった。お金が、唯一の宗教の様に崇められた時代だった。お金によってでしか、自分たちの成功や繁栄を測ることができなかったのだ。

徐々に私も上海で生活するための法則に順応していった。それは、本当の自分をなおざりにして、物質主義を受け入れることだった。そうでないと、このものすごいスピードで発展していく都市で生きている実感を得ることができなかったからだ。

でも、そこから私を呼び戻す声は決して途絶えることはなく、真夜中に突然目覚めたり、連続する会議やパーティーの合間に突然やってきた。

この酷いシステムの中で、発狂せずに、なんとか平静を保っていくために私がとることができた唯一の方法は、旅にでることだった。

私の旅のプランは、山田さんのものほど創造的でも有意義なものでもないけれど、自分のできる範囲で、自由になるために私なりのベストを尽くしている。

数年ごとに、私は一年間を休みにして、旅行プランを立てないまま、今まで訪れたことのない国々へ旅に出る。
違う町で目を覚まし、日々を偶然に導かれるままに過ごし、出会った人々や物事を人生に迎え入れ、何か大切なものを思い出に残していく。

レストランのオーナーに2週間無料で夕飯をごちそうになったのは、ギリシャでのこと。冬休みシーズンのサントリーニ島で、たった一人の旅行客となった私は、そのオーナーと一緒に世界で最も美しい夕日を目にした。街のお店やレストランは全て閉まっていたけれど、私たちは夕日を見ながら乾杯し、野良犬のガイドで風に吹かれながら山の上を探索した。

バルセロナでは、アメリカの大学教授達と一緒にカサ・ミラの屋上でアブサンを飲んだ。こっそりとボトルを持ち込んだ彼らは「これがガウディ―の素晴らしい芸術を理解する方法なんだ」と私を誘ってくれた。

インドネシアのウブドでは、ただ道を聞いただけの通りすがりの私に、農家の人がオートバイを貸してくれた。彼は手を振って、オートバイのカギを投げて渡してくれた。山の中にいる彼を探してバイクを返すのに二日間かかったのだが、次は借りた場所にバイクと鍵を一緒に置いておいてくれればいいよ、と彼は言った。まさに田舎の生活!

イタリアのトスカーナでは、親切な女性の家にホームステイさせてもらえることになり、真っ暗闇の中を車で40分程走って彼女の家に向かった(そこまで一つも信号が無かった)。ナビにものっていないその場所には、息を飲むような、星が瞬く澄んだ夜空があった。翌朝バンガローで目覚めると、放し飼いになった馬とロバたちが迎えてくれた。

アンコールワットでは、寺院の前で小さな子供たちと一緒にココナッツを飲んだ。何人かは地雷で手足を失っていた。私たちはジェスチャーでしか意思疎通ができなかったけど、助け合うその姿と輝く目の中に、純粋で優しい心を見ることができた。

旅で得た経験は素晴らしいものだった。それは、生きる目的はビジネスの世界とは全く別のところにあるんだ、ということを気付かせてくれた。旅は私の視野を広げ、人生で大切なものをよみがえらせ、そして新しい人生の可能性に気付かせてくれた。そのエネルギーは私の魂の糧となり、それから数年後、これ以上自分の気持ちを無視することはできないと悟った。

人生で大切なものは何か、もう一度よく考え、自分が何のために生きていくのかを見つけることができた。この世界はとてつもなく広く、私たちはその世界とつながっているのだ。

山田さんの様な旅をするのは、私たちにはちょっと敷居が高すぎるかもしれないけれど、人生を左右するような重要な選択肢に直面した時、その視点はとても大切になるはずだ。私は、これからも山田さんの旅をフォローしていくつもりだ。バックパックを背負って、私の次の「発見に満ちた旅」に出かけるまでは。

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GraceLu

GraceLu(ぐれーす・るー)

台湾生まれ。世界の潮流&プロパガンダの中で育ちました。どうして多くの人は、差別や偏見を手放さず、自ら自分たちの平和を拒むのでしょう。そんなことを理解したくて未だに奮闘中。人生の目的は、もっと多くもっと深く世界を見つめていくこと。風にゆれるひまわりのように。 ラブピースクラブに出会ったのは10年前。公平な未来を求めて人々をサポートする姿勢に、共感しました。ラブピでのコラムは、未来を広げ、保守的な思考から自由になるために、共に学び、シェアしていくものにしたいです。秘密の扉を開け、より大きな世界を求めて! 

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