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TALK ABOUT THIS WORLD フランス編 マリーヌ・ル・ペンの場合

中島さおり2026.02.25

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 マリーヌ・ル・ペンという女性政治家をご存じだろうか。過去3回、フランスの大統領候補になり、2017年と2022年には決選投票まで行った「国民連合」の党首。「国民連合」は、外国人排斥を掲げるナショナリストの極右政党だが、近年、選挙民の既成政党離れの受け皿になり、党勢は伸びる一方だ。マリーヌ・ル・ペンは、カリスマ性のある堂々とした女丈夫だが、フェミニストではない。フェミニストにはむしろ批判的で、その党は様々な社会的問題において保守的な立場を取っている。

 フランスから日本初の女性首相を眺めると、マリーヌ・ル・ペンに重なって見える。排外主義ナショナリスト、ウルトラ保守主義者、女性天皇すら認めようとしないアンチ・フェミニスト。ジェンダー平等の遅れた日本で女性首相が誕生したことは肯定的に伝えながらも、高市首相はフランスではもれなく上のように紹介されている。

 さて、その高市首相が突然、「私が首相で良いかを問う」と言って衆議院を解散してしまった奇妙な選挙戦中、フランスでは、議員秘書をめぐる公金横領罪の控訴審で、マリーヌ・ル・ペンに対し、検察が禁錮4年(うち1年は実刑)および5年間の被選挙権停止を求刑したというニュースが流れた。

 実は現時点ですでに、マリーヌ・ル・ペンは来年予定されている大統領選に4度目の立候補はかなわない。欧州議会の資金を国民連合の前身、国民戦線の秘書給与に充てていた事件で2025年3月に、有罪判決を受け、5年間の被選挙権停止処分を言い渡されているからだ。しかし彼女はこの判決に不服を申し立て、再起をかけて控訴院で争っているのだ。控訴審の判決は今年7月に下り、逆転無罪にならなければ、マリーヌ・ル・ペンの大統領選立候補は完全になくなる。

 私はこのニュースに触れて、高市首相も政治資金その他をめぐる数々の疑惑が明らかにされ、裁判で争って欲しいものだと思った。高市首相には、選挙の直前に、韓国メディアから旧・統一教会との関係が疑われる報道があったが、日本では新聞やテレビが大きくとりあげなかったためスルーされてしまった。国会が開かれていれば国会の場で追及されたのだろうが、解散で国会は開かれず、開かれれば追及しただろう野党議員が大量に落選してしまった。この解散が「統一教会隠し」が理由だと言われる所以である。

 韓国ではカルト宗教団体、旧・統一教会トップ韓鶴子が教団資金を使い、韓国の有力政治家・元大統領夫人らに高級品(シャネルバッグやダイヤモンド等)や現金を贈与した疑い、教団の資金を違法に政治資金として提供した疑いで起訴されている。その裁判の中で、旧・統一教会(世界平和家庭統一連合)と日本の政治家との関係も明るみに出てきた。高市首相の名前も出てきた。さらに選挙期間中には週刊文春が高市首相の事務所の裏帳簿を入手し、旧・統一教会との資金的繋がりを具体的に暴いた。

 旧・統一教会の目指すものと高市首相の実現したいことの間には共通性も高いようだ。また旧・統一教会と接触している日本の国会議員は膨大な数に上るらしい。カルト宗教団体が日本の政治に影響力を及ぼしているとしたら、由々しきことではあるまいか。きちんとした説明が国会でなされるべきだし、違法性があるのであれば司法が動かなければならない。

 裏金議員たちも大挙して返り咲いてしまったが、選挙の結果がどうであれ、政治資金規制法違反は違反なのだから、司法が取り締まるべきだと思う。

 フランスでは、元大統領ニコラ・サルコジも2007年の大統領選での違法資金問題で有罪になり、実際、短い間ではあったが刑務所に入っていた。

 日本では司法の行政に対する独立性が弱いように感じられるけれども、法治国家として、法の支配が生きていることを切に願う。そうでなければ、安倍首相銃撃事件の犯人、山上徹也の言う通り、「巨悪あり、法、これを裁けず」ということになってしまい、テロに口実を与えることになるだろう。

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中島さおり

中島さおり(なかじま・さおり)

エッセイスト・翻訳家
パリ第三大学比較文学科博士準備課程修了
パリ近郊在住 フランス人の夫と子ども二人
著書 『パリの女は産んでいる』(ポプラ社)『パリママの24時間』(集英社)『なぜフランスでは子どもが増えるのか』(講談社現代新書)
訳書 『ナタリー』ダヴィド・フェンキノス(早川書房)、『郊外少年マリク』マブルーク・ラシュディ(集英社)『私の欲しいものリスト』グレゴワール・ドラクール(早川書房)など
最近の趣味 ピアノ(子どものころ習ったピアノを三年前に再開。私立のコンセルヴァトワールで真面目にレッスンを受けている。)
PHOTO:Manabu Matsunaga

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