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ノエルはサン・シールの準備学級に籍を置いて陸軍士官学校を目指している19歳。アジザは20歳になったばかりで、情報工学の専門学校でプログラミングを学んでいる。二人の共通点は将来、軍の情報機関で働きたいということ。

私の娘が誕生日を利用して引き合わせようとしていた彼女の二人の親友は、ともに可愛らしいお嬢さんで、私の感覚ではとても軍隊とは結びつかなかった。しかしそう感想を漏らしたら、娘に古い感性をたしなめられた。そうか、現代のフランスでは、軍は女の子が就職したい場所なのか

フランス軍は現在、イスラエル、ハンガリー、米国に次いで、世界で4番目に女性が多いことを誇っている。最も多いのは空軍で23%、陸軍は13%、海軍の数字は知らないが、全体で16%が女性とのことである。日本では女性自衛官比率は2017年度末で6 .5%2030年に9%に達するのが目標だそうなので、かなり落差があると言えよう。

自衛隊と女性と言えば最近、自衛官募集のポスターの女性キャラクターのスカートから下着が見えていてセクハラを問われ、ポスターを撤去したという事件を思い出すが、自衛隊は女性について一体どういう考えを持っているのだろうか。少なくとも女性はあれを見て、自衛官になろうとは思ってくれないだろう。

フランス軍のリクルート・ポスターにも女性が登場することがあるが、ふつう、軍服を着て凛々しく構えた写真である。

セクハラ以前に、アニメのキャラクターが出てくるだけでも、フランスに住んでいる者の目からは常識外れな感じがするが、どうしてもアニメで行くというなら、『鋼の錬金術師』のリザ・ホークアイでも出さないと女性は入ってくれそうに思えない。

さて、諸外国と比較すれば女性が多い観のあるフランス軍だが、16%ではまだまだマイノリティだ。

ノエルの在籍するサン・シール準備学級(陸軍士官学校予科)は、つい昨年も、女生徒イジメが新聞記事になったマッチョな体質の学校で、サン・シール本科である陸軍士官学校は、シャルル・ド・ゴール将軍などを輩出した名門校だが、一学年162人中女子は14名と未だ圧倒的な男性社会である。

しかし最近のレポートによれば、体力的に女性に不利な僅かな部署を除き、女性が男性と同様に任務が遂行できない場所はほとんどないのだそうだ。女性の現国防大臣フロランス・パルリは、女性軍人を増やすために様々な対策を打ち出している。

軍に限らず、女性が仕事を続けるために最大の難関は子育てによるキャリアの中断だ。子どもが小さい間はパートタイムに切り替える女性も多い中、軍人はパートタイム勤務は不可能なので、育休中は予備役軍人とすることでキャリアを中断させず、復帰するときは不利にならないよう前職に復帰させることにする。また、女性の上級士官が少ない理由のひとつに、上級士官の養成機関が理科系の学生しか採らないため、もともと理系が少ない女子が集まりにくいことがあるとして、門戸を理系以外にも広げるという。上級士官の10%を女性にする目標達成を2022年に前倒しし、2019年に将軍の養成機関に女性を5名入学させる。

軍は長いこと、男性の聖域だった。女性に門戸を開いたのは1970年代だが、女性が軍艦に乗れるようになったのは1993年、初の女性戦闘機操縦士が誕生したのが1999年、全ての部署に女性が配置されたのはごく最近の2015年である。2018年には、原子力潜水艦に4名の女性が配置された。

女性が半数になった軍というのは、正直に言うと私にはまだ想像できないのだが、もしかしたら軍はこれからのフランス女性にとって、希望のある職場なのかもしれない。

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中島さおり(なかじま・さおり)

エッセイスト・翻訳家
パリ第三大学比較文学科博士準備課程修了
パリ近郊在住 フランス人の夫と子ども二人
著書 『パリの女は産んでいる』(ポプラ社)『パリママの24時間』(集英社)『なぜフランスでは子どもが増えるのか』(講談社現代新書)
訳書 『ナタリー』ダヴィド・フェンキノス(早川書房)、『郊外少年マリク』マブルーク・ラシュディ(集英社)『私の欲しいものリスト』グレゴワール・ドラクール(早川書房)など
最近の趣味 ピアノ(子どものころ習ったピアノを三年前に再開。私立のコンセルヴァトワールで真面目にレッスンを受けている。)
PHOTO:Manabu Matsunaga

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